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ストレスを低減させ生産性を上げる「交流型ワーケーション」による地域活力の創出

都市近郊エリアにおける地域活性化の展開

2022年3月
みずほリサーチ&テクノロジーズ コンサルティング第2部 田端 慎吾

1. コロナ禍におけるライフ・ワークスタイルの変化

2020年4月以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オフィスワーカーを中心にリモートワークが普及・定着した*1 。情報通信系を中心に、柔軟な就労形態への認知が向上し、都心部から地方あるいは都市近郊へと本社機能等を移転する企業も出現している。国土交通省が実施したワーカー向けのアンケート調査では、コロナ終息後もリモートワークを行いたいとする割合が74.6%と高く*2、コロナ禍で変化したワークスタイルは今後も継続するものと思われる。

また、特に都市部に住む若い世代で地方への移住についての関心が高まる*3など、コロナ禍におけるワークスタイルの変化が、人々のライフスタイルを大きく変えつつある。

2. リモートワークによるストレスの増加

一方で、オフィスに通勤して同僚等と対面で働くことが減少した結果、体を動かしたり、雑談したりといった場面が減り、心身へのストレスは増加している。

在宅勤務によるストレスとして、①成果へのプレッシャー、②ONとOFFの切り替えが上手くいかない、③運動不足による心身の不調、④コミュニケーション不足による閉塞感・孤独感、⑤働く環境が整っていない、などが挙げられるが、特に運動不足であると、気分のリフレッシュや精神安定、安心感につながるセロトニンの分泌機会が減少し、ストレスが溜まり気分も落ち込みやすくなるといわれている*4


リモートワークによるストレス
図表1

  1. (出所)リクルートキャリア「新型コロナウイルス禍における働く個人の意識調査」(2021年1月22日)より作成

コロナ禍の生活におけるストレスの所在として最も多く挙がるのが、「外出や旅行が自由にできない」(64.1%)である。行動の制限に起因するストレスが大きいものと容易に推察される。また、感染リスクや体調管理に続き、「外出制限による運動不足」(23.3%)もその所在の一つとして挙げられている*5


コロナ禍におけるストレスの所在
図表1

  1. (出所)株式会社インテージ「コロナ禍の生活者のストレス実態調査」(2021年5月31日)より作成

こうした状況を踏まえると、都市部で働くワーカーが休日あるいはリモートワーク活用前提の平日に、リフレッシュや運動不足解消を兼ねて、都市近郊の自然が多いエリアなどに足を運ぶケースが今後ますます増加する可能性が考えられよう。

3. ワーケーションによる地域活性化の可能性

ワークスタイルの自由度の増加と、ストレスの緩和やリフレッシュを目的とした旅行需要の高まりが今後も予想されるなか、ワーケーション*6を活用した平日の旅行需要喚起や、交流人口・関係人口の創出等による地域活性化を図る自治体が増えてきている*7

ワーケーションはリゾート地等で数日間リモートワークを行うものから、都市部に近いエリアで日帰り~1泊2日程度で普段と異なる環境のなかで行うものなど様々あるが、コロナ禍においては、リゾート地よりも移動の負担が少なく、移動時の感染リスクも抑えられる比較的近距離*8でのワーケーションから徐々に普及していくものと思われる。

ワーケーションによる地域活性化を受入地域が実現するためには、当地で実施することのメリットを明らかにして情報発信することが重要である。

ワーケーションは観光振興の文脈で語られることが多いため、休暇活用(観光等)型(次表の①)がイメージされがちであるが、広義には③会議型、④研修型、⑤新価値創造型など、企業のメリットが大きい類型や、地域にとってのメリットが中心の⑥地域課題解決型のような類型も存在する。


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ワーケーションの分類
類型 説明
①休暇活用(観光等)型 休暇で観光を楽しみつつ、普段の仕事を行うもの。観光がメインであり費用は原則個人負担
②拠点移動型(不動産)型 生活や働く拠点を動かし、分散させていくもの。コロナ禍で企業の地方移転が複数みられた
③会議型 普段の職場と異なる場所で集中的に討議を行い、プロジェクトの立案を行うもの
④研修型 普段の職場と異なる場所で集中的に研修を行うもの。企業による従前の「研修合宿」に近い
⑤新価値創造型 企業間の交流を通じて新たなビジネスを生み出すもの。異境地でのビジネスマッチングを含む
⑥地域課題解決型 地域の課題解決を目的としたもの(地域課題をテーマにした研修、地域での新規事業創出、専門知識やスキルを活かしたボランティアなど)
⑦ウェルビーイング(福利厚生)型 保養所、健康増進、リカレント教育(学び直し)等の社員の動機づけのメニューとするもの

