社会的孤立の実態とその問題点についての考察

2022年4月1日

みずほリサーチ&テクノロジーズ 主席研究員

藤森 克彦

ナレッジ・オピニオン

*本稿は、『個人金融』2022年冬号(一般財団法人ゆうちょ財団、2022年2月発行)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

【要旨】

本稿では、みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)『社会的孤立の実態・要因等に関する調査分析等研究事業報告書』(厚生労働省令和2年度社会福祉推進事業)を活用して、社会的孤立の実態とその問題点を実証的に考察した。

まず、社会的孤立の実態をみると、主な特徴として、60歳以上の未婚者や離別者で、社会的孤立に陥る人の比率が高いことがあげられる。また、高齢期と現役期の単身男性や、ひとり親世帯で社会的孤立に陥る人の比率が高い。

次に、社会的孤立の問題点として、孤立者は非孤立者に比べて、経済的困窮に陥る人の比率が高いことや、生きる意欲や自己肯定感が低いこと、さらに健康状態がよくない人の比率が高いことがあげられる。

社会的孤立への対応として、新たな相談支援の在り方として、支援者が孤立者とつながり続けることを目的とする「伴走型支援」の有用性などが指摘されている。今後、新たな支え合いに向けた取り組みの強化が求められる。

はじめに

コロナ禍が長期化する中で、人と人とのつながりを保つことが難しくなり、「社会的孤立」が大きな課題となっている。しかし、社会的孤立は、コロナ禍の前から指摘されてきた問題である。コロナ禍で、社会的孤立が一層深刻になり、社会問題として認識され始めている。

ところで、「社会的孤立」の研究は、これまで高齢者を対象にした研究が多かった。現役世代を含めて幅広い年齢階層を対象にした社会的孤立の実証研究はまだ乏しい状況である。また、社会的孤立は何が問題なのかという点についても考察していく必要がある。

そこで本稿では、みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)『社会的孤立の実態・要因等に関する調査分析等研究事業報告書』(厚生労働省令和2年度社会福祉推進事業)に示された社会的孤立の実証分析を参考に、社会的孤立の実態やその問題点を考察していく。

そして最後に、社会的孤立の対策として、「伴走型支援」を紹介する。伴走型支援は、生活困窮者を支援する現場で生み出された支援の概念である。社会的に孤立した人々への支援として有効なことが報告されている(奥田・原田、2021)。

本章の構成としては、まず、先行研究から社会的孤立についての概念整理を行った上で、本稿における孤立指標を示す。次に、孤立指標を用いて社会的孤立の実態について考察する。さらに、社会的孤立は何が問題なのか、という点について考察する。最後に、社会的孤立に対する対応として「伴走型支援」の意義を示す。

なお、本稿で示した考察は筆者の個人的な見解である。

1. 「社会的孤立」の定義と孤立指標

(1)「社会的孤立」とは何か

「社会的孤立(social isolation)」について一律な定義があるわけではないが、英国の社会学者ピーター・タウンゼントは「家族や地域とほとんど接触がないという客観的状態」と定義している。つまり、「社会的孤立」は他者との関係性が乏しいという客観的状態を意味する。

ちなみに、孤立と似て非なる概念として「孤独(loneliness)」がある。孤独は、「仲間がいなかったり、失ったというありがたくない感じをもっていること」であり、主観面を捉えた概念である(服部・一番ケ瀬、1974、219)。客観面を捉えた「孤立」とは区別される。本稿では、「社会的孤立」について考察する。

(2)先行研究における「社会的孤立」の操作的定義

先行研究では、社会的孤立の測定について、様々な操作的定義が用いられてきた。例えば、阿部(2014)は、「社会的孤立」について、①社会的参加(組織・活動への参加の欠如)、②社会的交流(会話の頻度、家族・親族・友人等との接触の欠如)、③社会的サポート(道具的サポートや情緒的サポートの欠如)、に分類している。

また、内閣府(2014)では、「孤立者」の操作的定義として、(1)「コミュニケーションの希薄」、(2)「社会的サポートの受領」、(3)「社会的サポートの提供」といった3つの点から定義している。コミュニケーションの度合いが低いことや、頼れる人がいないという社会的サポートの欠如のみならず、頼ってくれる人がいないという社会的サポートの欠如を孤立概念に含んでいることがひとつの特徴と考えられる。

