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天理市、大川市を対象とした実施計画の策定

認知症施策におけるソーシャル・インパクト・ボンドの導入等に関する調査結果

2019年6月12日
みずほ情報総研株式会社

みずほ情報総研株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:向井 康眞)は、平成30年度老人保健健康増進等事業「認知症施策における民間活力を活用した課題解決スキーム等の官民連携モデルに関する調査研究事業」を実施し、この度その結果を取りまとめましたのでご案内いたします。

認知症施策における公的サービスの提供にあたり、行政が、民間資金、人材、ノウハウを活用し、社会的課題を解決する手法の1つである、ソーシャル・インパクト・ボンド(以下、SIB)の導入が注目されています。

「未来投資戦略 2018」(平成30年6月)では、「介護・認知症予防などの新たな分野を含め、ヘルスケア分野において、行政コストを抑えつつ、民間ノウハウを活用して社会課題解決と行政効率化を実現する、成果連動型民間委託契約方式の活用と普及を促進する」ことが示されています。SIBは、成果連動型民間委託契約方式の1つの仕組であるといえます。

認知症の人を対象とした支援は、予防、治療、生活支援、介護の分野を中心に、医療保険、介護保険制度等による公的サービスが、全国の自治体において遍く実施されています。今後、これらの公的施策に対する需要は、著しく増加することが予想されています。そのため、公的施策の効率化とともに、認知症の人が、地域で生活を継続するために必要なサービスを官民連携により、効果的、効率的に創出する取組が期待されています。

しかしながら、自治体が、SIBスキーム等の官民連携モデルの導入を検討しようとした場合、認知症施策の中で、どのような事業領域の親和性が高いのか、どのような成果指標が設定しうるのか、財政効果をどのように想定できるのか等、成果連動型民間委託方式も含めた事業者との連携体制の在り方等、多くの検討課題があると考えられます。

そこで、本調査研究事業は、1)認知症施策の領域において、成果連動型民間委託契約方式等の官民連携による課題解決スキームの適応性の高いテーマの抽出、2)2自治体において認知症予防を対象に実施計画の策定を行い、導入時の課題等を明らかにすることを目指しました。

主な調査結果

1.認知症施策領域における成果連動型民間委託契約方式等導入に関するアンケート調査結果

全国の市区町村長のうち成果連動型民間委託契約方式・SIBに関心があると回答した割合は1割程度に留まる。7割がどちらとも言えないと回答

全国の市区町村長を対象に実施したアンケート調査の結果(回収率39.9%)から、成果連動型民間委託契約方式・SIBに対して関心があると回答した割合は、1割程度。どちらともいえないが7割を占めた。先行している実践例の情報を共有化することにより、市区町村長の関心が高まることが期待される。

高齢者福祉主管課による成果連動型民間委託契約方式等を導入することの親和性が高い分野
認知症施策領域における親和性の高い領域として以下が抽出された。

左右スクロールで表全体を閲覧できます

実施率・高/評価得点・高
  • 認知症サポーター養成講座の開催・講師派遣
  • 認知症の初期集中支援チームの活動実施
  • 認知症カフェの実施
  • 配食
  • 認知症地域支援推進員による相談・支援
  • 認知症サポーター養成講座の受講推進
  • 自立高齢者の認知症予防のための取組
  • 居場所・趣味活動・社会的活動の場の提供
  • 金銭管理の支援
  • 認知症の人と家族の会の情報発信
  • 介護者宅の個別訪問
実施率・低/評価得点・高
  • 認知症サポーターの活動実践の広報
  • 食事を共にする場の提供
  • 介護者の意見聴取、情報発信の場の設置
  • ごみ出し
  • 買い物支援
  • 注:「実施率」とは、アンケートに回答した自治体を対象に、所在地域で現在既に実施されている割合を指す。また、「評価得点」とは、同様に回答自治体が、成果連動型民間委託方式を導入することの親和性が高いと評価した得点を指す。

認知症施策領域において成果連動型民間委託契約方式を導入する際の課題

高齢者福祉主管課を対象としたアンケート調査結果より、認知症施策領域において成果連動型民間委託方式を導入する際の課題の記述を求めたところ、以下の結果が得られた。

■成果指標に関する課題
  • 委託者である自治体として、どのように成果指標を選択し、達成基準を設けるのかに関する情報がない。地域の実状を踏まえた上で達成基準が設定できるようにするための情報が必要である。
  • 基礎自治体では、成果目標を設定するためのエビデンスを集めることが難しい。
  • 介護サービスの領域においては、実施者側が定量的な目標設定を行うという考え方自体に馴染みがない。
■委託先事業所、人材不足
  • 委託先の事業所が多く、また福祉人材が多数活動している都市部であれば成果連動型民間委託契約方式の導入も検討できるであろう。一方、過疎地域では委託先事業所が少なく、福祉人材も不足しており、導入は難しいのではないかと考える。
  • 小規模自治体のため、高齢者人口も少ないことから、事業者が新たに参入することが採算面で難しいと考えられる。
  • 委託先を見つけることが難しい。
■委託に関する手続き、委託料の設定、委託先に関する課題
  • 翌年度予算積算時を想定し、支払うべき委託料の積算が難しいと考える。また、現年度予算執行時に、成果が積算額を超えた場合、確保した予算の中から支払うことが難しくなることが課題である。
■先進事例に関する情報提供
  • 成果連動型民間委託契約方式の実例が少ない。公正な評価手法の確立等、ノウハウの蓄積が必要である。認知症施策は、評価に馴染みにくい事業も多いと考える。民間事業者にインセンティブが生じる点、費用対効果が高まる点などの利点については理解できる。
■適応性の高い事業領域について
  • 現在、研修等イベント開催に関わる事業については、民間事業者等に委託しているが、こうした事業内容であれば成果連動型の委託に比較的なじむであろう。
  • 認知症予防やリハビリ等、専門的な知識や先端の技術が必要な事業は、導入効果が期待できると考える。

2.パイロット事業の原型作成のための基礎調査結果

本調査研究事業では、日本社会における喫緊の取組課題である認知症施策領域について、その予防および進行の緩和を想定する社会的成果として、成果連動型民間委託契約方式での官民連携の実践例を創出するために、奈良県天理市、福岡県大川市を対象に事業実施計画を策定した。 具体的には、(1)認知症施策分野における社会的課題(事業領域)の設定、(2)事業目標の検討、(3)ロジック・モデルの検討、(4)成果指標およびデータ収集方法の検討(想定されるアウトカムの整理)、(5)金銭的代理指標の検討、(6)資金計画案の検討-について検討を行い、事業モデルを構築した。なお、検討にあたっては、特定の事業(支援内容)を前提にしたものではなかったが、検討の題材として、株式会社公文教育研究会の「脳の健康教室」「学習療法」を対象に、その導入に向けた条件等について整理した。


より詳しい調査結果、および事例集の内容は、以下の報告書をご確認ください。

認知症施策における民間活力を活用した課題解決スキーム等の官民連携モデルに関する調査研究事業
事業報告書(PDF:11,790KB)

本件に関するお問い合わせ

報道関係者からのお問い合わせ

みずほ情報総研株式会社
広報室 石原 卓
電話:03-5281-7548
E-mail:info@mizuho-ir.co.jp

アンケート調査に関するお問い合わせ

みずほ情報総研株式会社
社会政策コンサルティング部
山本 眞理  掛川 紀美子
電話:03-5281-5277

社会政策コンサルティング部03-5281-5281

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