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2019年1月8日

省エネ法「荷主規制の見直し」について

環境エネルギー第2部 中川 日菜子

近年、ネットショッピングの利用者が急速に増加している。総務省の発表では、ネットショッピングを利用した世帯の割合は、2002年から2015年の間に約5.2倍にまで増加している(*1)。この急速な利用者増加の背景には、インターネットを通じて商品を販売するEC事業者による「翌日(または当日)配送」や「無料配送」等のサービスレベルの向上に加え、インターネットオークションやフリーマーケットサイトのようなCtoC仲介サービスの台頭が一因として考えられる。

消費者が気軽にネットショッピングを楽しめる環境が整備されるにつれ、負担を強いられているのが物流業界だ。現在、物流業界では、深刻な人手不足や度重なる再配達による輸送の非効率化、トラックの荷待ち時間の増加等による、ドライバーの労働時間の増加や増エネといったさまざまな課題が生じている。これらの課題に対応すべく、各省庁が施策を打ち出した。

2018年6月に、経済産業省が公布した「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」の改正における荷主規制の見直しもその一つだ。

近年のネットショッピング利用の増加やサービスレベル向上に伴う小口配送および再配達の増加等により、物流業界では増エネが懸念されている。この課題に対応するため、今回の省エネ法改正では「荷主」の定義が見直された。今まで「荷主」は「貨物の所有者」と定義され、貨物の所有権を持っていないEC事業者は省エネ法の規制対象外であったが、定義が「貨物の輸送方法等を決定する事業者」と見直されたことで、規制対象に含まれることとなった (ただし、輸送方法を決定しないモール事業者やCtoC仲介事業者は対象外)。また、新たに、到着日等を指示できる荷受側の事業者を「準荷主」として位置づけ、「準荷主ガイドライン(*2)」を基に、貨物輸送に関わる省エネ取り組みへの協力を求めることになった。

上記で述べた物流業界の課題解決のためには、荷主側と荷受側との協力体制が不可欠であり、本省エネ法改正はその協力体制構築を促すことで、物流効率化を促進する狙いがあると考えられる。しかしながら、最終的に再配達になるかどうかは規制の対象にはならない一般消費者の行動によるところが大きく、今回の改正だけでは根本的な解決は難しい。今後は、一般消費者への効果的な意識啓発を行う手段についても考える必要がありそうだ。

  • *1)総務省 統計トピックスNo.92 急増するネットショッピングの実態を探る
  • *2)準荷主ガイドライン記載の省エネ取り組みは次のとおり。「リードタイムの見直し」「発注ロット・発注頻度の見直し及び発注量の平準化・最適化」「大型輸送機器の受け入れ体制の確保」「計画的荷積み・荷卸しの推進」「ユニットロードシステム化の推進」「関連インフラの整備」