その他、社会的孤立について、情緒的サポートを取り上げた調査や高齢者の社会的交流を取り上げた調査など特定のテーマに絞った研究も多い。

こうした先行研究から「社会的孤立」の操作的定義を広く捉えて整理すると、概ね、①社会的交流の欠如(会話頻度などが少ないこと)、②受領的サポートの欠如(「頼れる人」がいないこと)、③提供的サポートの欠如(「手助けをする相手」がいないこと)、④社会参加の欠如(社会活動に参加しないこと)、に整理できると考えられる(藤森、2016)。

(3)本稿における使用するデータと社会的孤立の操作的定義

みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)は、国立社会保障・人口問題研究所(2017)『2017年生活と支え合い調査』の二次利用分析を行ったワーキングペーパーの付表をもとにまとめたものである*1。『2017年生活と支え合い調査』は、2017年7月に実施した調査で、日本の世帯構成と家計の実態、家族や地域の人々とのつながりや支え合いの実態、個人の社会・経済的な活動の実態、生活や居住の状況、社会保障制度が果たしている役割などについて調査をしている。同調査は世帯票と個人票の2種類の調査票を用いており、有効票数は、世帯票が10,359(有効回収率63.5%)、個人票が19,800(有効回収率75.0%)にのぼる大規模な全国調査である。

そして、みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)では、「会話の欠如型孤立(以下、会話欠如型)」「受領的サポートの欠如型孤立(以下、受領的サポート欠如型)」「提供的サポートの欠如型孤立(以下、提供的サポート欠如型)」「社会参加の欠如型孤立(以下、(社会参加欠如型)」の4つの孤立指標について、以下の調査項目から操作的定義を設定している。

<会話欠如型孤立>
まず、「会話欠如型」については、「あなたはふだんどの程度、人と会話や世間話をしますか」との設問に、「毎日」「2~3日に1回」「4~7日(1週間)に1回」「2週間に1回」「1ヶ月に1回」「ほとんど話をしない」の選択肢を置いている。このうち、「2週間に1回」「1ヶ月に1回」「ほとんど話をしない」のいずれかを選択すれば「会話欠如型の孤立者」とした。つまり、「会話欠如型」の孤立に陥る人は、2週間に1回以下しか会話をしない人である。

<受領的サポート欠如型孤立>
「受領的サポート欠如型」は、「(1)子どもの世話や看病」「(2)(子ども以外の)介護や看病」「(3)重要な事柄の相談」「(4)愚痴を聞いてくれること」「(5)喜びや悲しみを分かち合うこと」「(6)いざという時のお金の援助」「(7)日頃のちょっとしたことの手助け」「(8)家を借りる時の保証人を頼むこと」「(9)成年後見人・保佐人を頼むこと」の9項目について、頼れる人の有無を尋ねている。回答の選択肢としては、各項目について「頼れる人がいる」「頼れる人はいない」「そのことで人には頼らない」の中から1つを選択する。そして、9項目の全ての設問について「頼れる人はいない」を選択すれば、「受領的サポート欠如型の孤立者」とした。

<提供的サポート欠如型孤立>
「提供的サポート欠如型」については、「①家族・親族」「②友人・知人」「③近所の人」「④職場の人」の各人が、受領的サポートで設定した(1)~(7)の事柄について助けを必要とするとき、「その事柄について手助けをするかどうか」を尋ねている。①~④の全てについて「7つ全ての事柄に関して手助けをしない」を選択すれば、「提供的サポート欠如型の孤立者」とした。

<社会参加欠如型孤立>
「社会参加欠如型」については「(1)自治体や町内会」「(2)ボランティアやNPO」[(3)宗教団体]「(4)PTA や保護者会」「(5)趣味の会やスポーツクラブ」「(6)職場内の会やグループ」「(7)同じ学校出身者の会やグループ」の7項目について、「1年以上前から参加している」「この1年以内に新たに参加するようになった」「参加したいができない」「参加する予定はない」を尋ねている。7項目全てについて「参加したいができない」を選択した場合、「社会参加欠如型の孤立者」とした。

なお、みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)は、「受領的サポート欠如型」と「社会参加欠如型」について、「狭義」と「広義」の二つの定義を設けている*2。本稿で用いる「受領的サポート欠如型」と「社会参加欠如型」の定義は、「狭義」の定義である。

