背景及び目的
2009年に流行した、ブタ由来の新型インフルエンザウイルスは、人類に対するインフルエンザの脅威を知らしめることになりました。新型インフルエンザの感染メカニズムとシアル酸認識、また、新型インフルエンザの抗原性の予測を目的とした量子化学計算を行った事例を紹介いたします。
解析事例
2009年のヒト新型インフルエンザ、1934年のヒトインフルエンザ、1930年のブタインフルエンザに対して、ヒト型の糖鎖受容体との結合性を評価しました。フラグメント分子軌道法を用いて、糖鎖受容体とHAタンパク質との相互作用を、残基単位で明らかにしました。MP2/6-31G*法による相互作用解析をおこないました。

成果及び今後の展望
FMO計算結果により得られた結合エネルギーをみると、糖鎖受容体に対する相互作用が最も強いのは、2009年の新型ウイルスHAであることがわかります。その理由が、Ser145のLys145への変異であることが明らかになりました。

図:各ウイルスHAと糖鎖受容体との結合部位
参考文献
K. Fukuzawa, K. Omagari, K. Nakajima, E. Nobusawa and S. Tanaka, Protein &Peptide Lett., 18, 530 (2011).