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がん治療医に対するアンケートの結果から実践面の課題が明らかに

がんの根治的治療期における疼痛治療の実施率、過半の医師が「一割未満」と回答

2007年2月2日

みずほ情報総研株式会社(本社:東京都千代田区、社長:小原 之夫)が事務局を担当する「患者のQOL(Quality of Life)に着目したがん性疼痛治療のあり方研究会*」では、がん治療医に対して疼痛治療の実態に関する調査研究を実施し、このたび報告書としてまとめましたのでご案内いたします。

わが国においては、2004年度から開始された第3次対がん10か年総合戦略において「がん患者等の生活の質(QOL)の向上」が目標の一つに掲げられているほか、本年4月に施行されるがん対策基本法にもがん患者の痛みや心労を取り除く緩和ケアについて「早期から適切に行われるようにする」ことが明記されています。しかし、オピオイド(モルヒネなど麻薬系鎮痛薬)の使用量に欧米諸国との差があることや、医療現場では根治を重視する傾向にあることが新聞・雑誌等で伝えられるなど、がん患者の痛みの治療は十分に行われていない様子がうかがえます。

みずほ情報総研ではこのたび、がん治療や緩和ケアに携わる医師および学識経験者と研究会を組成し、がん治療医へのアンケート調査や患者等へのヒアリング調査などを通じて、がん性疼痛治療の実態と課題を明らかに致しました。アンケート調査の結果、根治的治療期における疼痛治療の実施割合を「1割未満」と回答した医師が、入院患者の場合で60.3%、外来患者の場合で65.9%にのぼるなど、痛みがありながらも疼痛治療が実施されていない患者の存在が示唆されました。

また、96.3%の医師が患者の訴えをもとに治療開始の判断を行っているのに対し、患者等へのヒアリング調査では「緩和ケアの開始=がん治療の中止」との意識から医師に対して積極的に疼痛治療を訴えないとの声もあがっており、がん患者のQOL向上に向けて、このような構図の解消等が今後の課題になると考えられます。

調査概要

  1. 1)がん治療医(外科医、内科医、放射線医等)に対するアンケート調査
    • 調査時期:2006年8月
    • 調査票送付数:3,856件
    • 回収数:431件(回収率11.2%)
  2. 2)がん患者、がん患者への取材経験が豊富なジャーナリストへのヒアリング調査
  3. 3)先行研究および専門誌等の文献サーベイ

主な調査研究結果は以下のとおりです。

  1. 1.がん患者の根治的治療期における疼痛治療の実施割合を「1割未満」と回答した医師は、入院患者の場合で60.3%、外来患者の場合では65.9%にのぼる。先行研究で診断時点における痛みの出現率が30%とされているのに対し、疼痛治療の実施割合を「3割以上」と回答した医師は、入院患者の場合で8.4%、外来患者の場合で5.1%にとどまっており、痛みがありながらも疼痛治療が実施されていない患者の存在がうかがえる。

    ステージ別の疼痛治療実施割合(分布)

    ステージ別の疼痛治療実施割合(入院)

    ステージ別の疼痛治療実施割合(外来)

  2. 2.がんの進行度に応じた疼痛治療について、「全ての患者において積極治療と同等の重要性がある」と回答した医師は81.9%にのぼるものの、うち18.3%の医師は「必ずしも疼痛治療を平行して実施していない」と回答。治療期・非治癒期を問わず疼痛治療の重要性が認識されている一方で、実践面に課題があることが示唆されている。

    疼痛治療に関する重要性認識と実践度合い

    疼痛治療に関する重要性認識と実践度合い

  3. 3.モルヒネ等の強い鎮痛薬開始の判断基準として、96.3%の医師が「患者の訴え」をあげている。一方、患者等へのヒアリングでは「緩和ケアの開始=がん治療の中止」ととらえ、医師に対して積極的に痛みの治療を訴えることはしないとの声もあがっている。

    治療開始の判断基準(複数回答)

    治療開始の判断基準(複数回答)

  4. 4.がん性疼痛に関わる治療法について89.8%の医師が学習経験「あり」と回答している。ただし、学習方法として「学会やセミナー、専門誌」のみをあげた医師が全回答者の4割近くにのぼっている。
  • *患者のQOLに着目したがん性疼痛治療のあり方研究会メンバーは、以下のとおりです。
    佐藤靖郎氏(国立病院機構横浜医療センター外科医長)
    髙木安雄氏(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)
    堀夏樹氏(NTT東日本関東病院緩和ケア科部長)
    [事務局]みずほ情報総研株式会社 社会経済コンサルティング部

ニュースリリースに関するお問い合わせ

みずほ情報総研株式会社
広報室 平石 祐二、穂苅 由紀
電話:03-5281-7548
E-mail:info@mizuho-ir.co.jp

調査に関するお問い合わせ

みずほ情報総研株式会社
社会経済コンサルティング部 掛川 紀美子、森岡 聖晴、田中 陽香
電話:03-5281-5277

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担当:広報室
電話:03-5281-7548

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