調査部 チーフグローバルエコノミスト 有田 賢太郎
調査部 主任エコノミスト 越山 裕資
要旨
- 深刻な人手不足が成長の足かせとなっている日本にとって、AI利活用は供給制約を緩和し、持続的な成長を実現する上で極めて重要。日本はAI利活用を徹底推進すべき
- AI利活用によって業務効率化と共に、パーソナライズ化などによる質の改善や、イノベーションによる新たな財・サービス創出を通じて付加価値の創出につなげることが重要。また、AI利活用は今後自動運転やロボットを通じて、物理的タスクにも適用される可能性が高い
- 一定の技術進展・普及前提を踏まえた試算では、AI利活用が最大限進めば日本全体の労働時間を2035年までに17.2%削減可能。コスト削減や新たな付加価値創出を通じ、日本全体の生産性を年平均1.3%改善し、最大で約140兆円の経済効果(AI利活用シナリオ=ありたき姿)と想定
- 一方で実現への課題は山積。働き方見直しの点では、スキルミスマッチ解消が最大の課題。余剰となる職種から判断・コミュニケーションなど、ヒトに求められるスキルが価値を発揮する職種への人材再配置が求められ、コスト面・キャリア形成の双方で企業側の支援が必要。既存スキルを活かしつつ、AIによる補完が可能か否かを見極めた上で、スキルギャップを埋めるリスキリングプログラムを検討すべき
- また、AIによる価値創出にはClosed Dataによる差別化が今後重要に。利活用サイドの競争優位性保持の点ではポジティブな動きであり、いかに早期にDataを蓄積・整備できるかが鍵。部門横断、企業横断の取組も今後視野に入るなか、戦略的なAI利活用に向け、現場人材や経営層の参画が必要
- 企業はAIに真摯に向き合い、技術的なキャッチアップとトライ&エラーを進めるとともに、各種課題を克服することが日本企業・産業競争力の強化に繋がる。政府もAI促進(攻め)と保護(守り)の視点から推進し、企業のAI利活用に向けた取組を後押しすべき