みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社
みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:吉原 昌利、以下「みずほリサーチ&テクノロジーズ」)は、がん治療の選択肢として国際的に注目されている、核医学治療(放射性同位元素内用療法)を取り巻く環境について、包括的な視点で調査研究を行い、その結果を報告書に取りまとめましたので公表いたします。
がんは、生涯で2人に1人が罹患する最も身近な病気の1つです*。そのため、治療と共に仕事や日常生活を続けること、つまり、“がんとの共生の実現”は、日本社会にとって重要な課題であるといえます。さらに、超高齢社会では高齢のがん患者も多く、他の病気の治療と並行治療となるため、体への負担を考慮してがん治療を実施する必要があります。
核医学治療は、病巣の広がりに応じたオーダーメイド治療であることから、一般的に体への負担が小さく、また、これまで治療法が限られていた難治性がんへの効果も期待されています。日本におけるがん治療体制強化への貢献が期待されるところです。
一方、治療で使用する薬剤は、放射性物質を含むものであり、その性質上、製造、流通過程、保管、投与環境、治療後の廃棄物処理までの一環した法規制に基づく厳格な管理体制が必要となります。現状、全量を輸入に頼るため、安定供給の観点での対策も重要です。
本調査研究の実施において、分野横断の専門家から構成される「核医学治療環境にかかる調査研究会」を立ち上げ、国際的、専門横断的な観点からの助言の下、日本が今後取り組むべき課題などについて検討を行いました。本報告書を、がん治療に関わる医療界、産業界、専門団体、患者の皆様に活用いただくことで、核医学治療がさらなる進化、発展していくことを願うとともに、当社も共に取り組んでまいります。
本調査研究の主旨
核医学治療は、体への負担が小さく、病巣の広がりに応じたオーダーメイド治療として、欧米では高く評価され、がん治療のひとつの柱として期待されてきました。
難治性がんに対しても大きな治療効果が期待でき、近年、わが国においても注目されています。
一方、核医学治療を受ける患者が入院する病床がない都道府県が存在するなど、誰もが治療にアクセスできる状況ではありません。近年、国内外で、革新的な放射性医薬品の開発も進んでいることも踏まえ、より多くの患者が核医学治療を受けられる環境整備が待たれるところです。
本調査研究は、核医学治療を取り巻く医療環境として、1)国の政策やガイドライン、2)規制と保険制度、3)医療需要、4)提供体制、5)医療・健康情報の5つの領域について現状を整理し、諸外国の動向も踏まえながら、わが国における核医学治療の環境整備に向け、今後取り組むべき課題を提示しました。
【考察要旨】
核医学治療における放射性医薬品に関する二重規制の問題や、治療病床に関する制約、放射性同位元素の国内製造に関する課題など、以前より課題視されてきた点について、関係者の努力により着実に環境整備、改善が進んできたことが確認されました。また国の疾病対策や研究開発指針においても、核医学治療についての言及があり、推進の根拠が示されています。
一方、核医学治療の普及に必要な情報の整備基盤など十分でなく、整備が必要な状況です。また今後急増する需要に対応するためには、相当程度の病床数が必要であると試算され、病床整備の第一歩として都道府県が定める医療計画における必要な医療機能として記載を行うなど、計画的な整備の方策や人材育成の在り方を提言しました。さらに、放射性医薬品の施設毎の制約にもなりえる、放射性医薬品の使用予定数量を拡大できるよう、貯水槽の規模や総排気量の増強など、合理的・計画的な設備運用についても提言しました。
- *国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」(2022.3.18更新)
資料:核医学治療を取り巻く医療環境調査 報告書(PDF/4,835KB)
資料:核医学治療を取り巻く医療環境調査 報告書(概要資料)(PDF/1,433KB)
本調査は、ノバルティスファーマ株式会社から支援を受け実施しました。ただし、中立性・客観性を重視し、支援元からの関与を受けることなく独立的に行っております。