背景及び目的
光触媒材料の設計においては、可視光応答型触媒の開発や量子収率の向上等の課題があり、材料組成や構造の変更、不純物のドープ等により最適な材料の探索が行われています。光触媒においては、光吸収に伴って生成される電子や正孔といったキャリアが酸化反応・還元反応を誘起しているため、材料設計ではこれらのキャリアの挙動を予測することが重要と考えられています。キャリアの挙動を予測する上で必要不可欠な知見である電子構造を理解する手段として第一原理計算があります。
解析事例
光触媒材料として典型的なアナターゼ型の構造をもつ酸化チタン結晶に対して、局所密度近似の範囲内で密度汎関数法に基づく第一原理計算を行い、電子構造(状態密度、バンド構造)を解析いたしました。状態密度分布では、原子毎にその成分を取り出すことができるため、ドープされた不純物や原子空孔近傍など局所的な電子構造の評価を行うことも可能となります。

アナターゼ型の酸化チタン結晶の構造図

酸化チタン結晶(アナターゼ型)の状態密度分布

酸化チタン結晶のバンド構造
成果及び展望
第一原子計算を用いてアナターゼ型の酸化チタン結晶の状態密度やバンド図を計算し、酸化チタン結晶を構成する各原子の電子構造への寄与を明らかにしました。このような電子構造解析を様々な材料組成や構造、不純物のドープ条件に対して行い結果を比較することで、可視光での高効率なキャリア生成やキャリアの長寿命化に向けた光触媒材料の検討のための知見を得ることができます。
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担当:サイエンスソリューション部