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着実に知見を積み重ねて生まれた、独自のアプローチとシミュレーション技術で、カーボンニュートラルに貢献

プロジェクトの背景

脱炭素社会の実現を加速。水素利活用の普及へ、
独自技術の開発や、政策提言の策定等を支援

カーボンニュートラルの実現に向けて重要なカギとなる「水素」。地球温暖化対策の切り札として、また日本のエネルギー自給率向上や化石燃料の枯渇リスクを解決するクリーンエネルギーとしても注目が急速に高まっています。日本政府も2023年に「水素基本戦略」を大幅改定し、「技術で勝ってビジネスでも勝つ」ための水素産業戦略や安全確保を前提に合理的で適正な環境整備を進めるための水素保安戦略を新たに盛り込む等、水素社会への取り組みは従来の「研究開発」から次の「社会実装」へと歩みを進めつつあります。

なかでも水素を燃料に電気を作る「燃料電池」の開発進展は著しく、燃料電池車や家庭用燃料電池等、日本企業は技術力で世界をリードしてきました。一方で、現在は水素の社会実装に向けた黎明期でもあり、普及に向けた課題も多く残されています。水素エネルギーの実用化に向けては水素を「つくる」、「はこぶ・ためる」、「つかう」、といったすべてにおいてコストの低減やインフラの整備が求められており、技術革新による大幅なコスト削減と普及促進のための政策支援が不可欠です。

このような社会的背景や課題を踏まえ、当社では、シミュレーション技術を活用した燃料電池自動車や定置用燃料電池の技術開発支援に取り組むとともに、日本の水素に関する技術開発戦略の策定支援等も行っています。技術開発支援においては、シミュレーション技術や燃料電池の知見を提供し、お客さまの製品設計や制御手法検討、材料評価、耐久性予測等の支援を実施。技術開発戦略の策定や政策提言支援においては、技術的知見を軸とした独自のアプローチで、水素エネルギーの普及に取り組んでいます。

これまでの取り組み

複雑な物理が絡み合う燃料電池を
丸ごと解析できるシミュレータを開発

水素を電気エネルギーに変える燃料電池は、複数の現象が絡み合う複雑なデバイスです。燃料電池は、触媒界面のナノメートルスケールの構造から、マイクロメートルの電極構造、水素や酸素(空気)および冷却水を流し込むミリメートル程度の幅・高さを持つ流路がそれぞれ数十~数百本集まったセパレータ構造、そしてこれらの部材から構成されるセルと、セルを積層して数十ミリメートルのスタックとなっており、水素や酸素を触媒に供給し、効率よく反応させるために、こうしたマルチスケール性の構造も技術開発の対象の一つです。また、マルチスケール性に加えて、電気化学反応、イオン・電子輸送、流体力学、伝熱等、多種の現象が相互に影響しあうマルチフィジックス性も強く、直接測定できない内部の状態を把握・理解したり効率的に製品開発を進めたりするにはシミュレーションが必要です。

当社では、20年以上前から、車載用および定置用として幅広いアプリケーションへ適用が可能な固体高分子形の燃料電池を対象としたシミュレータ「P-Stack®」を開発してきました。P-Stackは単に複雑な物理を解く解析コードに留まらず、メーカーの設計開発担当者が扱いやすいソフトウェアとなるよう、様々な取り組みを行っています。特に、燃料電池は複雑な構造を持つため、形状データの取り扱いが大きな問題となります。設計用のCADデータは数値計算に向かない細かすぎる構造や見た目では確認できない微細な欠陥等を持つことが多く、そのままでは数値計算用のデータを作成できない課題がありました。このため、P-Stackについては燃料電池の流路構造をコンセプトから簡単に作成できる機能を追加し、計算に必要なメッシュデータの作成まで自動化※して行うことで利便性を大きく高めています。

※3D CADからの自動メッシュ生成は、株式会社エリジオンが開発したアルゴリズムを基に搭載した機能です。

P-Stackでは、ミクロスケールの現象を解く代わりに、詳細な現象をパラメータで代表したマクロスケールの工学モデルを導入して少ない計算コストで実機の挙動を再現する工夫を行うとともに、実験からモデルパラメータを決定する手順を併せてお客さまに提供しています。例えば車載用の燃料電池では1枚の面積が300cm2程度の「セル」を300枚ほど積み重ねて最大出力が100kW程度となる「スタック」にした状態で使用します。従来の3次元流体解析に基づいたアプローチではスタックの挙動を解析するためにスパコンが必要になりますが、スタックの発電性能を精度よく解析しつつ計算量を低減できるようなモデルを考案・実装することで、企業内のワークステーションでおおよそのスタック挙動を解析できるシミュレータを開発することができました。P-Stackでは自動車の運転を想定した非定常な解析も行うことができ、運転中の燃料電池の内部状態を評価できるため、例えば一つの形状に千万円オーダーの費用がかかるとされる金型作成の回数を減らして試作コストを抑えたり、開発期間を短縮したりすることができます。

