みずほ情報総研株式会社
調査の目的と背景
【背景】 新型コロナウイルス感染症の流行後にBCPが求められる内容の変化
- 世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、否応なしに事業継続のための対策に取り組まざるを得ない環境となり、多くの企業において感染症拡大を想定した事業継続計画(BCP)の策定ニーズは高まりを見せている。加えて、自然災害によるリスク自体はなくなるどころか、年々発生頻度が高まっており、地震や風水害といった自然災害を想定したBCPも高く求められており、様々なリスクに対応できる包括的なBCP(オールハザード型BCP)を策定する必要性がこれまで以上に高くなってきたと考えられる。
- 新型コロナウイルス感染症においては、全世界で長期間にわたって事業が停止または停滞する事態に陥っており、今後BCPに求められる役割は、事象発生時の業務停止からの早期復旧という本来的な目的のみならず、事業継続性を確保するためにサプライチェーンをどう再設計するかといった、経営戦略や事業戦略と密接不可分なものとなっていくと考えられる。
【目的】 新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた事業継続のための対応等の実態把握
- 今回の調査では、感染症拡大により各企業で生じた影響の内容や行った対策の効果、コロナ禍における各企業のBCPの策定状況や想定リスク、Withコロナ/Afterコロナの状況下における取組方針等の把握を目的に調査を実施した。
調査方法
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調査対象 |
全国の従業員51名以上の企業に勤める経営者・役員および会社員のうち、課長・次長クラス以上の人で、かつ、事業戦略や経営戦略、BCPの策定に関与する(または意見できる立場にある)人 |
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調査方法 |
インターネットによるアンケート調査 |
調査期間 |
2020年7月11日~7月13日 |
有効回答数 |
事業戦略・経営戦略に関与している(または意見できる)人:361名 |
調査項目 |
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結果の要旨
本調査の主な結果
- 新型コロナウイルス感染症の流行を受けて行った対策のうち、事業を継続するうえで効果的だった対策は、「オンライン会議システム」(84.4%)、次いで「テレワーク」(78.7%)であった。また、「海外生産拠点の切り替え」(76%)、「物流経路・方法の変更」(75.7%)のほか、「新規事業への参入」(73.2%)、「原材料・部材在庫・商品在庫の積み増し」(70.9%)といった、事業戦略レベルでのドラスティックな対応についても効果的だったと評価する意見が多かった。
- コロナ対策としてテレワークを実施したと回答した人のうち、約8割がAfterコロナ(流行が落ち着いた段階)においてもテレワークを実施する予定と回答し、コロナ流行以前のテレワーク制度の導入状況(7割)よりも高くなった。
- 全体の4割弱がコロナ禍以前からBCPを策定しており、従業員数が多い企業ほど策定済みの割合が高い傾向がみられた。従業員数「5001名以上」で61.1%が策定済みであったのに対し、「51~100名」では策定済みは24.4%であった。
- コロナ禍以前に策定されていたBCPにおける想定リスクは、「大規模地震」が91.2%と最も高く、次いで「風水害」(71.0%)、「感染症」(42.8%)の順であった。
- コロナ禍においてBCPが「効果的に機能した」との回答は16.7%にとどまり、機能しなかったとの回答は27.6%であった。
- BCP策定済みと回答した人のうち約8割がBCPの見直しが必要だと考えており、「すぐにでも見直す想定である」との回答は、従業員数「5001名以上」で36.6%であった。
本調査からの示唆
BCPは、「事象特定型」から「オールハザード型」へ
- コロナ禍では、発生した事象が自社BCPの想定外であったことなどから、BCPが効果的に機能したと評価したのは僅か17%
- 想定外のリスクに対して柔軟に対応するため、包括的な「オールハザード型BCP」の必要性が高まっている。
中長期的な対応と企業戦略としての「レジリエンス」が課題
- コロナ禍によるグローバルレベルでサプライチェーンの混乱などの状況において、一部の企業では企業戦略そのものに大きな影響を及ぼす取り組みに着手しており、70%以上が効果的だったと評価した。
- 企業は、多様化するリスクに対して柔軟に対応し、成長につなげるため、「レジリエンス」の概念を企業戦略に組み込んでいくことが求められる。
調査結果
「新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCPに関する調査」報告書(PDF/1,450KB)
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