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Mizuho RT EXPRESS

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低調が続く中国の輸出入

─ 特に輸入が大幅減だが、内需回復の失速とは言いきれず ─

2023年3月23日

調査部アジア調査チーム 主任エコノミスト 鎌田晃輔
kosuke.kamata@mizuho-rt.co.jp

1~2月の輸出は世界的な需要軟化を受け低調

中国税関総署が公表した2023年1-2月期の貿易統計によれば、中国の輸出額(米ドルベース、以下同)は前年同期比▲6.8%と、昨年末に続き大幅マイナスとなった(図表1)。品目別ではPC及び関連部品が▲32.1%となったほか、集積回路(IC)が▲25.8%と大幅な減少となり、昨年後半から続くIT需要の悪化が輸出の打撃となった。また、代表的な耐久消費財である自動車も▲25.9%と大幅に減少しており、世界的な需要の低迷も輸出を下押しする要因となっている。国別では、ASEAN向けが+9.0%とプラスを維持した一方、米国(▲21.8%)、EU(▲12.2%)、日本(▲1.3%)など主要先進国は軒並み前年比マイナスとなった。

図表1 輸出入金額・貿易収支

(注)2021年は2019年対比の成長率(2年平均)。2023年1・2月は平均値
(出所)中国税関総署、CEICより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

昨年12月のゼロコロナ解除以降、中国国内の生産活動は回復に転じているが、世界経済の悪化による外需縮小の下押し圧力にさらされ、輸出は低迷を余儀なくされている。インフレ圧力の高まりにより各国が引き締め的な金融政策運営を余儀なくされるなか、みずほリサーチ&テクノロジーズでは2023年の世界全体の実質GDP成長率が+2.4%と、2022年の+3.4%を下回る伸びにとどまると予測している。世界経済の減速が逆風となり、中国の輸出は先行きも弱含んで推移することになろう。

輸入は前年同期比大幅マイナス。ただし内需以外の要因も影響

今回発表された貿易統計では、輸入の動向も注目に値する。ゼロコロナ解除後の急速な経済活動再開にもかかわらず、2023年1-2月期の輸入は前年同期比▲10.2%と、輸出を大幅に上回る減少幅となった(前掲図表1)。これが中国経済の内需停滞を示すものと見る向きもあるが、足元の輸入減については内需以外の要因が影響している可能性がある。

主要な輸入品目の減少幅を見ると、PC及び関連部品、集積回路(IC)、自動車といった品目が大きく減少していた(図表2)。このうち自動車については、内需停滞が影響したものだろう。

図表2 品目別輸入額(2023年1-2月累計前年比)

(注)カッコ内はウエイト(2022年の輸入総額ベース)
(出所)中国税関総署、CEICより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

PC及び関連部品、集積回路(IC)については、内需停滞のみならず、IT需要悪化に伴う減産の影響で部品輸入が減少したことも反映しているとみられる。さらに、最大の輸入ウエイトを占めるICの減少については、米政府が2022年10月に導入した対中半導体輸出規制が影響した可能性も考えられる。同規制は、先端半導体及びその製造に必要な装置、ソフトウェア、技術の対中輸出を事実上禁止する強力な規制であり、その対象は米国企業のみならず、米国製の半導体製造装置や自動設計ソフト等を用いる他国企業にも及ぶ。

半導体を製造する企業は既に同規制対応に迫られており、実際に自企業が行う輸出が規制対象となるかを米政府当局へ照会する企業が相次いでいる。こうした照会に対し当局はケースバイケースで判断を下しており、回答に相応の時間を要している模様である。2023年に入ってからのIC輸入急減の背景には、米当局の回答を受けた企業が中国向け半導体輸出を手控える動きが顕在化しつつある可能性も否定できない。

IT需要悪化と対中半導体輸出規制の影響を定量的に計ることは困難だが、輸入の大幅減はこれら2要因の影響を受けており、ゼロコロナ解除後の内需回復が失速したとみるのは早計である。むしろ、みずほリサーチ&テクノロジーズでは、各種統計を基にサービス消費を中心とする内需回復が続いていると分析している。中国の内需動向を評価する際には、サービスを含めた幅広い統計に当たるとともに、輸入統計からのアプローチについては内需以外の要因を丁寧に見極めたい。

[参考文献]

みずほリサーチ&テクノロジーズ調査本部(2023)「2023・2024年度 内外経済見通し – 根強いインフレ圧力。財政・金融の引き締めが世界経済の重石に –」みずほリサーチ&テクノロジーズ『内外経済見通し』(2月21日)

安全保障貿易情報センター(2023)「米国による対中輸出規制の著しい強化の全体概要図(22.10.7新規制関連)」(1月20日)

安全保障貿易情報センター(2022)「米国が著しく強化した対中輸出規制についての補足的QA風解説(改訂2版)-「準有事」の安全保障輸出管理の局面に」(11月11日)

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