
復興を後押しした2千億円、経済効果1兆円を紐解く 補助金の経済波及効果に関する分析
2025年3月21日
社会政策コンサルティング部
鹿内 智浩
佐藤 佑希
長尾 優一
松元 麗乃
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要旨
被災地域における産業復興の足取りは、産業構成の違いといった各地域の状況によって様々であるが、製造業が一定の役割を果たしてきた。
津波補助金は、被災地を対象とした立地支援補助事業の1つであり、製造業等(工場や物流施設等)を対象として、青森県から茨城県に至る比較的広域なエリアにおいて、平成25年度から令和5年度(公募期間)に渡って、実施されてきた。
津波補助金における全国への経済波及効果を推計したところ、補助金交付額1,899億円に対し、1兆1,362億円であり、これは補助対象経費の2.07倍、補助金交付額の5.98倍という大きさであった。企業規模別では中小企業等よりも補助率の小さい大企業の方が、投入補助金あたりの波及効果が大きく、また補助事業の業種別では、製造業よりも非製造業が、中でも商業・物流における投資効果が大きいという結果となった。各県別の分析では被災5県の合計が6,072億円の経済波及効果となった。これは全国版の半分強であり、半分近くが自県以外に波及したものと考えられる。なお、投資後の生産活動や、地域(県)間の分析、並びに被災地域における他の立地支援補助事業(自立補助金等)も併せた分析は、本稿では実施していないが、復興の実態をより精緻に把握できると考えられ、今後の課題である。
立地支援補助事業の設計に際しては、立地支援の本来の目的達成を第一に考えることに加えて、企業規模、業種構成、サプライチェーンといった地域の産業特性を踏まえ、より大きな経済波及効果を得るためにどのように事業を設計すべきか、という視点を持つことが肝要と考える。今後新たに補助事業を設計、運営する機会があれば、本分析を通じて得られた知見を活かしていきたい。
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