2. 社会的孤立の実態

では、上記の孤立指標にしたがって、社会的孤立の実態をみていこう。具体的には、男女別、年齢階層別、配偶関係別、世帯類型別に分けて、各孤立指標における孤立者の出現率をみて、どのような属性に社会的孤立が起こりやすいかを考察する。

(1)男女別にみた社会的孤立者の出現率

社会的孤立者の出現率について、全体観をみていこう。総数をみると、社会参加欠如型が6.6%、提供的サポート欠如型3.2%、会話欠如型2.2%、受領的サポート欠如型1.7%である(表1)。なお、2つ以上の孤立指標に該当している人の比率は、総数1.4%、男性2.1%、女性0.7%となっている(みずほリサーチ&テクノロジーズ、2021、33)。複数の孤立指標に該当する人は、全体としては低い水準である。

男女別に比較すると、社会参加欠如型を除く3つの孤立指標において、いずれも男性の比率が女性よりも高くなっている。男性の方が女性よりも社会的孤立に陥りやすいことは、これまでの先行研究でも示されてきた点である。

表1 男女別にみた社会的孤立者の出現率

(単位:%)

会話
欠如型
受領的サポート
欠如型
提供的サポート
欠如型
社会参加
欠如型
総数 2.2 1.7 3.2 6.6
男性 3.0 2.6 4.4 6.2
女性 1.4 1.0 2.1 7.0

(出所)みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)、25頁に基づき作成。

(2)年齢階層別にみた社会的孤立者の出現率

次に、年齢階層別に社会的孤立の出現率(全体)をみると、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型の孤立に陥る人の比率は、50代までは1~2%台の低水準であるが、60代以降になると高まる傾向がみられる(表2)。特に、提供的サポート欠如型では、80歳以上で10%を超えるなど、60代以降大きく上昇する。

男女別にみると、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型は、男女ともに年齢が高まるにつれて孤立する人の比率も高まる。このうち提供的サポート欠如型をみると、女性は男性に比べて70代から80代にかけて急激に孤立する人の比率が高まる。80代の高齢女性は、提供的サポート欠如型の孤立に陥る人の比率が高い。この背景には、女性は男性より平均寿命が長いので、高齢女性は配偶者を亡くすことによって、手助けをする相手がいない状況が生じやすいと推察される。

なお、社会参加欠如型孤立については、年齢階層別の明確な傾向はみられなかったが、20代~30代では、女性の方が男性よりも、「参加したいができない」と回答する人の比率が高い。


表2 年齢階層別にみた社会的孤立者の出現率

(単位:%)

     全体 男性 女性
会話
欠如型
受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型 会話
欠如型
受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型 会話
欠如型
受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型
18-19歳 1.1 0.8 1.2 4.5 2.3 1.6 2.7 2.0 0.0 0.0 0.0 6.6
20-29歳 1.2 1.7 2.4 5.9 1.6 2.1 3.8 4.5 0.9 1.2 1.1 7.1
30-39歳 1.1 1.4 2.2 7.3 1.6 2.5 3.6 6.3 0.7 0.3 0.9 8.2
40-49歳 1.5 1.6 2.3 8.1 2.3 2.4 3.8 7.7 0.8 0.9 1.0 8.5
50-59歳 2.0 1.6 1.9 7.4 2.8 2.3 3.1 7.2 1.2 1.0 0.7 7.7
60-69歳 2.9 2.0 3.2 5.9 3.7 3.0 4.6 5.5 2.2 1.0 1.7 6.2
70-79歳 3.3 2.2 5.9 4.5 4.9 3.1 7.1 4.6 1.9 1.4 4.6 4.3
80歳以上 3.4 2.1 13.0 5.9 4.3 2.3 10.5 7.5 2.7 1.9 14.9 4.8

(注)太文字部分は、10%を超える箇所。
(出所)みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)、26頁に基づき作成。

(3) 配偶関係別にみた社会的孤立者の出現率

配偶関係別にみた社会的孤立者の出現率を60歳未満と60歳以降に分けてみていく(表3)。まず、60歳未満をみると、会話欠如型と受領的サポート欠如型の出現率は、未婚者と離別者で高い。一方、提供的サポート欠如型は、未婚者と死別者が4%台となり、相対的に高い水準となっている。

