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技術動向レポート

わが国における台風被害と高潮浸水対策の現状について(3/3)

サイエンスソリューション部 先進技術システムチーム コンサルタント 坂本 大樹

3.高潮被害想定のためのシミュレーション技術と当社の取り組み(続き)

(2)高潮浸水計算

本節では、当社が保有する津波高潮シミュレータQ-Wave® を用いて、2019年度の台風19号時の解析を行い、台風による潮位の変化量(以下、潮位偏差という)を、気象庁の観測に基づく公表値と比較した事例を紹介する。なお気象庁公表値との比較は、図表12に示す鳥羽、御前崎、東京の3か所において行った。各地点の潮位偏差を示したのが図表13であり、台風が近づくとともに気圧が下がり、風が強くなることで潮位が上昇するという傾向を概ね再現できているといえる。また水位の分布図を図表14に示す。


図表12 気象庁観測点
図表12

  1. (資料)みずほ情報総研作成


図表13 計算結果と実測値の比較(上:鳥羽 中:御前崎 下:東京)
図表13

  1. (資料)みずほ情報総研作成


図表14  潮位偏差分布図
(左:2019年10月12日14時 中:2019年10月12日18時 右:2019年10月12日22時)

図表14

  1. (資料)みずほ情報総研作成

おわりに

本稿では、過去の台風による被害をまとめ、地方自治体の高潮対策の取り組みを整理したうえで、当社で行っている高潮に関係するシミュレーション事例を示した。農林水産省、国土交通省が公表している「高潮浸水想定区域図作成の手引き」に基づき各地方自治体で「高潮浸水想定区域図」の作成が進められているが、現時点では不十分な地域も存在する。当社としても今まで培った技術を活用することで、各自治体の「高潮浸水想定区域図」の作成や高潮による被害の減少に貢献していきたいと考えている。


参考文献

  1. デジタル台風ホームページ
  2. 農林水産省,国土交通省「高潮浸水想定区域図作成の手引きver.1.00」(2015年)
  3. 農林水産省,国土交通省「高潮浸水想定区域図作成の手引きver.2.00」(2020年)
  4. 坂本大樹,吉村英人,荒木和博,眞鍋尚「SWANによる2019年台風19号の波浪推算」,みずほ情報総研 技報,Vol.11 No.1,(2021年3月発刊予定)
  5. 吉村英人,坂本大樹,荒木和博,眞鍋尚「津波高潮シミュレータQ-Wave® を用いた2019年台風19号の高潮解析」,みずほ情報総研技報,Vol.11 No.1,(2021年3月発刊予定)
  6. 吉村英人,坂本大樹,荒木和博,眞鍋尚「津波高潮シミュレータQ-Wave® を用いた2019年台風19号の高潮解析」,みずほ情報総研技報,Vol.11 No.1,(2021年3月発刊予定)
  • *Q-Wave はみずほ情報総研の登録商標です。
  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
  • レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。全ての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
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