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2025年のマイルストーンに基づく資源循環企業の計画と実行

  • *本稿は、2020年3月11日付の環境新聞「『令和』を拓く資源循環イノベーション」に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境エネルギー第1部 シニアコンサルタント 秋山 浩之

すでに2020年に入ってから2月余りが過ぎ、来月からは新たな経営計画を実行に移す会社も少なくないだろう。その際、計画の目標年になることが多い「2025年」に、2つの観点からマイルストーンを設けて、具体的な取り組みを考えてはどうだろうか。

1つ目が、新素材や代替資源の処理・リサイクルに対応する資源循環システムの構築である。紙面の都合上、プラスチックを例にすると、政府は、昨年、使い捨てプラスチックの25%削減やプラスチックの再生利用量の倍増を30年のマイルストーンとする「プラスチック資源循環戦略」を策定した。さらに、G20大阪サミットでは、海洋プラスチックごみによる新たな汚染を50年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有された。

こうしたことから、生分解性プラスチックやバリア性の高い紙袋などの開発が進んでおり、東京オリンピック・パラリンピック競技大会がそのショーケースとなるだけではなく、さらに25年には大阪・関西万博が開催されるほか、企業や大阪市などは同年度までの目標を掲げているため、25年は、海洋等での汚染削減や一廃・産廃での再生利用の増加が進んでいることをエビデンスとともに示す機会が控える年となる。

2つ目が、資源循環システムのデジタリゼーションである。電子マニフェストの登録件数は、18年度に約2900万件に達し、電子化率は57.9%となった。筆者らも関わる環境研究総合推進費課題(3-1905)において計測したところ、紙・電子マニフェストが併存する中間処理会社では、紙マニフェストのシステムへの入力・確認に1.5分/件を要していた。多段階から成る処理フローの一断面を集計しても、日本全国の作業時間は50万時間程度と推定され、年間労働時間を2千時間とする従業員数に換算すると250人分となる。22年度目標の70%を延長した25年度80%という電子化率に達すれば、相当の生産性向上効果が期待できる。

一方で、経済産業省のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた研究会がまとめたレポートでは、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変するDXが実現できず、複雑化、老朽化、ブラックボックス化した既存システムが残存する場合には、25年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があるとし、これを「2025年の崖」と称して警鐘を鳴らしている。これを資源循環の分野に当てはめると、電子マニフェスト等の個々のシステムを活かしつつ、各社・各製品群の資源循環ごとにできつつある新たなデジタルサービスとの間の情報流通を円滑にすることが重要だと理解できる。

以上の2点を踏まえると、資源循環のために目指すべき一つの姿として、プラスチックやその代替素材、新素材が社会・地球環境の望む形で再資源化され、その結果が、デジタル技術等を活用して、効率的かつ正確に把握・開示できるシステムが構築された社会を考えることができる。さらに、その構築・利用経験を人材育成につなげることで、「世界において、2025年までに、廃棄物管理人材を1万人育成」という目標を掲げる「マリーン(MARINE)・イニシアティブ」の実現にも貢献するであろう。また、資源循環に携わる企業が、そうした姿を目指して経営計画を実行することが、弊社も携わった「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」や、25年度に多くの目標を掲げる第四次循環基本計画が広く意図するものと考えている。

今夏に祭典を迎える東京の街づくりは、江戸の町割りを基にしながら海外の近代都市計画理念を臨機応変に取り入れてきたことから、「しなやか」と表現された。しかし、その「臨機応変さ」は、苦難を伴う実行過程で「場当たりでの対処」に陥ることも憂慮される。日本における資源循環が、25年とその先の社会で「場当たりでの対処」の結果とならないよう、協議会の活動を通じてイノベーションの創出に貢献していきたい。

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