情報通信研究部 橋本 大樹
このコラムでは、全4回の連載で、ディープラーニングフレームワークKerasの開発環境を構築し、簡単なサンプルプログラムを動かしてディープラーニングを体験してみることを目標とします。このコラムを参考に、ディープラーニングの世界への第一歩を踏み出しましょう。
- 第1回 環境構築前に考えること
- 第2回 GPUドライバとライブラリの対応関係確認
- 第3回 Keras開発環境の構築
- 第4回 サンプルプログラムの実行
概要
第3回となる今回は、TensorFlowをバックエンドとしたKerasの開発環境を構築します。
本記事を執筆するにあたっては、以下の環境で動作確認を行いましたが、ライブラリのバージョンが異なる場合でも、多くの場合同様の手順で環境を構築できます。ディープラーニング開発環境構築の一助になればうれしく思います。
- OS: Windows 10 (1809)
- GPU: あり (NVIDIA)
- Python 3.7 (Anaconda)
-
ディープラーニングフレームワーク: Keras (keras 2.3.1)
-バックエンド: TensorFlow (tensorflow-gpu 2.0.0)
Anacondaのインストール
はじめに、環境構築に使用するAnacondaをPCにインストールします。
インストーラのダウンロード
以下のサイトから、Anacondaのインストーラをダウンロードしてください。サイトには、Python 3.7 versionとPython 2.7versionの2つのインストーラが用意されていますが、Python 3.7 versionをインストールしてください。本記事第2回の手順で決定したPythonバージョンが3.7以外の場合も、Python 3.7 versionのAnacondaをインストールすれば、任意のバージョンのPython環境を作成できます。
https://www.anaconda.com/distribution/
インストール
ダウンロードしたAnacondaのインストーラを実行し、指示に従ってインストールを行ってください。
なお、インストールのオプションを選択する「Advanced Options」の選択肢の意味は以下の通りです。
- 「Add Anaconda to my PATH environment variable」:Windowsの環境変数 PATH に Anaconda のフォルダを追加するか否かを設定できます。インストーラの説明の通り非推奨(Not recommended)です。
- 「Register Anaconda as my default Python 3.7」: PCに複数のバージョンのPythonを入れる予定が無いのであれば、登録する(チェックを入れる)ことをお勧めします。
Anaconda仮想環境の作成 & Pythonのインストール
次に、Anacondaの環境分離機能を使用した、開発に使用する仮想環境の作成と仮想環境へのPythonのインストールを行います。
Pythonによるディープラーニング開発では、プログラムごとに異なるバージョンのライブラリを使い分けることも多いため、仮想環境を作成することをお勧めします。
Anaconda仮想環境の作成
スタートメニューからAnacoda Promptを起動し、以下のコマンドを実行してください。「py37」という名前の仮想環境が作成され、Python 3.7がインストールされます。
Pythonのバージョンは本記事第2回の手順で確認した、GPUドライバのバージョンに対応するバージョンを選択してください。
conda create --name=py37 python=3.7
仮想環境の有効化
Anacoda Promptにて以下のコマンドを実行し、作成した仮想環境「py37」を有効にしてください。
activate py37
環境が切り替わるとAnacoda Promptに(py37)と表示されます。
Pythonライブラリのインストール
作成した仮想環境に、Pythonライブラリをインストールします。
Anacondaを使用したインストール
Anacoda Promptにて以下のコマンドを実行してください。TensorFlowとKerasおよびその依存ライブラリがインストールされます。
2行目の"tensorflow-gpu="の後ろの番号には、インストールするTensorFlowのバージョンを指定します。本記事第2回の手順で決定した適切なバージョンを指定してください。Kerasのバージョン指定は不要です。
conda config --append channels conda-forge
conda install tensorflow-gpu=2.0.0 keras
(補足)
本記事執筆時(2020年1月)、Anaconda公式により提供されている最新のKerasのバージョンは2.2.4であり、TensorFlow 2.0に対応していません。ここでは、上記コマンドの1行目を実行することで、有志によりAnaconda用パッケージを数多く公開しているconda-forgeからのKeras 2.3.1のインストールを有効化しています。conda-forgeの詳細は以下のサイトをご参照ください。
Pythonライブラリのインストール確認
最後に、各ライブラリが正常にインストールされていることを確認します。
TensorFlow
Anacoda Promptにて以下のコマンドを実行してください。
python -c "import tensorflow"
エラーが表示されなければ、TensorFlowが正常にインストールされています。筆者の環境では、以下のようなメッセージが表示されました。表示されるメッセージはTensorFlowのバージョンや環境により異なります。

Keras
Anacoda Promptにて以下のコマンドを実行してください。
python -c "import keras"
同じく、エラーが表示されなければ、Kerasが正常にインストールされています。筆者の環境では、以下のようにバックエンドにTensorFlowが使用されている旨が表示されたのち、TensorFlow読み込み時のメッセージが表示されました。

TensorFlowによるGPU認識
Anacoda Promptにて以下のコマンドを実行してください。
python -c "from tensorflow.python.client import device_lib; device_lib.list_local_devices()"
以下のようにGPUの型番等が表示されれば、GPUを正しく認識しています。こちらもTensorFlowのバージョンや環境により表示されるメッセージ等は異なります。

おわりに
今回は、ディープラーニング初学者向けの環境として、TensorFlowをバックエンドとしたKerasの開発環境を構築しました。第2回で記載したGPUドライバとライブラリの対応関係に注意すれば、非常に簡単に環境構築が可能なことがお分かりいただけたかと思います。
次回のコラムでは、いよいよ、Keras公式のサンプルプログラムを用いて画像分類を試します。お楽しみに。