コンサルタント

齊堂 美由季

社会政策コンサルティング部 医療政策チーム

齊堂 美由季Miyuki Saido

2015年入社

大学院では栄養疫学を専攻。食と社会環境との繋がりを学ぶ中で、食と健康の背景にある多様な社会問題について考え、問題解決に資する仕事に就きたいと思うようになった。そこで、特に関連の強い社会保障分野で実績のあるシンクタンクへの就職を希望。
数あるシンクタンクの中でも、みずほ情報総研のチャレンジを後押しする風土に惹かれ、入社を決意した。入社以来、現職。

社会問題や政策動向を踏まえ、
展開する調査業務。
「食・栄養」「医療・介護・福祉」
などの分野で政策立案を
サポートする。

私は、厚生労働省や農林水産省、経済産業省などの中央官庁や自治体・各種団体を対象に、「食・栄養」や「医療・介護・福祉」などに関する、受託調査を主に担当しています。具体的には、顧客の持つ問題意識を踏まえて、ヒアリング調査やアンケート調査を通じて実態や課題を把握・分析し、有識者や関係者の意見を集約・調整しながら、報告書としてまとめていきます。例えば、認知症に関するあるプロジェクトでは、認知症の人の社会参加を支える取り組みの実態や、どのような社会資源が整備されているかなどについて、全国規模のアンケート調査を実施しました。それに加えて、認知症患者本人の語りを聞くこと、あるいは、行政担当者や各都道府県に設置された認知症支援窓口の担当者との意見交換会を開くことで、認知症の人の社会参加や地域での暮らしにおける困りごと等の具体的な課題を掘り下げることができました。このように、私たちの仕事は、アンケート調査などで得られる定量的なデータだけではなく、定性的なデータを含む様々な情報をまとめ、今後の施策の方向性について考えることが多くあります。

健全な食生活を育む「食育」。
実践の場として注目が集まる
「子ども食堂」を調査。

強く印象に残っているのは、2017年に担当した農林水産省の「食育」関連のプロジェクトです。食生活や食にまつわる社会環境に対する自らの課題意識から自発的にアクションを起こし、受注に至ったプロジェクトでした。「食育」は、「生きる上での基本であり、知育・徳育・体育の基礎となるもの」であると食育基本法において定義されています。非常に幅広い概念であり、「食」に関する伝統文化的・社会的な知識習得から、健康や栄養、コミュニケーション、マナー等を含め、健全な食生活を実践できる人を育てることといえます。従来、この「食育」の実践は、家庭や学校が中心でしたが、現在新たな場として「子ども食堂」への注目が集まっています。「子どもの貧困対策」というイメージを持たれがちな「子ども食堂」ですが、地域の人が誰でも気軽に立ち寄ってご飯を一緒に食べる地域交流の拠点として活動しているところも多くあります。私はそんな「子ども食堂」の活動実態を把握するための全国調査を実施しました。

「共食」の場として
重要な役割を担う「子ども食堂」。
〈みずほ〉による
「子ども食堂」支援に向けた
取り組み。

「子ども食堂」の実態調査は、国として初めての試みでした。調査を通じて明らかになったのは、「子ども食堂」が食育の重要な要素である「共食(人と食事を共にしながらコミュニケーションを取ること)」の場にもなっていること、そしてそれを支えている地域コミュニティの存在です。「子ども食堂」は単に食事を提供するのではなく、孤立する子どもや家庭を地域に結びつける役割を担っていると感じました。また、「子ども食堂」にはスタッフとして学生や働き盛りの現役世代、高齢者と幅広い年代が関わっていることから、多様な地域住民をつなぐプラットフォームになり得るとも感じました。
その後も「子ども食堂」支援に関する情報発信のため、社内制度である「チャレンジ投資制度」を活用し、自主研究として調査を継続。「子ども食堂」と企業とが連携した取り組みを企業に知ってもらおうと、全国5カ所の「子ども食堂」と、連携する企業に取材してコラムを執筆、企業向けメルマガで発信しました。また、〈みずほ〉のグループ会社から「子ども食堂」支援に関する意見交換の申し出を受けたことをきっかけに、「子ども食堂」を支援するNPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」を交えて、子ども食堂視察の調整や支援の方向性についての意見交換などを行いました。現在、コロナ禍で実際に集まる形の「子ども食堂」の開催は不安定な状況ですが、食材や弁当を配布する「フードパントリー」や「宅食」といった活動を始める団体が多くあり、「子ども食堂」の活動は新たな側面を迎えています。
この先も「子ども食堂」の変化を見つめつつ、地域を支える重要なインフラとしての社会的意義の情報発信や、企業や自治体など様々な人と連携した支援を進めていきたいと考えています。

「個人の物語」と「集団の傾向」を見据える仕事。
現場から一歩下がった立場だから
こそ、当事者に寄り添う意識を
大切にしたい。

私は、「子ども食堂」のプロジェクトに関与するだけではなく、他にも様々なテーマで調査を進めています。その中で大切にしているのは、常に当事者に寄り添うことです。私が関わる医療や介護、福祉の分野においては、様々な事情から困難な状況に陥っている人に数多くお会いします。シンクタンクの仕事には、こうした方々の「個人の物語」に向き合いながら、一方で、俯瞰的な視点から「集団の傾向」を見据え、両者を政策に反映できる情報として整える役割があると思っています。その際、俯瞰的な視点に偏らず、当事者の想いを常に頭に置いておかなければ、主役であるはずの当事者が置き去りになってしまう。現場から一歩下がった立ち位置だからこそ、当事者視点や当事者に寄り添う意識を忘れてはならないのと自戒しています。今後も、「調査のための調査」に終わるのではなく、社会をより良くするための調査を実践していきたいと思っています。

1日のスケジュール

  • 9:00

    出社。メールチェック。

  • 9:30

    児童虐待防止に向けた実態調査のための社内
    向け依頼書・企画書の作成。

  • 12:00

    昼食。

  • 13:00

    新規調査依頼(栄養士育成)の内容に関して、
    大学の先生と電話打ち合わせ。

  • 14:30

    〈みずほ〉グループ会社の関係者とNPO法人むすびえ合同で、「子ども食堂」支援に関するWeb会議。

  • 15:30

    厚生労働省を訪問。海外途上国・栄養施策に関する打ち合わせ。

  • 17:30

    帰社。文献調査、情報収集。

  • 19:00

    退社。

外部とのつながりを大切に、
社会をより良くする新たな提案を。

これまで携わってきた「子ども食堂」に関しては、NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」で副業を始めました。こちらでは、子ども食堂を社会インフラとして発展させていくための具体的なアクションを実現するべく、全国調査を企画中です。
社外との関りを積極的に増やして、行政関係者や研究者、民間の企業や団体とのつながりを作り、そこで吸収したアイデアを当社でも活かしていきたい。今後も、新しい視点での提案を意識し、社会をより良くするために実装すべきものを追求していきたいです。

※所属部署は取材当時のものになります。