次に、60歳以上の年齢階層について、配偶関係別に社会的孤立者の出現率をみると、特徴的なのは、未婚者について、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型の出現率が10%を超える高い水準になっている点である。60歳以上の未婚者は、他の配偶関係に比べて、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型の孤立に陥りやすいことが推察される。また、離別者についても、提供的サポート欠如型の出現率が10%を超えている。

なお、社会参加欠如型は、60歳未満及び60歳以上ともに、配偶関係ごとの違いがあまり明確ではない。


表3 配偶関係別にみた社会的孤立者の出現率

(単位:%)

         60歳未満 60歳以上
会話
欠如型
受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型 会話
欠如型
受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型
未婚 2.6 3.3 4.5 5.4 12.4 10.1 17.2 5.8
配偶者あり 0.7 0.7 0.9 8.4 2.0 1.3 3.2 5.2
死別 1.0 1.1 4.1 7.5 3.5 1.9 9.5 5.2
離別 3.4 2.6 2.6 6.7 7.8 5.7 11.2 7.3

(注)太文字部分は、10%を超える箇所。
(出所)みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)、28頁に基づき作成。

(4) 世帯類型別にみた社会的孤立者の出現率

世帯類型別に社会的孤立者の出現率をみていこう。表4をみると、高齢の単身男性において、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供型サポート欠如型の孤立に陥る人の比率が二桁を超える高い比率となっている。また、非高齢の単身男性も、二桁は超えないものの、上記の3つの孤立指標の出現率は、相対的に高い水準にある。

単身世帯の女性をみると、高齢の単身女性において提供的サポート欠如型の孤立に陥る人が10%弱の高い比率になっている。ただし、会話欠如型や受領的サポート欠如型の孤立に陥る人の比率は高くない。また、非高齢の単身女性においては、いずれの孤立指標も総数の比率とほぼ同程度であり、高い水準ではない。

他の世帯類型をみると、ひとり親世帯において、社会参加欠如型の孤立に陥る人の比率が、11.5%と高い水準となっている。

総じてみると、高齢期と現役期の単身男性は、他の世帯類型に属する人よりも会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供型サポート欠如型の孤立に陥りやすい。なお、単身女性は、高齢期、非高齢期ともに男性ほど孤立していない。この背景には、単身女性は「別居家族」との関係を持つ人の比率が高いことに加えて、単身高齢女性は「近所」、現役期の単身女性は「友人」とのつながりを持つ人の比率が男性よりも高いことがあげられる。

また、ひとり親世帯も、社会参加欠如型の孤立に陥りやすいと考えられる。


表4 世帯類型別にみた社会的孤立者の出現率

(単位:%)

  会話欠如型 受領的サポート
欠如型
提供的サポート
欠如型
社会参加欠如型
単身世帯 高齢
(65以上)
男性 14.8 11.1 17.4 6.4
女性 5.4 4.2 9.7 4.9
非高齢
(0-64歳)
男性 8.3 6.9 9.4 6.0
女性 4.4 1.7 2.2 6.9
夫婦のみ
世帯
夫婦とも高齢 2.4 1.7 3.4 5.3
夫婦とも非高齢 1.1 1.5 1.3 6.9
三世代世帯(子どもあり) 0.5 0.5 2.5 6.2
二世代世帯(子どもあり) 0.6 0.5 0.9 8.1
ひとり親世帯(二世代) 1.8 0.4 0.5 11.3
総数 2.2 1.7 3.2 6.6

(注1)「子ども」とは20歳未満の世帯員をいう。
(注2)太文字部分は、10%を超える箇所。
(出所)みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)、29頁に基づき作成。

3. 社会的孤立は何が問題なのか

では、社会的孤立は、何が問題なのだろうか。高齢者を中心にした社会的孤立に関する先行研究をみると、孤立している高齢者は、孤立していない高齢者に比べて、経済的困窮に陥りやすいこと、抑うつ傾向が強いこと、不健康になりやすいことなどが指摘されている*3。現役世代であっても、社会的孤立に陥れば、こうした問題が顕在化することが考えられる。

そこで以下では、みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)に基づいて、各孤立指標について、①経済的困窮、②生きる意欲や自己肯定感の低下、③主観的不健康に陥る人の比率を、孤立者と非孤立者に分けて比べていく。

