チーフアジア経済エコノミスト 河田 皓史
主任エコノミスト 月岡 直樹
主任エコノミスト 鎌田 晃輔
要旨
- Q1. 中国経済のデフレ圧力をどうみるか?
- 不動産問題や米国の対中追加関税の影響から需要が伸びにくい状況が継続する中、需給の緩み(=デフレ圧力)は暫く継続する可能性が高い。当面ゼロインフレ近傍(±0.5%以内)での推移となるのが標準シナリオ
- 上記の標準シナリオに対して上下双方向のリスクシナリオ(インフレ回復 or デフレ定着)が現実的に考えられる。どのシナリオに進みつつあるか見極める上で、①不動産問題の展開、②財政政策の動向、③米中貿易戦争の帰趨には引き続き要注目
- Q2. 中国経済のデフレ圧力は、日本企業のビジネス環境にどのような影響を与えるか?
- 名目GDPや企業収益が伸びにくくなり、現地の日本企業のビジネス環境も明るくなりにくい状況が続くとみられる
- そうはいっても毎年これほどパイが増える経済は米国と中国しかないので、地政学リスク等には注意しつつも、成長の果実を享受しに行くのが基本線。仮にデフレが定着するような場合でも、「デフレ経験値」の豊富な日本企業にとってはチャンスとなる面もあるため、必ずしも悲観一辺倒になる必要はない
- Q3. 中国経済のデフレ圧力は、グローバル経済に対してどのような影響を与えるか?
- 中国経済の需給の緩みは、物価面では、グローバル財物価に一定の下押し効果を既に及ぼしている可能性。実体経済面では、中国の製造業競争力の向上とも相まって、各国市場における中国企業・製品のプレゼンス向上を促す要因となっているとみられる
- 中国の余力低下は、米国の自国第一主義化とも併せて、次の「危機」における世界経済の不安要素に