がれき類のリサイクルに関する取り組み強化の必要性 将来の建設廃棄物の資源循環の姿

2023年2月

サステナビリティコンサルティング第2部

中西 翔太郎

はじめに

建設廃棄物の中で最も発生量が多いがれき類*1については、1990年代、廃棄物の最終処分場のひっ迫への影響や不法投棄などの問題が取りざたされていた。2000年5月の建設リサイクル法制定が契機となり、がれき類のリサイクル率は大幅に上昇し、最終処分場のひっ迫が回避されてきた。現在、がれき類のリサイクル率は99%以上*2となっており、国土交通省の建設リサイクル推進計画(2020年9月策定)において、今後はリサイクルの「質」の向上を重視する姿勢が示されている。

しかし、筆者はリサイクルの「量」の問題は解決しているわけではなく、今後もリサイクルの量を維持していくためには課題が残されていると考える。その理由は、今日のがれき類のリサイクルの多くが道路の基礎(路盤材)利用に偏っている*2ことにある。今後、日本において道路の延伸が多くは見込めない*3中で、道路でのがれき類の受入量は減少が予測される。

本稿ではこうした問題意識のもとで取り組まれた、日本国内における土石系の建設資材の需要量と再生建設資材の供給量の将来推計の事例について紹介したい。

土石系の再生建設資材の需給バランスにかかわる将来推計

中西ら(2020)*4では、2030年度の日本国内における土石系の建設資材の需給バランスを推計している。推計にあたっては我が国の建築用途ごとの延床面積が人口・GDPなどに比例すると仮定し、寿命を迎えた建物について建築需要に応じて更新される量を推計するモデルを構築している。このモデルを用いて、新規着工に伴い必要となる土石系の建設資材の需要量と解体に伴うがれき類の発生量を推計した。

本推計では日本全体の需給バランスだけでなく、がれき類の長距離輸送が困難であることも考慮して、都道府県別での推計も行っている。また、がれき類以外で土石系の再生建設資材の原料となる循環資源として鉄鋼スラグ、石炭灰、下水汚泥のリサイクル量についても対象に含め、がれき類のリサイクル量と合わせて土石系の再生建設資材の供給量として推計している。

推計結果を見ると、2030年度まで日本全体では土石系の建設資材需要が再生建設資材の供給量より大きいままであった。ただし、需給のギャップは年々縮小していき、2030年度には、土石系の建設資材需要量の73%に相当する再生建設資材の供給がある状況になることが示されており、今後もその割合はさらに大きくなることが想定される。また、これを都道府県別に見ると、2030年度に全国18県で県内の土石系の再生建設資材の供給量が建設資材の需要量よりも大きくなるという結果になっている*5

上記の結果から、がれき類やその他の土石系廃棄物のリサイクル率を高い水準で維持するためには、2つの対策が必要になると考えられる。1つは、従来、再生建設資材は路盤材など用途が限られていたところ、より多くの用途を開発する対策が必要になる。もう1つは、日本全国で見ると、需要量よりも供給量のほうが少ないにも関わらず、一部の県では供給過多となっており、需給のバランスを調整するためには、従来よりも広域でのリサイクルを進めていく必要がある。

そして、もしこうした対策が進まない場合には、がれき類やその他の土石系廃棄物のリサイクル量を今の水準で維持できなくなり、その結果、廃棄物の最終処分場のひっ迫問題が再燃することが懸念される。

がれき類のリサイクル品の用途拡大や広域的な利用に向けて

それでは、こうした対策はどの程度検討が進んでいるだろうか。

がれき類のリサイクル用途の拡大方法としては、再生骨材をコンクリート用に利用する事業が挙げられるが、2018年度は約12万トンの利用にとどまっている*2。また、カーボンニュートラル×サーキュラーエコノミーの取り組みとして、がれき類をCO2吸収源として活用する技術についても経済産業省のグリーンイノベーション基金の対象になるなど期待されているが、現段階ではまだ技術開発~実証事業の段階となっている。

広域的な利用に向けては、建設リサイクル推進計画において、再資源化施設と建設現場の距離制限*6を対象に、交通網の発達等の社会情勢の変化に応じた改定の検討を行うことが掲げられている。

さらに、中長期的な観点では、建設廃棄物の発生抑制対策も重要となる。具体的には、建物・資材の長寿命化に資する対策(スケルトンインフィル構造、高強度建材の使用、建材のリユーススキームの構築など)や中高層木造建築の普及によるコンクリート消費抑制などの対策を進めていくことなど新規建設時の対策が考えられる。

このように対策のほとんどは実施がわずかか、検討が始まったばかりの状況にある。がれき類の行き場がなくなってしまう前に、官民が積極的に対策を取り入れていく必要があるだろう。

  1. *1
    産業廃棄物における「がれき類」について、本稿では建設リサイクル法における「コンクリート塊」「アスファルト・コンクリート塊」とほぼ同義として議論を進める。
  2. *2
    国土交通省「建設副産物実態調査」
  3. *3
    道路行政に関し、過去には国土交通省「道路整備五箇年計画」として延長距離の目標が定められていたが、後継の計画にあたる内閣府「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」では延長距離の目標は明示されていない。その代わりに、既存道路の防災能力向上、修繕などの取り組み推進が掲げられている。
  4. *4
    中西、高木、田崎(2020)「都道府県別の土石系循環資源の需給バランスの将来推計」、土木学会論文集G(環境)、76(6)、II_17-II_22
  5. *5
    本推計では県境をまたぐリサイクル品の輸送はできないと仮定した。
  6. *6
    現行ルールでは、骨材を使用する建設現場から再生骨材等の再資源化施設が40km以内の場合には原則利用と定められている。

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