現在は国内の主要な燃料電池関連企業の多くにP-Stackを導入いただいており、燃料電池の専門家・開発パートナーとしてご相談をいただいています。今後、燃料電池には車載用として注目される大型トラックで運転時間50,000時間、定置用で15年の耐久性が求められ、実験が難しい長期の劣化挙動をシミュレーションで予測するニーズが高まると考えられます。このような課題に対しても、燃料電池を丸ごと解析できるP-Stackやこれまでの開発・モデリングの知見をいかして貢献していきます。

燃料電池のマルチスケール性
固体高分子形燃料電池シミュレータ「P-Stack®」による解析イメージ

現在とこれからの取り組み

「技術開発支援」と「技術調査」。
二本柱の取り組みで課題解決に挑む

P-Stackをはじめ、「技術開発支援」においては、製造業やエネルギーといった国内主要企業や大学等の研究機関に、独自開発したソフトウェアの提供やモデル開発といったサービスを提供してきました。こうした「技術開発支援」の取り組みは、単にクリーンエネルギーの実用化によるカーボンニュートラルへの貢献という観点だけでなく、日本の産業競争力の維持・発展という観点からも重要だと考えており、企業や産業ごとの課題解決はもちろん、その先にある社会全体の課題解決につなげるために、水素エネルギーの黎明期である20年以上前から着実に取り組みを積み重ねています。

一方、「技術調査」においては、官公庁への政策提言・技術開発戦略の策定支援、民間企業への市場調査や技術動向調査、実証支援等のサービスを提供しており、官民双方への支援を通じて水素・燃料電池、その他脱炭素燃料の普及拡大に貢献しています。また、国の技術開発戦略の策定においては、長らく業界に貢献してきた知見をもとに、産学官の主要プレーヤーと緊密に連携し、技術目標や研究開発指針を示したロードマップを策定することで日本の産業競争力強化に貢献。近年の事例としては、業界団体と共同でNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業に参画し、水素サプライチェーンの最適化をめざした水素輸送シミュレーションモデル構築に取り組んでいます。

水素社会への移行や転換には、経済性の改善はもちろん、新技術に対する成熟度の向上や普及に向けた制度設計等の課題を解決する必要があります。そのため、技術開発支援においては、自社開発のシミュレータによるお客さまの製品の競争力向上に、技術調査においては官民双方への多角的な支援による課題解決に大きく貢献していきます。

担当者の思い

水素社会の実現を成し遂げるべく、
お客さまの技術開発を支えていく

高山 務

  • サイエンスソリューション部
  • デジタルエンジニアリングチーム

シミュレーションによる「技術開発支援」の分野は、サイエンスソリューション部が長年培ってきた技術です。世界的な企業や大学等で研究開発支援を行ってきた経験も含めて、着実な知見の積み重ねを行った結果が、高い技術力につながっていると自負しています。

独自のシミュレーション技術の開発においては、実際の燃料電池の細かい形状の取り扱いや実験と合わせた検証等の難しい課題に直面することもありましたが、特徴のある形状パターン一つひとつの詳細な検討や3Dデータのハンドリングで高度な技術を持つ企業との協業、燃料電池の評価・分析を行う企業との共同研究等の様々な取り組みを行い、プロダクトの実用化までこぎつけました。

今後は、材料や部品、セル、スタック、補機を含めたシステム等、様々な階層をモデル化し、あらかじめ全体を最適化しておいてから予測に基づいて実機を作り上げる「モデルベース開発」に一層取り組んでいきたいと考えています。すでに研究開発の加速やコスト低減も様々な業界で進められていますが、水素社会の実現に貢献できるようなインパクトの大きい成果を、引き続き当社から生み出していきたいです。

適切な情報の発信を通じて、
真の「普及拡大」に貢献したい。

仮屋 夏樹

  • サイエンスソリューション部
  • デジタルエンジニアリングチーム

カーボンニュートラル実現は非常にチャレンジングな目標であり、その実現に必要な水素をはじめとした新エネルギーの多くは、現状、普及に向けた黎明期です。技術的な視点から見ると、これらの導入は一朝一夕に実現されるものではなく、着実な知見の獲得と課題の解決の先にようやく到達できるものであると理解しています。

昨今、カーボンニュートラルには急速な注目が集まっています。この新しい考え方に対しては、時に過剰な期待がかけられたり、展開が予想通りに進まず悲観的に捉えられたりする傾向も見られますが、技術開発は着実な前進を要するものであり、こうした過剰期待・悲観は技術の普及発展にはマイナスに影響しかねません。適切な情報の浸透や、多様なプレーヤーの思いを汲んだ技術開発戦略の策定等、お客さまへの支援に当社の知見や技術をいかして取り組むことで普及に貢献していきたいです。

※社名、肩書き、所属は記事制作当時のものです。

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