自動車の自動運転は、近年注目度の高いIoTや人工知能(AI)を活用した次世代の中核技術の一つであり、その実用化に向けた取り組みが世界各国で進められています。しかし、現実社会における実用化にあたっては、技術面のほか、法制度面においても、検討すべき課題が数多く残されています。こうした現状を踏まえて、当社では、2017年度に、警察庁からの委託事業「技術開発の方向性に即した自動運転の段階的実現に向けた調査研究」を実施しました。
2016年度 警察庁委託事業「自動運転の段階的実現に向けた調査研究」
概要
自動運転技術は、将来における我が国の交通事故の削減や渋滞の緩和等に不可欠なものであることから、近年、国内外において、完全自動運転を視野に入れた技術開発が急速に進展しています。
我が国では、「日本再興戦略」改訂2015(2015年6月30日 閣議決定)において、「道路交通法等を含め、事故時の責任関係のほか、運転者の義務等の在り方についても、公道実証実験により得られたデータも踏まえつつ、我が国として引き続き十分な検討を進め、完全自動走行の早期の実現を目指す」という方針を掲げ、「改革2020」プロジェクトとして、複数の車両を電子連結させる技術を活用した隊列走行及びラストワンマイル自動走行の実現に向けた検討が進められてきました。
これらの実現に当たっては、電子連結や遠隔操作といった新たな技術の現行制度上の取扱いや交通管理上の安全確保措置に関する検討課題が山積していますが、「官民ITS構想・ロードマップ2017」(2017年5月30日 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)では、「高度自動運転の実走行を可能とするためには、「ドライバーによる運転」を前提としたこれまでの交通関連法規について、「システムによる運転」を可能とする制度を組み込むべく*1、全面的な見直しが必要」であり、「2017年度中を目途に、高度自動運転実現に向けた政府全体の制度整備に係る方針(大綱)をまとめる」こととされています。さらには、高度自動運転に係る制度整備に係る検討項目のイメージとして、交通ルール等の在り方が挙げられているほか、トラックの隊列走行について、「2017年度から、車間距離に関連した事項に係る検討等を踏まえつつ、(略)後続車両有人の2台隊列走行による公道実証実験を開始し、社会受容性等を確認した上で、2018年度からは、後続無人隊列システムの公道実証実験を開始する」こととされました。
このような経緯を踏まえて、道路交通法(昭和35年法律第105号)を所管する警察庁では、交通の安全と円滑を図る観点から、技術開発の方向性に即した自動運転の段階的実現に向けた環境の整備を図ることを目的として、以下の調査・検討を行うこととしました。
- SAE*2レベル3以上の自動運転システムの実用化を念頭に入れた交通法規等の在り方に関する各種調査・検討
- 隊列走行の実現に向けた各種調査・検討
- *1)ドライバーによる運転」や「システムによる運転」とは、SAEJ3016でいう「ドライバーによる運転タスクの実行」や「システムによる運転タスクの実行」を意味する
- *2) Society of Automotive Engineersの略
報告書の構成
第1章 調査研究の概要
第1節 調査研究の目的
第2節 調査検討委員会の設置
第3節 調査研究の経緯
第2章 自動運転の段階的実現に向けた課題等に関するヒアリング
第1節 ヒアリングの概要
第2節 ヒアリングの結果
第3章 海外視察
第1節 海外視察の概要
第2節 海外視察の結果
第4章 自動運転の段階的実現に向けた法律上・運用上の課題の検討
第1節 SAEレベル3以上の自動運転システムの実用化を念頭に入れた交通法規等の在り方
第2節 隊列走行の実現に向けた課題
第3節 自動運転の段階的実現に向けたその他の課題
参考資料1 Automated Driving Systems 2.0: A Vision for Safety
参考資料2 Eight Act amending the Road Traffic Act
参考資料3 European Truck Platooning Challenge 2016
参考資料4 Automated driving in Finland
報告書
「技術開発の方向性に即した自動運転の段階的実現に向けた調査研究」報告書(警察庁)
(PDF/1,760KB)