(出所)一般社団法人日本ワーケーション協会ウェブサイト等より作成


受入地域は、自然や観光資源などの地域特性のアピールに加え、業務中心のワーケーションで想定されるニーズ(「一人で集中する時間をつくりたい」「他者との交流でひらめきを得たい」など)に合わせて、施設の活用シーンと実施効果をイメージしやすくする工夫が必要であろう。

次項では、ワーケーションの特性や効果を踏まえた上で、都市近郊の自治体におけるワーケーションを活用した地域活性化の可能性について考えてみたい。

4. ワーケーションの特性と効果(集中と交流)

ワーケーションは、基本的にワークスペースを個人が選択できるため、集中して行うソロワークからチーム単位あるいは、全く別の企業・団体等との交流を通じたブレスト、企画などの創造的業務まで、利用者は、内容に応じた適切な環境で仕事に取り組むことができる。すぐに発現するワーケーションの効果として、自然環境によるリフレッシュ、雑談によるストレス解消、仕事の生産性向上*9が挙げられよう。また、実施場所や相手との関係性等にもよるが、交流型のワーケーションをきっかけとしたビジネス共創の可能性もある。

特に創造的業務は、他者と交流することがイノベーションの素地を形成し、生産性の向上につながることが明らかにされている*10。これをワーケーションに当てはめれば、働き手の業務面において、都市部から地域に訪れたワーカー同士、あるいはそうした人材と地域人材との交流を促進する仕組みが重要な役割を果たすと考えられる。例えば、①ワーケーション受入施設のプログラム(ワークショップ等)に参加し、異業種との意見交換等を通じたアイデア創出、②地域で事業活動を行う人々との弱いネットワークの形成による情報入手経路の拡大、等の例が挙げられる。宿泊を伴うワーケーションの場合、宿泊場所としてホテルや旅館ではなくホームシェアを選択すれば、その場所を提供するホストが当地の地域コミュニティとのハブとなり、地域で事業活動を行う人々との弱いネットワーク形成を容易にする可能性もあろう。

一方、依然として企業におけるワーケーションの導入が進まない現状*11においては、企業のマネジメント層や人事担当者等のワーケーションへの理解を促進する必要もある。

そこで、ワーケーションで地域を訪れた者同士、あるいはそうした者と地域人材の出会い・共創により地域活性化を目指す鎌倉市の取り組みを紹介したい。

5. 鎌倉市による共創型ワーケーションの促進

鎌倉市は都心から約1時間と適度な距離感でありながら、海や山といった自然と、神社仏閣等の歴史的な観光資源を多く有する地域である。市では、若年層の移住促進やサテライトオフィスの誘致などを目的とした「鎌倉テレワーク・ライフスタイル研究会」を立ち上げ、鎌倉で働く「鎌倉ワーカー」に向けた情報発信や勉強会などを2018年に実施した。また、2021年6月以降、NTTコミュニケーションズ株式会社が提供する「Dropin」を用いて、テレワークスペース提供希望者と利用希望者をマッチングする実証実験を実施するなど、ワーケーションを受け入れる体制整備を進めている。

2021年11月には、企業のマネジメント層や人事担当者を主なターゲットに、鎌倉でワーケーションの良さを体感してもらうきっかけづくりを目的としたイベント「鎌倉ワーケーションWEEK」*12を開催した。本イベントは鎌倉市の後援とNTTコミュニケーションズやKADOKAWA、Airbnb Japan等の協力のもと、鎌倉ワーカーによる「鎌倉ワーケーションWEEK実行委員会」が中心となって企画したものであり、環境を変えて働くことの心身へのメリットと、交流による「気づき」・「ビジネス創出」を重視した内容となっている。例えば、リフレッシュとコクリエーション、あるいは所属企業をリタイアした後のセカンドキャリアを考える場となることを提供価値として、個性豊かなワークスペースやリフレッシュ体験の提供をはじめ、コンシェルジュによるワーケーターと地元人材の交流サポート、アイディアソンやブレストなど各種イベントが実施された。コンテンツの概要は以下のとおりである。


