みずほリポート
今後5年を左右する欧州議会選挙
─ 右派台頭・地政学踏まえEUは軌道修正 ─
2024年4月30日
要旨
- ■2024年6月の欧州議会選挙はなぜ重要か?
―次の欧州議会・委員会の任期である2024~29年は、ロシアへの対応や、ESG目標達成に向けた対応強化が求められるなど、EUにとって重要な時期。選挙結果は、各種課題へのEU方針に影響を与える可能性大 - ■予想される選挙結果
―国民の移民対策への関心の高まりや、近年の各国の国政選挙、直近の支持率を踏まえると、主要中道会派(EPP(中道右派)+S&D(中道左派))が議席の4割超5割未満を占め、Renew(中道)またはECR(極右)と政策テーマごとに連携すると予想。欧州委員長は、フォン・デア・ライエン氏が続投する公算大 - ■何が公約に掲げられているのか?
―第一会派になるとみられるEPPの公約がEUの先行きをみる上で重要。EPP公約は、安全保障の強化を強調。「安全なくして自由はない」との考えのもと、防衛産業への投資などを強化する考え。移民については、国境警備強化や第三国での亡命手続きを可能にする方針。ESG目標に関しては、脱炭素化は将来の産業競争力の源泉であるとして、GHG排出削減目標にコミットする一方、中小企業や農家への支援など、個別事情に配慮する考え。こうした(経済)安全保障強化や脱炭素化のほか、規制緩和などで、EUの競争力を強化する方針 - ■EUはどう変わるのか?
―議席予測にもとづくシミュレーションでは、右派躍進の影響は全体としては限定的。しかし、ESG分野では一部で対策ペースの鈍化が求められる可能性大。EUは、ESG分野では選別的な対応をとり、環境保護などの分野で若干規制・対策を緩める一方で、脱炭素化投資をさらに促進する見込み
―不法移民の管理は強化するものの、元々、不法移民が移民全体に占める割合は限定的であり、経済面(労働市場)で目立った影響は生じない見込み
―最も顕著な変化は安全保障面でみられ、防衛産業向け投資が拡大し、GDPを2.1%以上押し上げる見込み