みずほインサイト
労働分配率は本当に低下したのか
─ 企業の「賃上げ余力」は意外に小さい可能性 ─
2024年5月28日
調査部 経済調査チーム 主席エコノミスト 服部 直樹
naoki.hattori@mizuho-rt.co.jp
概要
- 企業の「賃上げ余力」を測る指標として労働分配率に注目が集まるが、計算に用いる統計や定義の解釈により水準・トレンドが異なるため、何が企業の実態を表すか見極める必要がある
- 国民経済計算のデータを用い、法人企業統計調査の労働分配率について独自に修正値を試算したところ、2000年代以降における労働分配率の低下トレンドが確認できない結果となった
- 法人企業統計調査の労働分配率をもとに賃上げ余力が趨勢的に高まったと解釈すると、実態を見誤る可能性がある。持続的な賃金上昇には労働分配率の引き上げよりも付加価値の拡大が重要だ