みずほリポート
日本の職業訓練政策の現状と課題
─ 成長と分配の好循環実現に向けた制度改革の方向性 ─
2022年8月10日
調査部 経済調査チーム 主席エコノミスト 服部直樹
naoki.hattori@mizuho-rt.co.jp
調査部 経済調査チーム 主任エコノミスト 風間春香
haruka.kazama@mizuho-rt.co.jp
調査部 経済調査チーム エコノミスト 中信達彦
tatsuhiko.nakanobu@mizuho-rt.co.jp
概要
- ■骨太の方針2022に盛り込まれた「人への投資」の拡充は、働き手のスキルアップを通じた生産性向上(成長)と、幅広い労働者の稼得能力向上による所得格差抑制(分配)の好循環実現に向けた基盤になる重要な施策である。
- ■そこで、わが国において働き手への公的な投資を担う職業訓練政策について、労働者個人を支援する公的職業訓練と教育訓練給付、企業に経済的支援を行う人材開発支援助成金に着目し、制度の課題や改革の方向性を考察した。
- ■各プログラムの利用状況や効果、国際比較を踏まえると、日本の職業訓練政策は、事前の情報提供、労働市場ニーズに合致した講座の設定、施策の効果、対象者に関する包摂性などの点で課題を抱えている。
- ■こうした課題を解決するには、ワンストップの情報提供や手続きのオンライン化による利用可能性の向上、キャリアコンサルティングの活用促進、デジタル分野の講座拡充、訓練と就労支援の一体化による施策効果の向上、そして、雇用保険の受給資格を条件にしないユニバーサルな職業訓練制度の構築、といった改革が必要とされる。