米国州法におけるプラスチック対策の概況 —カリフォルニア州法の動向と事業リスク・機会—

2026年1月21日

サステナビリティコンサルティング第2部

鍋谷 佳希

*本稿は、『plaplat®』2025年11月13日(発行:長瀬産業㈱)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

製品設計やサプライチェーンの各段階で、企業が「使う責任」「再生する責任」を問われる時代となっています。
なかでも米国は、連邦レベルよりも先に州ごとに独自の法整備が進み、特にカリフォルニア州では野心的なEPR(拡大生産者責任)制度やマイクロプラスチック規制が注目を集めています。

本稿では、カリフォルニア州を中心に米国州法におけるプラスチック対策の動向を整理し、企業にとっての事業リスクと新たな機会を考察します。

はじめに

欧米では、使い捨てプラスチックの削減やマイクロプラスチック規制が本格化しており、特に米国では連邦法に先行して州単位の取り組みが進展しています。これらの規制は、単なるごみ処理の問題にとどまらず、プラスチックの設計・使用・再生のあり方そのものの見直しを促しています。

米国各州の取り組みは多岐にわたり、主に次のような対応が進んでいます。

  • プラスチック包装材に対する拡大生産者責任(EPR)と、それに基づくリサイクル率・削減率などの定量目標の設定
  • 再生プラスチックの使用義務と、その利用率目標の設定
  • 使い捨てプラスチック袋や食品容器等の禁止
  • 生分解性プラスチックの誤認防止のための表示規制
  • 飲料水中マイクロプラスチックの監視
  • 製造・物流工程での流出防止の義務化

本稿では、これらの中でも野心的な定量目標を掲げるカリフォルニア州のEPR法(SB 54)に焦点を当て、その制度の概要と企業への影響を解説します。あわせて、政策の視野がメソプラスチックからマイクロプラスチックへ広がる中、同州の飲料水中マイクロプラスチック監視の制度と背景についても紹介します。

カリフォルニア州のEPR法

カリフォルニア州では2022年、「プラスチック汚染防止および包装の生産者責任に関する州法(SB 54)」*1が成立しました。
2032年までに州内で流通する使い捨てプラスチック包装材の100%を「リサイクル可能・再使用可能・堆肥化可能」のいずれかにすることなどを義務付ける包括的な制度です。

SB 54の特徴は、自治体中心の回収から、製造者・事業者が責任を負うEPRへ転換した点にあります。プラスチックを使用する企業は、素材選定にとどまらず、製品設計・包装仕様の段階からリサイクル性を考慮することが求められます。

この制度はカリフォルニア州の資源リサイクル・回収当局が監督します。使い捨てプラスチック包装材・食品容器の製造者・販売者は、原則として生産者責任組織(Producer Responsibility Organization:PRO)に加入し、システム運用や資金拠出を行います(一定要件を満たせば個社での独自遵守も可能)。
加入企業は、使用する包装材の種類・量や再資源化の状況を年次報告し、透明性の確保が求められます。

具体的な定量目標(SB 54)

  • 2032年までに、使い捨てプラスチック包装材・食品容器の100%をリサイクル可能・再使用可能・堆肥化可能にする
  • 2032年までに、同リサイクル率を少なくとも65%に引き上げる
  • 2032年までに、同総量を25%削減する(2023年比)

SB 54は、ごみ削減から資源循環へ政策の軸足を移す法律であり、製造・流通・消費の各段階で責任を共有する枠組みの必要性を示しています。
企業には、包装材やサプライチェーンの見直しといったリスク対応が求められる一方、リサイクル技術の高度化、再生材を活用した設計、代替素材の開発など、新たな機会も広がっています。
特に、単一素材パッケージや堆肥化可能なバイオマスプラスチックの活用など、循環型ビジネスへの転換が加速すると見込まれます。

さらに、プラスチック対策は、メソプラスチックにとどまらずマイクロプラスチック(微細な粒子レベルの影響)へと拡大しています。

カリフォルニア州のマイクロプラスチック対策

2015年に制定された連邦法「Microbead-Free Waters Act of 2015」*2により、化粧品などへのマイクロプラスチックビーズ使用が禁止されました。
これを受け、各州の対策が加速しました。カリフォルニア州は2022年の「Statewide Microplastics Strategy」*3において、意図的に添加されたマイクロプラスチックを含む製品の販売禁止の拡大、タイヤ・繊維・農業・食品包装・水産業等における代替製品評価ワークショップ、洗濯機・乾燥機のマイクロファイバー除去フィルター普及促進などを、即時実行可能な管理行動として掲げています。

とくに飲料水中のマイクロプラスチック監視は、2018年制定の州法SB 1422[4]に基づき実施されています。
制度は最大4年間の段階的モニタリングで、
■フェーズ1(2023~2025年)は河川・貯水池などの未処理原水
■フェーズ2(2026~2028年)は処理済み飲料水
を対象とします。指定事業体は四半期ごとに採水・分析・報告を行い、ラマン分光法・赤外分光法を用い測定します。

このように、カルフォルニア州はマイクロプラスチック対策でも一歩先を行く州として、今後は、バージン素材としてのプラスチック、廃棄物としてのプラスチック、再生材としてのプラスチックに加え、「粒子としてのプラスチック」という側面への対応も広がっていくと考えられます。

最後に

上記の通り、カリフォルニア州のプラスチック政策は、単なる環境政策にとどまらず、製造・流通・消費を含む事業構造全体の変革を促しています。
国際取引を行う企業にとって、リスクであると同時に、新たな市場機会でもあります。

同州では、プラスチック包装のEPR以外にも、飲料容器への再生材含有率義務、リサイクル表示・環境ラベルの基準、繊維製品を対象とするEPRなど、複数の対策が並行して検討・導入されています。
これらの動きは、使用済プラスチックを単なる「廃棄物」と捉えるのではなく、「資源」として捉え、循環型社会への転換を目指すものです。
各社は規制対応にとどまらず、経営課題としてのプラスチック対策に取り組むことが求められています。

参考文献

  1. *1
    CalRecycle (2025) Plastic Pollution Prevention and Packaging Producer Responsibility Act,
    https://calrecycle.ca.gov/packaging/packaging-epr/
  2. *2
  3. *3
  4. *4
    SB-1422 California Safe Drinking Water Act, microplastics.
    https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billTextClient.xhtml?bill_id=201720180SB1422

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