チーフ米欧経済エコノミスト 山本 康雄
調査部付 みずほ銀行産業調査部 欧州調査チーム出向 主任エコノミスト 川畑 大地
主任エコノミスト 諏訪 健太
要旨
- ロシア・中国・米国発の危機感に対応し、EUは政策を転換
- ロシア産ガス途絶によるエネルギー高、内外市場での中国との競争激化、米トランプ政権による高関税と防衛費増額要求という3つの環境変化を受けて、EUの危機感は増大
- 「エネルギーのロシア依存脱却」「防衛費増額」「インフラ投資加速(ドイツ)」に政策を転換(3つの政策変化)
- 政策変化(防衛費・インフラ投資)は、ユーロ圏の潜在成長率を1.5%に引き上げ
- エネルギー政策はロシア依存からの脱却を優先(エネルギー安全保障)。再エネ化が進む一方、エネルギー多消費産業では空洞化が進行
- EU全体での防衛費増額、ドイツのインフラ投資は長期的にユーロ圏の成長率を押し上げ。潜在成長率は0.3%程度上昇すると試算(1.2→1.5%)
- 財政拡張により長期金利は0.2~0.3%上昇するが、政府債務の大幅増や金利の急上昇は避けられる見通し
- 各国レベルでポピュリズムが台頭する中、EUの市場統合を前進させられるかが課題
- EUと課題を同じくする日本にもビジネスチャンス拡大の好機に
- 民主主義・自由貿易などの価値観を共有する日本とEUには、対米・対中関係など共通の利害が存在。また、エネルギーコスト高や少子・高齢化など、国内(域内)の構造的課題にも共通点
- 防衛装備品やネットゼロ技術、重要物資の調達、医療・ヘルスケア等の分野で、日欧企業の連携余地。第三国市場(アフリカ・中東・アジア等)で日欧企業が連携する事例も増える見通し