調査部 アジア調査チーム 田村優衣
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概要
- 人口動態は経済成長と密接に繋がっている。理論的整理としては、「人口ボーナス/オーナス」の概念が用いられることが多い。人口ボーナス期には、生産年齢人口の増加、および総人口に占める生産年齢人口比率の上昇が、労働投入量や資本ストックの拡大を通じ、経済成長のドライバーとなる。翻って、人口オーナス期は、人口動態が成長の足かせとなる
- 2022年7月に発表された国連人口推計によれば、2050年にかけてはアフリカとインドが人口のけん引役となる見込みである。アジアに注目すると、人口動態は多様である。シンガポールやタイがすでに人口オーナス期に突入する一方、パキスタンやバングラデシュ、フィリピンのように人口ボーナス期が今後も長く続く国もある。アジアと一口に言っても、人口から見た成長のポイントは国ごとに分けて捉える必要がある
- 人口ボーナス期の国では、第一に、生産年齢人口の増加による労働投入拡大が成長の基軸になる。第二に、同比率の上昇局面に入ると、国内の貯蓄増により投資が拡大しやすい環境となる。人口オーナス期の国は人口動態による国内の成長力に限界を迎えるものの、グローバルバリューチェーンへの参加による海外経済の成長取り込みや、高生産性産業へのシフトが成長のけん引役となりうる