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鎌倉ワーケーションWEEKの概要
開催日時
  • 2021年11月22日(月)?26日(金)(計5日間)
開催場所
  • 鎌倉市内のワークスペース(9か所)
  • その他、各体験プログラム提供場所
対象者
  • ワーケーションの導入を進めている企業の担当者
  • 新規事業開発部門や人事部門の担当者
  • 副業やセカンドキャリアなど多様な働き方を目指す方
主な内容
  • 期間中のワークスペースの無償利用(クーポン配布)
  • 鎌倉ワーケーションガイドマップのオンライン配布
  • トークイベントの開催(一部オンライン配信あり)
    ①ワーケーションのトリセツ ―先駆者から学ぶワーケーションの活用法―
    ②個人と組織を強くするレジリエンス体感ワークショップ
  • 交流会の開催
    ①“カフェで働く”を考える座談会
    ②鎌倉の魅力を食し、新しい自分に出会う交流会
    ③町歩きチームビルディングin鎌倉
    ④筋肉と消費カロリーと仕事の関係性
  • Airbnbホストによる体験プログラムの提供
実施主体
  • 主催:鎌倉ワーケーションWEEK実行委員会
  • 後援:鎌倉市
  • 協力:(※五十音順)
    Airbnb Japan株式会社
    エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
    株式会社エンジョイワークス
    株式会社KADOKAWA
    株式会社電通
    ニューホライズンコレクティブ合同会社、

(出所)鎌倉ワーケーションWEEK実行委員会ウェブサイト等より作成


この中で、地域活性化に関して、KADOKAWAの協力のもと、イベント開催にあたり地元の人々のみぞ知る情報を含む街歩きガイドやコース紹介ページ*13を作成するなど、ワーケーターに地域を回遊してもらう仕掛け作りも行われた。


まちあるきMAP
図表1

  1. (出所)株式会社KADOKAWA「ウォーカープラス」ウェブサイトより転載

ワークスペースの無料利用クーポンが配布されたこともあり、イベント期間中(11月22日(月)~26日(金))における地域内の施設利用者は少なくとも100名超(予約システムで把握可能な数値)に上り、交流エリアやブレストイベントも好評を博していた。

鎌倉ワーケーションWEEK実行委員会の委員長であり、自身も鎌倉市内でコワーキングスペース「Think Space鎌倉」を提供する岩濱サラ氏は、今回の取り組みの振り返りと今後の展望について次のように語っている。

私はこれまで、都内の大学で学び、就職し、その後も都内で複数の仕事に関わってきました。都市部でのストレスフルな環境の中では疲れを感じることも多く、元来株主優位の資本主義への疑問も抱いていたことから、自然と触れ合うWell-beingな暮らし方・働き方への転換を企図して、2017年から鎌倉でコワーキングスペースの運営を開始しました。以降、鎌倉で自身も自然と同じ土俵に立ち、そうした環境でワーケーションという働き方を受け入れる場所を提供してきました。

新型コロナの流行で、人々の暮らしは不安定な状況になり、鎌倉においても飲食業や宿泊業を営んでいる方々の先行きが厳しくなったり、老舗企業が廃業したりする中で、これから鎌倉はどうなるんだろうという危機感を覚えました。そうした状況を目の当たりする中で、やはり人と人の繋がりが最も大事であると感じ、地元の商店等と都内の企業がつながり、都内の人が鎌倉を訪れることで、地元が活性化し、同時に都内の人も元気にできるようなプラットフォームつくる必要があると考え、今回の鎌倉ワーケーションWEEKの開催を提起しました。

実行委員会としての取り組みにおいては、行政主導ではなく、あくまでも地元の事業者が主体となったワーケーションの提供を重視しました。個人と個人がつながり、その後継続的に関係を作っていくことが、持続的な地域活性化において最も大切だと考えていたためです。鎌倉エリアには、それぞれの想いを持った事業者が多いので、そうした想いを大切にすることで、域外から来た人とも長くつながる基盤が作れると確信していました。実際、実行委員会にはコワーキングスペースの運営者のほか、個人のギャラリーを運営している方、企業で人事に携わっている方など、様々なバックグラウンドを持つ人々に入っていただき、持続的な地域発展につながる取り組みのあり方を議論してきました。

