シニア日本経済エコノミスト 服部 直樹
上席主任エコノミスト 坂中 弥生
主任エコノミスト 東深澤 武史
阿部 大樹
要旨
- 日本の経済成長率は米欧を下回る。特にICTや無形資産の資本投入が不足
- 今後、日本は有形・無形資産の投資拡大や、生産性のさらなる向上で経済成長を加速させる必要あり
- 設備投資の拡大や生産性の向上は、それぞれ供給力の強化と競争力の強化を通じ、経済安全保障における「自律性」や「不可欠性」の実現にもつながる
 
- 積極的産業政策の推進が、設備投資拡大による国内供給力強化の鍵
- これまで様々な設備投資支援策が実施されたが、期待成長率の低下や交易条件の悪化を背景に、企業は投資を抑制
- 一方、足元では経済安全保障への関心が高まり、企業の行動が徐々に変化。政策効果が発現しやすい環境に
- 積極的産業政策は、有望領域・産業への重点支援で企業の成長期待を形成し、民間投資・対内直接投資の呼び水になるほか、エネルギー需給安定化を通じて化石燃料高騰への耐性を強化し、設備投資拡大の基盤に
- 政策効果が発現すれば、設備投資額:2040年度200兆円の政府目標も十分達成可能
 
- 生産性向上による競争力強化には、企業の新陳代謝促進や研究開発費の増加が重要
- 起業家の裾野拡大やスタートアップの出口戦略多様化、成長資金供給の拡充等による起業・成長の加速が、新陳代謝促進を通じ生産性を押上げ
- 大学・公的機関の研究開発費を増やし、基礎研究等のイノベーションを公的に支援することも生産性向上に重要
- 加えて、有形・無形の多様な投資の組み合わせがシナジーを生み、生産性向上に波及する効果あり。幅広い項目を対象にした投資支援策を実施することが重要
 
- 政策効果の発現により、実質経済成長率1%(現状対比+0.5%Pt)も視野に
- 設備投資の拡大による資本投入の成長押上げ、生産性の成長押上げが成長率加速の二本柱。日本経済の成長に対し、国内供給力強化(設備投資)と企業競争力強化(生産性)の両面からアプローチすることが重要
- 本資料で提示した政策は、高市政権の方向性とも合致。積極的産業政策による政府支援(追い風)を企業がどう活かすか、金融機関がどう支援するかが問われる局面に