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2025・2026年度内外経済見通しと世界経済の中期展望─ 揺らぐ国際秩序と今後の世界経済 ─ (PDF/3,344KB)
見通しのポイント
- 世界経済は、米国の関税引き上げを受け2025年後半にかけて緩やかに減速する見通し。ただし、企業による関税コストの価格転嫁が緩やかなペースになることで、米国内外への瞬時的な下押し影響は抑制される見込み。2026年は堅調なAI投資や各国の財政拡張が景気を下支え、世界経済は巡航速度並みの成長ペースを維持
- 米国は、企業の慎重な価格転嫁により急激な関税ショックを回避。株高の支えもあり、緩やかな景気減速にとどまる見通し。2026年入り後も関税の下押し圧力は残存も、減税効果により2%近傍の成長へ回復。 FRBは関税によるインフレを警戒も、雇用の悪化に配慮し2026年にかけて金利を3.25~3.50%まで引き下げる見込み
- 欧州では、関税引き上げ前の駆け込み輸出の反動により、2025年後半の成長率は一時下振れ。2026年には防衛費の増額やインフラ投資の積み増しなど財政拡張が押し上げ、内需主導で景気は加速へ。ECBは物価安定と2026年以降の景気回復を背景に政策金利を2%に維持する見通し
- 中国は、輸出ドライブや第三国輸出拡大により対米輸出の減少を一部相殺も、消費促進策の効果剥落により内需が失速し、2026年にかけて景気は減速へ。アジアは、AI需要への感応度により濃淡も、米国向け駆け込み輸出の反動から、輸出を中心に景気減速へ。中銀は利下げで下支えも、輸出悪化の相殺には力不足
- 日本は、関税影響で2025年後半は精彩を欠く展開に。もっとも原油安によるコスト抑制で非製造業を中心に企業収益は高水準を維持、強い人手不足感のもと2026年も賃上げが継続。食料価格の鈍化や原油安を背景にコア物価は2026年にかけて1%台に鈍化。実質賃金加速を受けて消費は緩やかに回復し、景気腰折れを回避
- 日銀は米関税影響を見極めるべく2025年内の利上げを見送り。2026年入り後は4%台半ばの賃上げ継続を確認し、利上げを再開する見込み。日米金利差は縮小に向かうも、市場は日米金融政策を織り込み済で水準修正は限定的。円高基調への転換には至らず、ドル円相場は2026年度にかけて140円台前半の円安水準が続く見通し