(1)経済的困窮と社会的孤立の関係

第一に、経済的困窮と社会的孤立との関係についてみていく。具体的には、「等価可処分所得第1十分位*4」に属する人の比率と「現在の暮らし向きが大変苦しい」と回答する人の比率を、孤立者と非孤立者で比べていく。

まず、「等価可処分所得第1十分位」に属する人の比率を孤立者と非孤立者で比べると、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型のいずれの孤立指標においても、孤立者は非孤立者よりも第1十分位に所属する人の比率が高い(表5)。

また、「現在の暮らし向きが大変苦しい」と回答する人の比率をみても、会話欠如型、受領的サポート孤立型、提供的サポート欠如型の孤立指標において、孤立者の方が非孤立者よりも「現在の暮らし向きが大変苦しい」と回答する人の比率が顕著に高い。

以上のように、会話欠如型、受領的サポート孤立型、提供的サポート欠如型の孤立に陥っている人は、経済的に困窮している人の比率が高い。

そして、孤立者が経済的困窮に陥ると、支援を頼める相手がいないために、最悪の場合、衣食に関する生活必需品を購入できないことや、ライフラインが止められるリスクがある。表5は、4つの孤立指標について、過去に「食料を買えない経験」「衣料を買えない経験」「公共料金の未払いの経験」があったかどうかを尋ねたものである。その結果をみると、どの孤立指標も、孤立者の方が非孤立者よりも、こうした経験をもつ人の割合が高い。特に、会話欠如型や受領的サポート欠如型において、孤立者と非孤立者の差が大きい。

経済的困窮に陥っても、早期に支援を求めることができれば、生活再建も行いやすい。しかし、社会的に孤立すると、生活困窮が一層深刻になっていく懸念がある。


表5 経済的困窮と社会的孤立との関係

(単位:%)

          会話欠如型 受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型
孤立者 非孤立者 孤立者 非孤立者 孤立者 非孤立者 孤立者 非孤立者
等価可処分所得第1十分位に属する 26.9 7.0 21.5 6.1 14.1 4.8 6.5 6.8
現在の暮らし向きが「大変苦しい」 24.3 8.1 28.0 8.0 18.2 8.1 9.7 8.4
食料を買えない経験があった 31.2 12.4 35.0 12.0 22.9 11.1 17.1 12.3
衣料を買えない経験があった 30.5 14.1 33.9 13.7 20.8 12.9 17.4 13.9
公共料金の未払いがあった 16.5 7.6 20.1 7.3 12.8 7.1 8.8 7.8

(注)太文字部分は、10%を超える箇所。
(出所)みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)、34-36、38、40頁に基づき作成。

(2)生きる意欲や自己肯定感の低下

第二に、社会的孤立の問題点として、生きる意欲や自己肯定感の低下を招くことがあげられる。

国立社会保障・人口問題研究所(2017)では、「何をするのも面倒くさい」や「自分は価値のない人間だ」と感じるかを尋ねる項目がある。これらの項目は、生きる意欲や自己肯定感に関わる項目と考えられる。会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型の孤立に陥る人において、15%弱の孤立者が「何をするのも面倒くさい」と考えており、非孤立者よりも高い水準である(表6)。また、「自分は価値のない人間だ」と考える人の割合も、上記の3つの孤立に陥る人は、非孤立者よりもかなり高い水準にある。

また、国立社会保障・人口問題研究所(2017)では、「まわりの物事に神経過敏に感じる」「何かに絶望的だと感じる」「そわそわ落ち着かないと感じる」「気分が沈み込んで気が晴れない」という点も尋ねている。これらの指標に「何をするのも面倒くさい」「自分は価値のない人間だ」を加えた6つの質問項目は、うつ・不安障害の指標でもある。会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型の孤立に陥る人は、孤立者の方が非孤立者に比べてうつ・不安障害の傾向が強いこと推察される。


表6 生きる意欲や自己肯定感などと社会的孤立との関係

(単位:%)