イベントでは、それぞれの個性を表に出して、それら個性の中から来訪者が自分の好きなものを選べる多様性を大事にしました。そうしたことで、訪れた方も、決まりきったコースを一律に回るのではなく、様々な場所で開催されるワークショップや、個性豊かなワークスペースを利用する中で新たな価値観に触れることができ、皆さんに満足いただけたものと感じています。ワーケーションは、結局は場所に訪れるだけではなく、その場所にいる人と繋がる、ということが大きな魅力であると考えています。そしてそれは1対1の直線的な関係ではなく、出会った人がハブとなり、ゆるくネットワーク的に繋がることで人間関係が構築され、単に来て終わりのワーケーションにとどまらずに街への想いが根付いていくのだと思います。最近ではワーケーションを契機として移住してきた方も出てきており、都市部と地域のハブになる人が増えてきています。

今後の展開としては、今回のようなイベントを年に2回くらい実施していきたいと考えています。都内からもアクセスしやすい鎌倉において定期的にワーケーションの入口を提供していくことで、Well-beingな働き方を根付かせていければ幸いです。

今後も鎌倉の個性あふれる方々と連携しながら、ワーケーションを通して都市部で働く方の心身の健康増進に寄与しながら、鎌倉エリアをさらに盛り上げていきたいと思います。

岩濱 サラ 氏
マインドフルネス・アーキテクツ株式会社 代表取締役CEO、一般社団法人ウェルビーイングアップ代表理事、鎌倉ワーケーションWEEK実行委員長

また、本イベントを後援した鎌倉市は、今回の取り組みの振り返りや、当地での今後の展開について次のようにコメントしている。

私たちのまち鎌倉は、多くの貴重な歴史的文化的遺産と、明るく広がる海、緑豊かな丘陵などの豊かな自然景観が、住む人や訪れる人を魅了し、年間を通じて多くの観光客の方々が本市にお見えになります。

今は、コロナ禍にあり、ふだんよりも観光客の方々は少ないのですが、令和4年は鎌倉を舞台にしたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の放映が開始され、3月1日には鶴岡八幡宮境内の鎌倉文華館鶴岡ミュージアム内に大河ドラマ館がオープンしました。新型コロナウイルスが収束の兆しを見せ始めたら、また、賑わいが戻ってくることを期待しています。

そのような本市では、市民のワーク・ライフ・バランスを整えることを目指し、平成30年11月に、都内等への通勤を減らし、鎌倉でテレワークを行うワーク・ライフスタイルの普及、テレワークに関する情報発信や勉強会などを行うための鎌倉テレワーク・ライフスタイル研究会を発足し、以降、民間の方々ともに、寺ワークin鎌倉などのイベントの開催や国が進めるテレワークデイズに参加するなど、テレワークを広める活動を中心に行ってきました。また、市単独で、民間事業者が市内にシェアオフィスを設置する際のリフォーム経費を補助するなどの事業を行ってきましたが、昨今、テレワークをめぐるニーズが高まる中、まだ十分とは言えない状況にあります。

一方、ワーケーションについては、今回の「鎌倉ワーケーションWEEK」のように民間の方々を中心にした活動が盛り上がりを見せており、本市はそのような活動を応援していきたいと考えています。本市では、ワーケーションをテレワークの延長線上として捉えており、地域経済の活性化にも繋がることから、ワーケーション関連団体に入会するなどして情報収集を行うとともに、民間事業者の方が主催で実施されるイベントの後援や情報発信等を行っています。

今回の取組は、本市が「鎌倉ワーケーションWEEK」を後援したことがきっかけです。このように民間の方々が中心となってワーケーションが進むことは歓迎すべきことで、多くの方々が鎌倉に集い、交流し、つながり、新たなビジネスの種になる方向については、とても共感できます。

本市でも、「鎌倉市企業・求人情報発信サイト」を運営する中で、オンライン上ではありますが、企業同士のビジネス交流の場を設けており、リアルで行われた今回のイベントから、本市発の新たなビジネスが始まることを期待しています。また、多くの方々が鎌倉の環境の中でテレワークを体験することで、「働くまち」鎌倉における職住近接性を体感でき、本市への移住のきっかけになれば幸いです。

鎌倉市市民防災部商工課

鎌倉エリアの事業者が主体となって実施された「鎌倉ワーケーションWEEK」は、ワーカーに向けて交流型ワーケーションの体験機会を提供したほか、企業の担当者のワーケーションに対する理解促進にも大きく寄与したと言えよう。

