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2025・2026年 内外経済見通し─ トランプ2.0への対応が進む過渡期の世界経済 ─ (PDF/2,388KB)
見通しのポイント
- 世界経済は、自国第一主義を掲げる米国の関税引き上げを受けて減速を見込む。震源地の米国はもとより、米国以外の地域も対米輸出の減少が足かせとなり、2025年の成長率は鈍化。2026年は関税影響が一巡するほか、米欧の財政拡張も下支えとなり、世界経済は巡航速度の成長ペースに回帰する見込み。並行して米国への製造業回帰や米国以外の新規市場開拓など米関税を前提としたグローバル供給網の再編が徐々に進展
- 米国では、関税引き上げによる痛みが先行する形で2025年後半には景気が減速する見通し。関税がもたらす物価上昇が企業の資金繰りや家計の実質購買力を圧迫。米国経済の7割を占める個人消費は弱含む公算。FRBはインフレ警戒も、雇用悪化に配慮し2026年にかけて金利を3.25~3.50%に引き下げる見込み
- 欧州では、関税影響により2025年は対米輸出依存度が高い製造業国を中心に成長率が下振れ。ECBは景気回復を後押しすべく、1.75%まで利下げを行うと予想。金融緩和の効果に加え、防衛費の増額やインフラ投資の積み増しなど財政拡張効果が発現することで、2025年末~26年にかけて景気は回復へ
- 中国は、輸出ドライブや第三国輸出拡大により対米輸出の減少を一部相殺も、内需低迷の継続が足かせになり成長率は減速。政策対応は景気の下支えとなるものの5%前後の成長率目標達成のハードルは高い。アジアでは、対米輸出依存度が高いベトナムなどで関税影響大。米国市場から溢れた中国製品の流入も下押し要因に
- 日本では、関税影響が逆風となり2025年度は停滞局面に。もっとも、原油安によるコスト抑制で非製造業を中心に企業収益は高水準を維持し、強い人手不足感のもと賃上げ機運は継続へ。個人消費も緩やかな回復が続き、景気腰折れを回避。根強い食料高や労務費の価格転嫁を受けコア物価は2026年度にかけて+2%弱の伸びに
- 日銀は米関税影響を見極めるべく2025年内の利上げを見送り。2026年入り後は4%台後半の賃上げと2%弱の物価上昇を確認し、利上げを再開する見通し。日米金利差は縮小に向かい、ドル円相場は円高基調での推移を予想。2026年央にかけて130円台後半まで円高ドル安を見込む