ページの先頭です

リポートに関するアンケートにご協力ください(所要時間:約1分)
(クアルトリクス合同会社のウェブサイトに移動します)

ダウンロードはこちら (PDF/491KB)

2023年は一段の円高・ドル安進展を予想

─ 1ドル=120円を割る可能性も ─

2023年1月12日

調査部総括・市場調査チーム 主任エコノミスト 坂本明日香
asuka.sakamoto@mizuho-rt.co.jp

ドル円相場は、一時1ドル=129円台まで円高・ドル安に進展

2022年12月下旬以降、ドル円相場は円高・ドル安が進み、2023年初にドル円相場は一時1ドル=129円台をつけた。

円高・ドル安が進展したきっかけは、12月19・20日の日銀金融政策決定会合だ。同会合で日銀はイールドカーブ・コントロールを見直し、長期金利の許容変動幅を±0.5%に拡大した。これにより、円長期金利は上昇し円高圧力となった。さらに市場では、今後も日銀による金融政策変更があるのではという思惑が高まり、円高・ドル安が進展した。1

図表1は日米金利差とドル円相場の推移である。日米金利差は、10年債利回りと、市場の政策金利予想が織り込まれているとされるOISレートを並べている。これをみると、2022年11月後半以降、2つの日米金利差の縮小幅には違いが見て取れる。10年債利回りについては、日銀が依然として長期金利の変動幅に制限を設けていることから、縮小幅は限定的である。一方で、OISレートは、日米金利差の水準よりも下振れて縮小が続いている。

11月後半から強まった日銀の金融政策変更観測は、12月に入りいったん沈静化した。しかし、12月20日の予想外の金融政策の変更を受けて、市場では再び観測が強まる展開となった。OISレートでみた日米金利差の縮小に伴い、円高・ドル安が一段と進展した。

もっとも、足元では、OISレートでみた日米金利差が2022年8月頃の水準となっているのに対し、ドル円相場はそれ以上の円高・ドル安水準になっている(図表1)。12月後半には先行きの世界経済の減速懸念や、中国での感染拡大懸念から米国株価がやや軟調に推移しており、ドルの上値を抑える動きが加わったものとみられる。

ドル円相場をドル要因とドル以外の要因に分解してみても、上述の動きが示唆される結果になっている(図表2)。これをみると12月中旬までは、ドル要因、ドル以外の要因ともに円安・ドル高圧力になっている。しかし、12月下旬に入ると、日銀の政策変更を受けてドル以外の要因が大きく円高に寄与している。さらに、ドル要因も12月中旬までみられたドル高圧力が一服していることがみてとれる。

図表1 日米金利差とドル円相場の推移

(注)OIS(Overnight Index Swap:翌日物金利スワップ)は、固定金利と変動金利の翌日物レートを交換するスワップ取引のこと。交換する固定金利はOISレートと呼ばれ、一定期間の市場の翌日物金利の予想を反映して設定されるため、市場の政策金利の予想が織り込まれているとされる
(出所)Refinitivより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

図表2 ドル円相場の要因分解

(注)1.ドル円、ユーロドル、ポンドドル、カナダドルの1990年~足元までの数値を用いて分析。主成分分析によって抽出された第1主成分を『ドル要因』と想定した
2.図表は12月1日を基準とした変化
(出所)Bloombergより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

2023年央にかけて、一段の円高・ドル安進展を予想

では先行きをどうみるべきだろうか。みずほリサーチ&テクノロジーズは下記の様な理由から、2023年央にかけて、ドル円相場は一段の円高・ドル安進展を予想している(図表3)。

日銀の金融政策変更観測は、引き続き円高・ドル安要因として残るだろう。今後は更に、FRBの金融引き締めに伴う米国経済の悪化が、一段の円高・ドル安圧力として存在感を強めるとみられる。

米国は、これまで高インフレが続いており、その抑制に向けFRBは大幅な利上げを行ってきた。みずほリサーチ&テクノロジーズでは、2023年前半に政策金利は5%台まで上昇するとみているが、金融引き締めにより、2023年央にかけて、米国経済は景気後退するとみている。これを受け、米長期金利も低下していくことが予想され、ドル円相場には、円高・ドル安圧力になるだろう(詳しくはみずほリサーチ&テクノロジーズ(2022)「2023年 新春経済見通し」をご参照されたい)。更に、米国の景気後退を受けてリスクオフによる円買いが一段と進み、場合によっては、年央にかけて1ドル=120円を割るような一段の円高・ドル安進展も起きる可能性がある。

図表3 ドル円相場の見通し

(注)青の点線は実績値、実線は四半期の中央値。紫のシャドーはレンジを示す
(出所)Bloombergより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

[参考文献]

みずほリサーチ&テクノロジーズ(2022)「2023年 新春経済見通し」、2022年12月28日


  • 1さらに12月29日には日銀黒田総裁の後任として山口広秀氏の名前が浮上しているとの報道、12月31日には日銀が1月の「経済・物価情勢の展望」レポートで、物価見通しを10月時点より上方修正するとの報道が流れ、これも円高・ドル安要因になったと考えられる
ページの先頭へ