2024年 新春経済見通し
─ ラストワンマイルに潜むジレンマ ─
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見通しのポイント
- 2024年の世界経済は、中国の景気減速と欧米の高金利の影響により減速へ。2025年は、中国の不動産部門の調整長期化が引き続き景気の重石となるものの、欧米景気が政策金利引き下げが続くもとで次第に持ち直すほか、ASEANなどが先進国向け外需に支えられて回復するため、世界経済は緩やかに回復する見通し
- 米国では、労働市場のヒト不足とサプライチェーンのモノ不足(供給制約)が緩和し、経済活動の正常化とインフレの急速な鈍化が同時進行。過度な金融引き締めとそれに伴う景気下押しの必要性は低下。これまでの金融引き締めの影響から、2024年は景気減速するもののマイナス成長は回避。2025年は緩やかな回復基調へ
- 欧州では、金融引き締め効果が次第に顕在化し、2023年末から2024年前半にかけて景気後退へ。ECBは2024年前半から利下げを開始、その後の利下げペースは賃金インフレへの懸念から緩やかなものにとどまる見通し。2023・2024年は共にゼロ%台前半の低成長。2025年は、利下げの進展とインフレ低下に伴い回復する見通し
- 中国では、不動産部門の調整が長期化する下で2023・2024年と景気減速感が強まる展開。政府は大幅な財政赤字を伴う巨額の景気刺激策に慎重なスタンスで成長率鈍化は避けられず。NIEs・ASEANは、半導体サイクルの持ち直しによりNIEsは2024年に、ASEANは政策金利引き下げと外需回復により2025年に回復へ
- 日本では、2024年度は、感染懸念後退に伴うサービス消費・インバウンド需要の回復が一服するほか、海外経済の減速や実質雇用者報酬の伸び悩みを受けて緩やかな持ち直しテンポにとどまる展開。2025年度は、個人消費が力強さを欠くもとで外需の回復テンポも緩やかにとどまり、成長率は潜在成長率に向けて鈍化する見通し
- 金融市場では、米国の利下げと日銀の政策修正により内外金利差が縮小方向となり、ドル円相場は2024年末にかけて1ドル=120円台後半へと緩やかな円高基調に転じる見通し。日銀は2024年4~6月期にマイナス金利解除・YCC撤廃を実施。その後は、賃金・物価の上昇モメンタムが鈍化するもとで、ゼロ金利を継続する見通し