6. おわりに

働き手のストレスを低減し、生産性を上げることを念頭に、コロナ禍においてリモートワークを導入・拡大した企業には、さらに一歩踏み込んで、都市近郊エリアでの「交流型ワーケーション」の積極活用を期待したい。

また、受入地域は、紹介した鎌倉市の事例を参考にしつつ、都市部からの流入人口を活用した地域活性化の今後の展開について、引き続き模索していただければ幸いである。

  1. *1東京都「テレワーク実施率調査結果」によると、都内の従業員30人以上の企業のテレワーク率は2020年4月以降6割前後で推移している。実施場所は自宅が基本ではあるものの、シェアオフィス、コワーキングスペース、ホテル、カフェなど働く場所は多様化している。
  2. *2国土交通省関東地方整備局「テレワーク等に関するニーズ調査結果について」、調査対象:東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)に在住する20?50代の男女のうち、通勤通学先が品川駅及び周辺駅(品川駅から電車で10分圏内)、または中央線駅(新宿駅?高尾駅間)である者、ウェブアンケート(モニター)調査(サンプル数:3,000)、調査時期:2020年9月25~30日。
  3. *3内閣府「第2回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(令和2年12月24日)参照。
  4. *4学校法人グロービス経営大学院『GLOBIS CAREER NOTE』、「在宅勤務がストレスだらけで辛い!上手く解消していく5つのコツ」(2021年9月29日)参照。
  5. *5株式会社インテージ「コロナ禍の生活者のストレス実態調査」(2021年5月31日)参照。
  6. *6Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語であり、観光庁によって「テレワーク等を活用し、リゾート地や温泉地、国立公園等、普段の職場とは異なる場所で余暇を楽しみつつ仕事を行うこと」と定義されている。観光庁「ワーケーション、ブレジャーの活用実態に関する調査結果」(2021年)によれば、ワーケーションの認知度は2020年末時点で8割を超える。
  7. *72019年に設立されたワーケーション自治体協議会(WAJ)の会員数は2020年8月現在で99自治体となっている。また2021年1月~9月にかけて「地方を元気にするワーケーションフォーラム」が産官学民により計5回開催された。
  8. *8「2050年時点の日本の将来人口推計(国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30年3月推計)」)を地理空間情報システムで地図上にマッピングすると、東京23区を中心に、さいたま市、船橋市、横浜市を囲むエリアの外では、関東地方であっても人口減少ペースは早く、地域活力の維持に向けたいっそうの取り組みが求められることがわかる。
  9. *92021年に行われたNTTデータ経営研究所、南紀白浜エアポート、TISによるワーケーションと在宅リモートワークとの比較検証実験の結果では、ストレスの低減効果に加えて、リカバリー経験(良質なパフォーマンスを発揮するための業務後の回復機会)やワークエンゲージメント(仕事に対する活力・熱意・没頭の程度)、規定された職務(指示・期待された仕事)を十分に行っている程度などの生産性に関する指標の向上が確認された。
  10. *10社会学者であるマーク・グラノヴェッターが唱えた「弱い紐帯(ちゅうたい)の強さ」では、同種のクラスター内での緊密な連携よりも、別のクラスターとのゆるやかな交流(橋渡しの存在)が、情報探索において特に有利に働くとされる。働き手の居場所と仕事生産性に照らせば、異質なコミュニティとの「弱いネットワーク」の形成がイノベーションの素地となる得ることから、弱いネットワークの形成・拡大(情報入手経路を増やすこと)の重要性が指摘されている。特に地方部は、別の(異質な)コミュニティと関わり合う機会が少ない傾向があり、都市部と地方部のワーカー同士の交流は生産性向上に有効であろう。
  11. *11観光庁「ワーケーション、ブレジャーの活用実態に関する調査結果」(調査実施:2020年12月~2021年1月)では、ワーカーの実施率は4.3%。
  12. *12イベントの詳細は鎌倉ワーケーションWEEK実行委員会ウェブサイトを参照。
    https://kamakuraworkation.com/
  13. *13KADOKAWAが運営する「ウォーカープラス」では、イベント開催に合わせて「江ノ電でゆるり旅コース」や「北鎌倉・禅文化コース」など、計4つのコースが紹介された。
    https://sp.walkerplus.com/wr/kamakura_worcation/
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