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Mizuho RT EXPRESS

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2024年の日本株は総じて堅調と予想

─ ただし、年半ばに一時的に弱含み ─

2024年1月23日

調査部総括・市場調査チーム 主任エコノミスト 坂本明日香
asuka.sakamoto@mizuho-rt.co.jp

2024年入り後、日本株は急上昇。背景には3要因

2024年に入り、日本株の上昇が止まらない。日経平均株価は3万6,000円台、TOPIXは2,500Pt台と、1990年2月以来の水準へ回復した。水準を回復した背景には、主に3要因がある。

1つ目は、米国株上昇からの出遅れである(図表1)。2023年末にかけ、米国株は連邦準備制度理事会(FRB)による利下げへの期待の高まりから、米金利が低下し、米国株は大きく上昇した。一方日本株は、米金利低下からドル円相場は円高・ドル安に転換したことが嫌気され(図表2)、上値の重い展開となった。しかし、年明け以降も米国株が高水準で推移しており、日本株にも買いが入った。

2つ目は、ドル円相場が再び円安・ドル高に転じたことだ(図表2)。背景には、米国で早期利下げ観測が後退したことと、元旦の能登半島地震を受けて、日銀による早期金融政策修正の見方が後退したことがある。また、新NISAが開始され、海外株へ投資すると外貨需要が発生するため、円売り圧力が強まるとの思惑も浮上した1

3つ目は、他のアジア株から、日本株へ関心が高まっている可能性がある。アジア主要株価指数の2023年末対比騰落率を比較すると、日本株の上昇が突出している(図表3)。他方、日本と地理的に近い関係にある地域の株価は大きく下落している。日本では、半導体市場の回復期待や、インバウンドの回復、また東証の経営改革要請など、企業の成長を感じられる要因が複数存在する。そのため投資家は、日本株へ資金を移動している可能性が考えられる2

図表1 日米主要株価指数

(出所)LSEGより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

図表2 ドル円相場の推移

(出所)LSEGより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

図表3 アジア主要株価指数の年初来騰落率

(注)2023年末対比騰落率
(出所)LSEGより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

2024年の日本株は、一時的に弱含む場面があるも、総じて堅調に推移すると予想

先行きの日本株は、2024年半ばにかけて一時的に弱含むも、総じてみれば堅調とみる(図表4)。

弱含むきっかけは、日米の金融政策の修正と、それを受けた円高・ドル安だ。みずほリサーチ&テクノロジーズでは、米国、日本ともに、2024年第2四半期に金融政策が変更されると考えている3。具体的には、米国では利下げに転換し、日本ではイールドカーブ・コントロール(YCC)撤廃・マイナス金利解除に動くとみている4。その場合、米金利低下、円金利上昇から、日米金利差は縮小し、ドル円相場は円高・ドル安に転じるだろう5。日本株は、為替の影響を受けやすい自動車など輸出関連株を中心に、一時的に下押し圧力がかかるとみる。

もっとも、堅調な米国株と投資家による日本株への期待が、日本株を下支えするだろう。

米国株は、底堅い米国経済や、人工知能(AI)需要への期待による半導体株上昇などから、依然上昇基調である。先行きは、利上げの影響から米国経済がグロース・リセッションになるとみるが、プラス成長を維持することから6、米国株は引き続き堅調に推移し、日本株の下支えとなろう。

投資家による日本株買いにも、引き続き注目だ。2023年4月以降日本株が急上昇した際は、特に海外投資家による日本株買いが押し上げに繋がったと考えられた7。足元の株価急上昇にあたっても、再び海外投資家の買いが目立ち始めており、今後更なる押し上げに繋がる可能性がある(図表5)。

図表4 日経平均株価の見通し

(注)点線は実績値、実線は予測値
(出所)LSEGより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

図表5 投資主体別売買動向の推移(現物)

(出所)Bloomberg、LSEGより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

[参考文献]

坂本明日香・宮嵜浩(2023)「資本市場が突き上げる日本企業の経営改革~本格的に始動した東証の経営改革要請~」、2023年6月5日

みずほリサーチ&テクノロジーズ(2023)「2024年新春経済見通し~ラストワンマイルに潜むジレンマ」、2023年12月25日

松浦大将(2023)「景気堅調とインフレ減速が両立する米国経済~先行きはマイナス成長を回避、「グロース・リセッション」へ~」、2023年12月25日

東深澤武史(2023)「2024年のドル円、120円台への円高を予想~2024年の論点・シナリオを整理する~」、2023年12月28日

上村未緒(2024)「政策変更を巡り注目される日銀の情報発信~2024年4月のマイナス金利解除を予想 ~」、2024年1月10日


  • 1日本経済新聞電子版(2024年1月12日)「新NISAが招く円安圧力 海外投資加速、円売り2兆円増も」
  • 2日本経済新聞電子版(2024年1月12日)「東証の株式時価総額、アジア首位返り咲き 上海証取超え」
  • 3詳細は、みずほリサーチ&テクノロジーズ「2024年 新春経済見通し~ラストワンマイルに潜むジレンマ~」2023年12月25日を参照
  • 4日銀の金融政策については、上村(2023)を参照
  • 5詳細は、東深澤(2023)を参照
  • 6米国経済については、松浦(2023)を参照
  • 7坂本・宮嵜(2023)を参照。海外投資家に買われた背景には、4月に米著名投資家による日本株への追加投資報道があったこと、東証の経営改革要請もあり2023年1~3月期の日本企業決算発表で株主還元への期待が強まったことが考えられる。
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