電子部品のコンデンサ製造大手のニチコン株式会社は、国内外に多くの開発・生産拠点と販売拠点を展開し、デジタル家電機器、自動車・車両関連機器、エコ関連機器、情報通信機器市場に向け、主力製品であるコンデンサをはじめ、次世代自動車として脚光を集める電気自動車向け充電器一体型DC-DCコンバータや太陽光発電・風力発電に代表される自然エネルギー分野向けの蓄電システムなどを供給している企業。
同社基幹システムを自社開発のものからERPパッケージへ移管するのに伴い、基幹システムで実施していた給与計算機能のアウトソーシングを決断。ERPパッケージとして採用されたSAP/R3との連動性や、IT統制などを勘案して2004年にみずほ情報総研が提供する給与計算アウトソーシングサービス「FX-Ware®給与計算」の導入を開始し、2007年、これを全事業所で採用した。
日本版SOX法対応から始まった給与計算システムの見直し
「そもそも、給与計算システムの導入から、話が始まった訳ではありませんでした」と、ニチコン株式会社執行役員 人事部長の吉田 清氏は当時を振り返る。「当時、施行が予定されていた日本版SOX法対応を含め、IT統制の必要に迫られていました。全社的に会計を中心とした基幹システムの変更を検討したことに、給与計算システムの導入は端を発しています」。
それまでは、給与計算も含めて全て自社開発した基幹システムを使用していたが、日本版SOX法への対応を考慮し、全社的に会計システムをERPパッケージに切り替えることを決定。また、同時期に複数の工場の分社化が進んだ背景もある。「今までは、ニチコンという会社の中の工場だったのが法人格に変わるわけですから、それぞれの工場が各自で給与計算業務のすべてを行う必要に迫られました。実際、ニチコンの分社化が進むことで実務が分散し、標準化から遠のいていくのではないかという危機感が社内にありました」と話す。
「こうした背景をきっかけに、全事業所を標準化できる給与計算システムを導入しよう、という方向で進んでいきました」。その結果、給与計算部分はIT統制で必須となる標準化と事務手続の簡素化、効率化などを勘案し、アウトソースしても良いのではないか、という結論に達した。
その中で、2004年にアウトソーシングサービス「FX-Ware®給与計算」を導入。「導入の際に決め手になったのは、安心して長く付き合えるパートナーである、という点が非常に大きかったです。実績、信頼性、安定性を総合的に評価したとき、みずほ情報総研さんであれば間違いないのではないか、と社内で意見がまとまりました」。
導入プロセスは大変、大変だからこそ変わる
「導入当初、現場への浸透には苦労しました。新しいシステムを導入する際は、どのシステムであっても同じだと思いますが、まず、今までと意識を変えていかなければいけないと思います。その壁を打ち破ったからこそ、導入が成功したのではないでしょうか。給与計算のアウトソーシングサービスを導入する際にも、現場は業務プロセスが変われば大変です。ただ、大変だからこそ、変わる。単にコスト削減のためとか、そんな次元の問題ではなく、標準化という目的がありましたので」と振り返る。
導入後は、IT統制、標準化という目標をクリアできた、と語る。「ただ、使う方は欲が深いので、100点満点なんて永遠につけられないです。もちろん、当初のIT統制や標準化という目標に対しての評価は満点かもしれないですが、こちらは、それ以上のものを求めてしまうので、現状に満足することなく、いつでも次の目標を一緒に目指していきたいと考えています」。
一方で、事務作業負担の大幅な軽減にも繋がった。「実務的なところでは、プログラムを今までのように自社で修正する必要がない点や、法改正時に、全社一斉に漏れなく対応できることで、現場の作業は効率化されました」。
グループ企業の人事・給与データを一元化、情報資産として経営でも活用
現在、ニチコンでは、給与計算のみならず、人事・給与に関するグループ内の全企業の情報の一元管理を目指している。「『FX-Ware®給与計算』の導入後は、標準化されたルールに基づいて、人事・給与に関する情報が全て本社に集中し一元管理できる訳ですから、この状況をさらに生かしていきたいと考えています。これらの情報を情報資産として経営に活用したり、グループ内企業での人事異動計画の立案など適正な人員配置にも対応できればと思います。将来的には、各社員の研修レポートや研究課題レポートのデータとも連携させて、人材育成のためのデータベースを構築するという構想を持っています」。
その第一歩として、みずほ情報総研の提供するWANによる就業管理システムへの切替導入を現在検討中だ。「とにかく、さまざまな人事、給与に関わる情報をトータルで、一元管理することを目指しています。この就業管理システムに関しても、全社統一のものを導入して、本社に全情報が集まる仕組みを、みずほ情報総研さんと一緒に構築していければと考えています」と締めくくった。
グループ全体の情報資産の集約と活用を目指した積極的なシステム投資を行うと同時に、現場の業務効率化を進めるニチコン株式会社。従来の単体で終結するシステム設計の考えから脱却し、グローバル展開する企業として、グループ全体の情報を一元管理するための絶え間ない挑戦を続けている。
- *この記事は、2011年2月の取材をもとに作成したものです。
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