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社会動向レポート

オールハザードBCPへの転換

アフターコロナのBCP(2/3)

経営・ITコンサルティング部 IT戦略チーム シニアコンサルタント 鈴木 大介

3.新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCPに関する調査の結果について(続き)

(2)コロナ禍におけるBCP

[1] BCPの策定状況

BCPの策定状況に関する調査結果では、コロナ禍以前からBCPを策定していると回答した企業は39.2%で、コロナ禍により新たにBCPを策定した企業(19.0%)を含めても58.2%と、未だBCP策定が進まない状況が伺える(図表6)。

BCPの策定状況は、企業規模が小さいほど低くなる傾向にあり、特に100名以下の小規模事業者(n=123)においては、コロナ禍以前にBCPを策定していた企業は24.4%で、コロナ禍により新たにBCPを策定した企業(14.6%)を含めても39.0%にとどまっていることが分かった。

BCPを策定済みの企業(n=420)が、BCPで想定しているリスク事象については、コロナ禍以前から策定されているBCPでは、大規模地震が91.2%、次いで風水害が71.0%であり、感染症を想定したBCPについては42.8%であった。コロナ禍により新規に策定されたBCPでは、感染症を想定しているとの回答が61.3%と最も高い結果ではあったが、大規模地震や風水害についても、50%以上の企業で定義されていた(図表7)。これは、特定の事象(今回の場合は感染症)にとどまらず、高い頻度で発生が予見される地震や風水害についても併せて考えておく必要があると各企業が課題感を持っていることの裏付けではないかと考える。


図表6 BCP の策定状況
図表6

  1. (資料)みずほ情報総研「新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCP に関する調査」(2020年9月)

図表7 BCP における想定リスク
図表7

  1. (資料)みずほ情報総研「新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCP に関する調査」(2020年9月)

[2] コロナ禍におけるBCPの効果

BCPを策定済みの企業(n=420)に対する「コロナ禍において自社のBCPが機能したか」という質問では、「効果的に機能した」と回答した企業は16.7%であり、機能しない(「あまり機能しなかった」(23.3%)、「まったく機能しなかった」(4.3%)の合計値)と回答した企業は27.6%となった。機能しなかった理由としては、「3密対策や緊急事態宣言の発令など、コロナ禍により生じた新たな行動様式まで想定していなかった」、「大規模かつ長期的な事態、世界規模の自体となることを想定していなかった」、「全員でリモートワークを行うことを想定していなかった」など、BCPで想定していた事象とは異なる事象であったことを原因とする声が多く聞かれた。

一方、44.5%の企業では「(BCPは)少しは機能した」と評価しており、BCP自体はある程度の効果を発揮したことが伺えるが、より実効性の高いBCPを整備するためには、想定外事象を無くすことが重要な要素であることが考えられる(図表8)。


図表8 コロナ禍におけるBCPの効果
図表8

  1. (資料)みずほ情報総研「新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCP に関する調査」(2020年9月)

[3] BCP見直しの必要性

コロナ禍を経て、BCPを策定済みの企業(n=420)のうち81.7%の企業において自社BCPの見直しが必要であると回答している。前述のとおり、コロナ禍においてBCPが十分に機能したと回答した企業は限られており、今回のコロナ禍のように企業経営に重大な影響を及ぼす危機的な事象が今後発生した際にも有効に機能するBCPの必要性を多くの企業が感じていることがわかる。しかし、BCP見直しの必要性全体(「すぐにでも見直す想定である」、「数年以内には見直したい」、「見直しは必要だが期限は決めていない」の合計値)は、企業規模を問わず高い水準で求められているが、「すぐにでも見直す想定である」と回答した企業については、5001名以上の大規模企業では36.6%が回答しているのに対し、100名以下の企業では半分以下の14.6%にとどまっており、BCPの策定状況と同じく、企業規模が小さいほどBCPに対する課題が先送りされてしまう傾向にあることが伺える(図表9)。


図表9 BCP見直しの必要性
図表9

  1. (資料)みずほ情報総研「新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCP に関する調査」(2020年9月)
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