          会話欠如型 受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型
孤立者 非孤立者 孤立者 非孤立者 孤立者 非孤立者 孤立者 非孤立者
何をするのも面倒くさいと「いつも」感じる 14.7 4.0 13.6 4.0 14.0 3.9 3.8 4.6
自分は価値のない人間だと「いつも」感じる 14.0 2.1 13.1 2.1 8.2 2.1 2.3 2.5
まわりの物事に神経過敏に「いつも」感じる 11.6 4.6 5.7 4.6 9.2 4.5 4.2 5.0
何かに絶望的だと「いつも」感じる 10.8 2.3 7.9 2.3 8.2 2.1 2.0 2.6
そわそわ落ち着かないと「いつも」感じる 7.8 1.6 4.9 1.6 7.3 1.3 1.4 1.9
気分が沈み込んで気が晴れないと「いつも」感じる 10.0 2.2 6.7 2.2 8.0 2.0 1.9 2.5

(注)太文字部分は、10%以上の箇所。
(出所)みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)、46-51頁に基づき作成。

(3) 主観的健康の低下

次に、主観的健康について「健康状態がよくない」という回答した人の比率をみると、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型において、孤立者は非孤立者よりも「健康状態がよくない」と回答する人の比率が高い(表7)。

健康状態が悪ければ、他者に支援を求めることが必要になるが、孤立している1割程度の人は、会話頻度が低く、頼れる人がなく、手助けする相手もいないことが考えられる。


表7 主観的健康と社会的孤立との関係

(単位:%)

          会話欠如型 受領的サポート欠如型 提供的サポート欠如型 社会参加欠如型
孤立者 非孤立者 孤立者 非孤立者 孤立者 非孤立者 孤立者 非孤立者
健康状態がよくない 13.2 2.6 10.4 2.4 10.5 2.0 3.5 2.7

(注)太文字部分は、10%以上の箇所。
(出所)みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)、43頁に基づき作成。

4.おわりに ―社会的孤立への対応

(1)社会的孤立の実態とその問題点

以上をまとめると、社会的孤立の実態として下記の点があげられる。これらは、社会的孤立に陥りやすい人の主な属性などを示しており、今後留意していく必要があろう。

第一に、年齢階層別に社会的孤立の出現率をみると、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型の孤立に陥る人の比率は、50代までは低水準であるが、60代以降になると高まっていく。特に、提供的サポート欠如型の孤立に陥る女性の比率が、70代から80代にかけて急激に高まっている。

第二に、配偶関係別に60歳未満の社会的孤立の出現率をみると、会話欠如型と受領的サポート欠如型の孤立に陥る人の比率は、未婚者と離別者で高い。一方、提供的サポート欠如型は、未婚者と死別者で高い水準にある。

また、60歳以上について配偶関係別の社会的孤立者の出現率をみると、未婚者において、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型の出現率が10%を超える高い水準になっている。また、離別者も、提供的サポート欠如型の孤立に陥る人の比率が10%を超えている。

第三に、世帯類型別に社会的孤立の出現率をみると、高齢期と現役期の単身男性は、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供型サポート欠如型の孤立に陥る人の比率が高い。特に、高齢の単身男性は、これらの孤立指標で出現率が10%を超える高い水準である。また、ひとり親世帯も、社会参加欠如型の孤立に陥る人の比率が高い。

次に、社会的孤立の問題点をみると、以下の点を指摘できる。

第一に、経済的困窮と孤立との関係をみると、会話欠如型、受領的サポート孤立型、提供的サポート欠如型の孤立に陥っている人は、経済的に困窮している人の比率が高い。そして、孤立者は、衣食に関する必需品を購入できない経験や、ライフラインが止められる経験をもつ人の比率が高い。孤立者が経済的困窮に陥ると、支援を求める相手がいないために一層深刻な状況に陥ることが考えられる。

第二に、生きる意欲や自己肯定感の低下と孤立との関係をみると、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型の孤立に陥る人において、生きる意欲や自己肯定感が低い傾向がみられた。さらに、孤立者の方が非孤立者に比べてうつ・不安障害になりやすいと推察される。

第三に、主観的不健康と社会的孤立との関係をみると、会話欠如型、受領的サポート欠如型、提供的サポート欠如型において、孤立者は非孤立者よりも「健康状態がよくない」と回答する人の比率が高い。


(2)社会的孤立への対応としての「伴走型支援」

では、社会的孤立に対して、どのような対応が求められているのだろうか。この点、生活が困窮する孤立者への支援を行う現場から、社会的孤立に対する新たな支援の在り方として、「伴走型支援」が提案されている(奥田・原田、2021)。伴走型支援とは、相談支援の専門職や地域の人々が、孤立者とつながりつづけることを目的としたアプローチであり、従来の「課題解決を目的にしたアプローチ」とは異なる。なお、「伴走型支援」と「課題解決型支援」は対立する概念ではなく、「支援の両輪」である(地域共生社会推進検討会、2019)。

