要旨
- 日本経済の持続的・包摂的成長に向けては、企業の生産性向上・競争力強化に加えて消費の拡大が不可欠(「企業」と「家計」は両輪の関係)
- 消費が低迷してきた背景には、①実質所得の伸び悩み、②増え続ける現役世代の社会保障負担、③現役世代を中心とした将来不安の3つの構造的課題
- 第一に、実質所得の伸び悩みへの対応が必要
- 各種壁や労働規制を受けた「働き控え」(=量的側面)と労働生産性の伸びの不十分さ(=質的側面)が主因。「社会保険の壁」緩和など働き方に中立的な制度設計を迅速に進めるとともに、AI時代も見越した官民連携リスキリング体制を構築することが肝要
- 第二に、高齢人口の増加にともない、増え続ける社会保障負担が現役世代の可処分所得を圧迫しており、社会保障改革による負担の抑制が不可避。
- 高齢者を含めた応能負担の強化に加え、DX・AI活用による生産性向上等を通じて医療・介護費を抑制する対応が有効
- 第三に、実質所得伸び悩みや負担増に加え、将来不安を背景として消費を抑制する行動が定着しており、再分配政策の強化と家計の金融投資促進が中長期的な課題。
- 給付付き税額控除により中低所得者層への再分配機能を欧州先進国並みに強化するとともに、NISAの一段の浸透など家計の金融資産形成を促す取組が課題に

