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ESG投融資の新潮流:「インパクトファイナンス」と今後の展開

2021年1月7日 環境エネルギー第2部 白濱 秀至

菅首相が2050年にカーボンニュートラルを宣言するなど、コロナ禍を契機に持続可能な社会づくりを模索する動きが加速しつつある。これまで以上に収益性と環境・社会性の両立が重視される中、その方策の1つとして、インパクトファイナンスが注目を集めている。本稿では、その考え方を紹介し、普及に向けた今後の展開に言及したい。

環境省が昨年7月に「インパクトファイナンスの基本的考え方」を公表した。この“インパクト”とは、ポジティブ・ネガティブ問わず、環境・社会・経済に与える効果のことを指す。この基本的考え方によれば、インパクトファイナンスの主な特徴は次の2点になる。(1)投融資の判断軸をリスク・リターンの2軸に加え、インパクトという新たな軸を考慮する点、(2)金融機関・投資家は、投融資の事前、期中、事後にわたってインパクトの評価・報告が必要な点である。ここでは、市場水準以下のリターンを許容する投融資活動(寄付・助成等)を対象外としており、収益性を考慮しなければ環境・社会課題解決を牽引する手段とはなり得ないことを明確にするとともに、表層的な環境・SDGs配慮を謳うグリーンウォッシュ、SDGsウォッシュを排除していく意図がうかがえる。

それではインパクトファイナンスは普及するのだろうか。そのカギを握るのがインパクト評価の指標の確立にあると考える。インパクトファイナンスでは投融資前後のインパクトを可視化するために、指標の設定が求められる。CO2排出量など、わかりやすい指標も存在する一方、生物多様性や社会分野の指標化は容易ではない。その点では、環境省が今年度中に環境面に関する指標・KPI等を整理した「グリーンインパクト評価ガイド(仮称)」を公表予定としており、その内容に注目したい。また、個々の企業に適した指標の設定には、各社が統合報告書等で示した非財務指標も1つの参考になるだろう。

今後、SDGs、パリ協定達成に向けて、投融資において環境・社会的インパクトを重視する流れはより一層広がることが予想される。ESG投融資が我が国で広く浸透したように、今後、インパクト起点の投融資が同様の成長を遂げることを期待したい。

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