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新興国の需要拡大や技術の質の変化を背景に重要領域への選択と集中が進展、オープンな知財活用による自前主義の克服が課題

企業の知的財産戦略の新たな潮流に関するアンケート調査を実施

2013年11月7日
みずほ情報総研株式会社

みずほ情報総研株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:西澤 順一)は、企業の知的財産戦略の変化の実態とその背景、今後の課題を把握するため、2013年10月に、建設業、製造業、情報サービス業の売上高上位の企業10,000社を対象とした「知的財産戦略の新たな潮流と課題に関する調査」を行い、このたび調査結果をとりまとめましたのでご案内いたします。

企業をとりまく環境は近年大きく変化しており、これまでのように単に優れた知的財産を特許権として権利化するだけでは競争力を高めることはできません。知的財産戦略、事業戦略、標準化戦略を有機的に連携させ、収益・シェアの確保と市場の拡大を両立させていく競争戦略が不可欠となってきています。また、2002年に政府が知的財産立国を宣言してから10年が経過し、2013年は企業の知的財産戦略の節目の年です。近年、知的財産活動については数多くの研究が行われる一方で、知的財産戦略の変化の方向性を明らかにした調査研究はみられません。

そこで、みずほ情報総研では、知財立国宣言以降の新しい環境変化を受けて、企業の知的財産戦略がどのように進展してきたかを把握し、今後の知的財産戦略の課題を探ることを目的にアンケート調査を実施しました。主な調査結果は以下のとおりです。


  • 企業の知的財産戦略は、近年の「新興国市場の需要拡大」「新興国の競合他社の台頭」などグローバル市場の変化や、「情報技術の進歩」「製品ライフサイクルの短期化」「研究開発における協業の進展」「モジュール化、コモディティ化」などの技術の性質の変化に大きな影響を受けている
    ⇒ 過去10年間で知的財産戦略に影響を与えた環境変化の上位に挙がったのは、「新興国市場の需要拡大」(40.3%)等の新興国関連、「情報技術の進歩」(25.3%)等の技術関連であった
  • 企業の知的財産戦略は、費用対効果の向上や権利形成を行う領域の選択と集中などにより、重要領域を絞り込んで収益・シェアを確保するように変化している傾向がうかがえる
    ⇒ 過去10年間の知的財産戦略に対する意識や取り組み内容の変化として、「知的財産活動の費用対効果を意識するようになった」を挙げる企業が約5割(50.3%)に達した
  • 一方で、市場の拡大を狙うための「ライセンス許諾や国際標準における知財の活用」や、「必要な知的財産権を外部から調達する」などの他社と協調したオープンな知財活用を検討するようになった企業は1割程度に留まる。今後、オープンな知財活用に強みを持つ海外企業との競争が激しくなる中で、日本企業は知的財産戦略の自前主義をいかに克服するかが課題と考えられる

■本調査の詳細については、2013年11月14日木曜日開催のみずほビジネスイノベーションフォーラム「知的財産戦略の最前線 ―グローバル化、オープンイノベーション、コモディティ化への対応―」にて発表いたします。
https://www.mizuho-ir.co.jp/seminar/info/2013/bif1114.html

アンケート調査の概要

左右スクロールで表全体を閲覧できます

「知的財産戦略の新たな潮流と課題に関する調査」
対象: 建設業、製造業、情報サービス業の売上高上位10,000社の知的財産戦略の責任者
調査期間: 2013年10月15日火曜日~10月30日水曜日
有効回答企業数: 807社(有効回収率 8.1%)

主な回答

知的財産戦略に影響を与えた環境変化

  • 10年前(2003年頃)から現在までの間で知的財産戦略に影響を与えた環境変化の上位に挙がったのは、「新興国市場の需要拡大」(40.3%)、「新興国(中国、韓国、台湾等)の競合他社の台頭」(38.5%)であった。新興国では企業の事業戦略や知的財産制度の運用などが先進国とは大きく異なることから、これまでの欧米等の先進国や日本国内への対応を中心とした知的財産戦略が変化したことが考えられる。
  • また、「情報技術の進歩(インターネット、オープンソース、クラウド等)」(25.3%)、「製品ライフサイクルの短期化」(24.8%)、「研究開発における協業(オープン・イノベーション)の進展」(23.9%)「設計のモジュール化、技術のコモディティ化の進展」(19.1%)などの技術に関連した変化も挙がっている。情報技術の進歩、製品ライフサイクルの短期化など技術そのものの性質が変化する中で、企業は他社との協業も視野に入れながら次々と新しい研究開発を効率的に行うと同時に、こうした変化に伴って知的財産戦略を整合させる必要に迫られていると考えられる。
  • 従来、企業の知的財産戦略は、知的財産訴訟や模倣品の発生という知的財産に直接関係した環境変化を受けて高度化してきた。しかし近年はそれだけではなく、グローバル市場の変化や技術の性質の変化といった新しいトリガーが知財戦略に大きな影響を及ぼすようになったといえる。

10年前から現在までの間で知的財産戦略に影響を与えた環境変化
図表1

知的財産戦略の変化

  • 過去10年間の知的財産戦略に対する意識や取り組み内容の変化として、「知的財産活動の費用対効果を意識するようになった」を挙げる企業が約5割(50.3%)と最も多かった。費用負担の大きいグローバルな権利形成や、製品ライフサイクルの短期化、技術のコモディティ化等の技術の質の変化を背景に、企業の知的財産戦略は効率性を追求するようになってきていると考えられる。
  • 次いで、「研究開発投資や知的財産権の確保を重要な領域に集中化するようになった」(32.1%)、「特許権だけでなく意匠権、商標権を効果的に組み合わせて権利形成を行うようになった」(30.5%)、「国外への出願を行う際に、市場だけでなく多様な観点(制度、競合他社)を考慮するようになった」(29.1%)を挙げる企業が多かった。企業は権利形成を行う知的財産の選択と集中を進めており、さらに特許出願による保護だけでなく、意匠権、商標権、国外への出願も選択しつつ、重要領域を絞り込んで収益・シェアを確保しようとしていることがうかがえる。
  • 一方で、「ライセンス許諾や国際標準における知財の活用等、オープンな知財の活用も重視するようになった」(11.5%)、「事業に必要な知的財産権を外部から調達することを検討するようになった」(12.6%)を挙げる企業は1割程度に留まった。現状では他社と協調したオープンな知的財産の活用の優先度はそれほど高くないことがうかがえる。今後、オープンな知財活用に強みを持つ海外企業との競争が激しくなる中で、日本企業は知的財産戦略の自前主義をいかに克服するかが課題と考えられる。

10年前と比べた知的財産戦略に対する意識や取り組み内容の変化
図表2

本件に関するお問い合わせ

報道関係者からのお問い合わせ

みずほ情報総研株式会社
広報室 佐藤 綾子、石原 卓
電話:03-5281-7548
E-mail:info@mizuho-ir.co.jp

アンケート調査の内容に関するお問い合わせ

みずほ情報総研株式会社
経営・ITコンサルティング部 野口 博貴
電話:03-5281-5431

デジタルコンサルティング部03-5281-5430

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