伴走型支援が求められる背景には、孤立している人は、自ら抱えている課題を認識していないことが多いことがある。自らの状況を認識するには、「他者の存在」が必要であり、他者が自らを映す鏡となって、自己の課題を知る。また、生きる意欲も、「誰かのために働く」というように、他者の存在から生じる面がある。

伴走型支援は、孤立者と伴走者が関係性を築くことによって、孤立者が自らの課題を認識して、自己肯定感をもてるようにしていく。時間をかけて関係性を築き、関係性を広げて、別の展開が始まることを待つ。

このような支援を「存在の支援」と呼び、課題解決型支援における経済的自立に向けた「処遇の支援」と区別する。そして、伴走型支援は、支援を受けた者が支援をする側に変わるなど、互酬的関係になっていくことを目指す。他者との関係性の中で生きる力を醸成し、その一方で、自らも社会参加をすることで自己肯定感を確保する。

今後、未婚者や単身世帯の増加によって、孤立する人が増加する可能性がある。人は一人では生きられない。新たな支え合いに向けた取り組みを強化していくことが求められている。

  1. *1
    ワーキングペーパーは、西村幸満(2021)「単身女性の生活保障―家族と雇用に注目して」国立社会保障・人口問題研究所『ワーキングペーパー』No.46である(みずほリサーチ&テクノロジーズ,2021,20)。
  2. *2
    みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)では、「広義」の受領的サポートの定義として、9項目の事柄の全ての設問について「(頼れる人は)いない」あるいは「そのことでは人に頼らない」のいずれかを選択した場合に、「受領的サポート欠如型の孤立者」としている。また、「広義」の「社会参加欠如型の孤立者」の定義として、7項目の事柄のすべての設問について「参加したいができない」あるいは「参加する予定はない」のいずれかを選択した場合に、「社会参加欠如型の孤立者」としている。
  3. *3
    例えば、斎藤(2018:30-44)では、高齢者の社会的孤立に関連している諸問題として、①ソーシャル・サポートの乏しさ、②低所得・住環境の劣悪さ、③生活満足度の低さ・孤独感・抑うつ傾向、④自殺、⑤健康寿命の喪失、⑥犯罪、があげられている。
  4. *4
    等価可処分所得第1十分位とは、世帯規模を調整した等価可処分所得について、収入の低い方から高い方へ順に並べて10等分した十の分位のうち、等価可処分所得が最も低い下位10%の階層をいう。

参考文献

  1. 阿部彩(2014)「包摂社会の中の社会的孤立―他県からの移住者に注目して―」『社会科学研究』第65巻第1号、2014年5月
  2. 奥田知志・稲月正・垣田裕介・堤圭史郎(2014)『生活困窮者への伴走型支援』明石書店
  3. 奥田知志・原田正樹(2021)『伴走型支援』有斐閣
  4. 国立社会保障・人口問題研究所(2019)「2017年社会保障・人口問題基本調査 生活と支え合いに関する調査報告書」『調査研究報告資料第37号』、2019年4月
  5. 斎藤雅茂(2018)『高齢者の社会的孤立と地域福祉』明石書店
  6. 地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会(地域共生社会推進検討会)(2019)『最終とりまとめ』、2019年12月26日
  7. 内閣府(2014)『「絆」と社会サービスに関する調査 結果の概要』
  8. 服部広子・一番ケ瀬康子訳(1974)『老人の家族生活―社会問題として』家政教育社(Townsend,P.(1963).The Family Life of Old People: AnInquiry in East London, Routledge & KeganPaul.)
  9. 藤森克彦(2017)『単身急増社会の希望』日本経済新聞出版社
  10. 藤森克彦(2016)「社会的孤立4類型からみた単身世帯における孤立の実態分析」国立社会保障・人口問題研究所『生活と支え合いに関する調査(2012年)二次利用分析報告書(平成27年度)』所内研究報告, 66
  11. みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)『社会的孤立の実態・要因に関する調査分析等研究事業報告書』(厚生労働省令和2年度社会福祉推進事業)
  12. (PDF/6,200KB)(2022年1月8日閲覧)

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