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2025年2月20日

みずほリポート

「金利のある世界」へ踏み出す日本経済

政策金利1%が家計・企業・政府・不動産市場に及ぼす影響

調査部 シニア日本経済エコノミスト 服部直樹
naoki.hattori@mizuho-rt.co.jp

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要旨

  • 日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除した後、2回の追加利上げを行い、政策金利を2008年以来となる0.5%まで引き上げ。日本経済が「金利のない世界」から「金利のある世界」に移行しつつあることを踏まえ、金利上昇による家計・企業・政府・不動産市場への影響について分析
  • 本資料では、今後、日本銀行が経済・物価動向を様子見しつつ、政策金利を1%まで段階的に引き上げると想定。長期金利は1%台半ばまで上昇、為替レートは140円/ドル近傍まで円高・ドル安が進展
  • 金利上昇による家計への影響は、全体としては差し引きでプラス。預金・国債利子収入や配当収入の増加分が、住宅ローン利払いの増加分を上回るため。ただし、住宅ローンなどの負債を保有する世帯に限ると、現役世帯を中心にマイナス影響が大きくなる見込み
  • 企業は、金利上昇局面でも経常利益が増益基調を維持。経済の緩やかな拡大に伴う売上高の増加や、価格転嫁の進展による限界利益率の上昇が、営業損益の改善を通じ増益に貢献。一方、金利上昇と円高により、有利子負債の負担が重い企業や輸出関連企業では利益が圧迫されやすい点に留意
  • 政府は、経済の拡大を受け税収が増加するものの、利払費の増加でほぼ帳消しに。長期金利が名目経済成長率を下回る「金利ボーナス」が先行き解消することで、基礎的財政収支の赤字が債務残高・GDP比の上昇に直結し、財政の自由度が低下。日本銀行は金利上昇局面で損益が一時悪化するも、その後は高水準の国債利子収入が損益改善要因に
  • 不動産市場では、経済が拡大するなかで実質金利がゼロ近傍にとどまり、商業用不動産価格が緩やかに上昇。純収益の成長率が価格上昇率をやや上回ることで、キャップレートは小幅に上昇すると試算