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2025年11月7日

みずほリポート

AIブーム終焉なら米経済に何が起きるか?

当面は逆資産効果を介した消費低迷リスクに留意

シニア米国経済エコノミスト 松浦 大将
主任エコノミスト 白井 斗京
主任エコノミスト 馬場 美緒
主任エコノミスト 中信 達彦

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要旨

  • 足元の米国株式市場はAI開発・普及への期待を背景に堅調。資産効果による個人消費の増加やAI関連の研究開発・データセンター(DC)投資に支えられ、米国経済は底堅く推移。一方で、AI活用の具体的な成果は道半ば。DCの過剰投資、米国企業の独占的利益喪失等への懸念からAIブーム終焉を囁く声も
  • 足元の環境を過去と比較すると企業のバリュエーションが高い点でITバブル崩壊期に類似。金融危機に至ったリーマン・ショック期のようなレバレッジの拡大は見られず
  • 仮に足元でAIブームが終焉した場合、ITバブル崩壊型の調整による経済減速が見込まれる。経済への波及経路として、①AI利活用による生産性押し上げ効果が剥落するほか、②データセンター投資の縮小、③逆資産効果による個人消費の鈍化が景気下押し圧力に
  • とりわけ、逆資産効果の影響には留意。家計が保有する金融資産(株式・投資信託)は過去対比で大幅に増加しており、株価下落時の景気下押し圧力はITバブル期よりも大きくなる見込み
  • プライベートクレジット(PC)の新規直接融資に占めるIT業界向けの割合は相対的に高く、AIブーム終焉時には相応の影響を受けるリスク。一方で、PCと銀行の財務面での連関は小さく、また、厳格な規制下にある銀行部門の財務健全性は高いことから、金融システム全体への波及は限定的とみられる
  • ただし、足元で銀行とPCが接近する動きも。今後リスク管理が緩み、銀行とPCのポートフォリオ構成が重複していけば、中期的にはリーマン・ショック型の金融危機へ発展する可能性も