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数値シミュレーションとAI・機械学習によるモノづくりDX支援 事例

事例紹介

数値シミュレーションとAI・機械学習によるモノづくりDX支援の事例を2つご紹介します。

ここに紹介したもの以外にも提供できるサービスは多岐に渡ります。まずは右上の「お問い合わせ」よりお気軽にお問い合わせください。

事例1:富岳を用いたファン形状の多目的最適化

大規模数値解析、およびその最適化やAI・機械学習との組合せによるサービスの事例をご紹介します。

PCなど、今日のわたしたちの生活を支えるさまざまな電子機器には、その内部に冷却用のファンを搭載しているものが多数あります。こうしたファンでは、冷却性能はもちろん静音性能も重要であり、これらを両立するような優れた設計案が模索されています。

当社は、ターボ機械協会を中心に大学等の研究機関やメーカ等の企業で組織される分科会に参画し、共同でこの課題に取り組みました。具体的には、図1のようなケース内のファンについて、ファンの風圧(冷却能力)の最大化と騒音の最小化を目的として様々な翼形状を探索する多目的最適化を行いました。ファンのケーシングの形状や翼の枚数(5枚)を固定したまま、リーン角、翼弦長、翼の反り量に関する29個の設計変数を調整することで翼の形状を変化させました。

この分科会では、スーパーコンピュータ「富岳」上に、流体解析システムFrontFlow/blue(FFB)による翼形状の評価(風圧と騒音の計算)と遺伝的アルゴリズムによる翼形状(設計変数)の最適化を連結した設計最適化ワークフローシステムが構築されました。

図2に、評価された各翼形状(約500形状)の風圧-騒音プロットを示します。グラフ内において右かつ下にある形状ほど望ましく、パレート最適解(それ以上右かつ下の領域に他の形状がない形状、すなわち風圧または騒音について最適である形状)が位置するラインが発見されました。

各形状についてファンの周囲の流れ場を可視化・観察すると、翼表面の圧力の変動分布に特徴があることがわかります。この圧力の変動分布を、データ分析手法の1つである固有直交分解(POD)を用いて分析したところ、図3に示すように、その主要なモードと風圧・騒音との間に関係があることがわかりました。この知見から、流れの特定のモードを制御することが、優れた形状を探索する上で重要であることが推察されます。

当社では、流体解析などの数値シミュレーションに加えて、最適化およびAI・機械学習によるデータ分析サービスの事例を提供いたします。


図1 検討対象としたファンの翼とケーシング
図1


図2 評価された各翼形状の風圧-騒音プロット(グラフ内の右かつ下にある形状ほど望ましい)
図2


図3 各形状の風圧・騒音評価結果と、PODにより得た流れの主要モードとの関係
図3

関連文献:

  • *岩瀬拓、十川直之、川鍋友宏、磯野勝朝、山出吉伸、大山聖、金子公寿、加藤千幸、「スーパーコンピュータを利用したボックスファン設計最適化ワークフローシステムに関する研究」、ターボ機械協会誌「ターボ機械」、第50巻、第12号、pp.24-37.
  • *Kotaro Nakamura, Hiroshi Koizumi, Yoshinobu Yamade, Taku Iwase, Naoyuki Sogo, Tomohiro Kawanabe, Katsumoto Isono, Akira Oyama, Kimihisa Kaneko, Chisachi Kato, "Design optimization of a box fan using supercomputer "Fugaku"", Proceeding of ASME-JSME-KSME Fluids Engineering Division 2023, 1-07-3-01, Osaka, July 9-13, 2023.

事例2:めっき厚の予測による意思決定支援

汎用CAEソフトウェアCOMSOL Multiphysics®によるめっき厚予測およびサロゲートモデル構築による意思決定支援の事例をご紹介します。COMSOL Multiphysicsは、COMSOL AB社(スウェーデン)によって開発された、構造力学、流体力学、電磁気、伝熱、対流・拡散、音響など多岐に渡る現象を有限要素法を用いて解析することができるシミュレーションソフトウェアです。

電気めっきでは、被めっき物を薬品に浸して電流を流し、表面に金属のめっきを施します。複数の電極のうち一部のみに対して電圧を印加することにより、与えられた形状に対して均一なめっき処理を行うことを目指す場合があります。

当社は、COMSOL Multiphysicsを用いて多数の形状と電極状態についてシミュレーションを行い、それを用いてめっき厚を予測するAIモデルを作成しました。このように、注目する現象の支配方程式に基づくCAE解析を事前に多数行い、そのデータを用いて入力と出力との関係を学習することで、入力から出力を直接予測することができるモデルを代理モデル(サロゲートモデル)と呼びます。

図では、学習済のサロゲートモデルがCAE解析結果とよくあう予測ができていることが分かります。

サロゲートモデルは、通常、元のCAE解析に比べてある程度の精度ではるかに高速な予測ができるため、製品開発の早い段階(企画や設計方針決めの段階)における案の大まかな絞り込みのような、意思決定プロセスにおける客観的で定量的な判断材料として活用することができます。

当社では、汎用CAEソフトウェアCOMSOLの販売、導入支援、モデル作成支援、サロゲートモデル構築支援などのサービスを提供いたします。

図4


  • *COMSOL、COMSOL Multiphysics、COMSOL Desktop、およびLiveLinkは、COMSOL AB社の商標です。 COMSOL社製品の総輸入販売元は計測エンジニアリングシステム株式会社です。

関連情報

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サイエンスソリューション部03-5281-5311

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