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都市全体を対象とした
防災・減災シミュレーションの研究・開発を推進

プロジェクトの背景

激甚化・頻発化する自然災害により、都市の脆弱性が浮き彫りに

都市における災害リスクは、年々複雑化・多様化しています。気候変動に伴う集中豪雨や大型台風の頻発、さらには南海トラフ地震や首都直下型地震等の発生が懸念されている中、都市の脆弱性が浮き彫りになっています。特に、都市は人・モノ・情報・インフラが高度に集積しており、一度災害が発生すると、生活・経済・行政機能に大きな影響を及ぼしかねません。

これまでの防災対策は、特定の施設や個別のエリアに対するリスク評価が中心であり、都市全体の複雑な構造や人の流れを加味した対応には限界がありました。これを乗り越えるため、デジタル空間上に再現した都市(都市デジタルツイン)を活用した防災・減災が世界的に進んでいます。日本においても、「PLATEAU」や国土交通データプラットフォーム等の都市デジタルツインを構築するための基盤が整備されつつあり、災害対策や生活の質の向上に資する社会実装が期待されています。

その取り組みはまだ始まったばかりです。例えば2025年の大阪・関西万博では、人が大勢集まる空間における気候変動による熱中症リスクについて、仮想空間上に再現された会場で5メートル四方ごとにリスクを予測・可視化する取り組みが実施されました。この例のように、リアルな都市課題に対するシミュレーション技術の社会実装が進みつつあり、都市全体を対象とした防災・減災に資する高度な災害シミュレーション(防災・減災シミュレーション)の重要性が急速に高まっているのです。

提供できる価値

見えなかったリスクを多角的にシミュレートし、
災害による被害の最小化をめざす

当社が取り組んでいる防災・減災シミュレーションの本質的な価値は、未来のリスクを「見える化」することにあります。都市を仮想空間上で再現し、そこで発生しうる災害を多角的にシミュレートすることで、従来見えなかったリスクを事前に把握し対策を行うことで、被害の最小化につなげることが可能になります。

自治体では、ハザードマップの高度化や、より現実的な避難計画の策定を支援するツールとして、インフラ事業者では、道路・下水・通信等のライフライン維持に向けたシナリオ検証として、企業や施設管理者では、BCP(事業継続計画)策定や災害時の対応手順確認に活用されることをめざしています。

また、都市デジタルツインは、単なる危機管理の手段にとどまりません。都市づくり全体の質を高める視点として、都市計画・環境政策・観光・地域活性といった他分野とも連携可能なプラットフォームとなりうるものです。

課題解決へのアプローチ

都市デジタルツインを活用し、
現場で役立つシミュレーション技術の実装へ

当社は、理化学研究所をはじめとする官民学連携で発足した「都市丸ごとのシミュレーション技術研究組合」に、2019年の発足当初から理事として参画し、都市全体のリスクを統合的に予測・評価するための研究開発に取り組んでいます。

本技術研究組合では、国土交通省が推進する3D都市モデルPLATEAUをはじめとする各種データを自動的に変換・結合し、デジタル空間上に地形、建物、インフラ、気象、人口分布といった多様なレイヤーを統合する都市デジタルツインの実装を推進しています。

当社は、このデジタルツインを活用し、地震、浸水、津波等、多様な災害に対する発生や被害の予測・評価を行うため、それぞれの災害に適したシミュレーション技術の開発を進めています。都市の構造や人の流れといった要素も加味することで、より高精度なリスク評価の実現をめざしています。また、都市の防災計画や避難計画等、現場で直接役立つシミュレーション技術の実装にも注力しています。そのため、技術の専門家だけでなく、自治体職員や民間事業者といった現場の方々等、様々な立場の利用者が扱いやすいことを意識した設計としています。単なるシミュレーションの実施にとどまらず、長年培ってきたシミュレータ開発の経験をいかし、都市に関する多様なデータとシミュレーション技術、そしてそれを利用するユーザーを結びつける役割を果たしていきます。

都市デジタルツインを活用した防災・減災シミュレーションのイメージ

取り組みの詳細

都市防災シミュレーションを支える3つの技術

都市デジタルツインは、現実世界の都市環境を仮想空間上で再現する技術であり、これにより都市内の構造や状況を可視化し、分析・予測・最適化を行うことが可能になります。都市デジタルツインを活用するためには様々な技術が必要となり、そのための研究開発も進んでいます。当社が利用している、あるいは当社が開発してきた都市防災シミュレーションに資する技術の例を以下に紹介します。

①データ統合基盤:Data Processing Platform(DPP)

近年、都市やインフラに関する様々なデータが公開されていますが、それらのデータのフォーマットは必ずしも統一されていません。都市のデジタルツインを効率的に構築するには、多様かつ異種フォーマットのデータを統合的に扱える基盤が不可欠です。当社を含む技術研究組合で利用している「DPP」は、理化学研究所が開発したプラットフォームであり、各種オープンデータや多様なフォーマットのデータを柔軟に統合・変換できる仕組みを備えています。利用者が独自のライブラリを実装できるカスタマイズ性の高さが特長で、技術研究組合内の研究開発においても、各社が様々な機能を追加実装しています。

②都市型水害解析ソフトウェア:MC-FLOOD

台風等の集中豪雨やゲリラ豪雨の増加に伴い、都市部における水害の予測が重要になってきています。当部では「都市型水害」に関する受託解析を十数年にわたり実施してきており、この経験やノウハウをベースとして都市型水害解析ソフトウェア「MC-FLOOD」を開発してきました。MC-FLOODは、図に示すように大きく5つの解析モデルから構成されており、下水道・河川・地表面を統合した解析が可能です。まず、降雨損失モデルと表面流出モデルを使って下水道に流入する雨の量を算定します。さらに、地表面氾濫解析モデル、下水道管路流解析モデル、河川流解析モデルにより、下水道・河川・地表面への流入量等を計算し、都市部における浸水域や浸水深を算定します。必要に応じて、河川・地表面や下水道・地表面のようにモデル構成を選択できます。

MC-FLOODは、数千km2にわたる河川の流域から、数千haの下水処理区画の小流域まで幅広い範囲を対象としています。また、降雨開始・浸水発生・浸水解消の時系列に沿った、数日から1週間程度の解析が可能です。データの有無、計算コストおよび必要な予測精度等、ユーザーの状況に合わせたシミュレーションを実施できます。

MC-FLOODの概要
MC-FLOODによる解析例 「下水道施設の耐水化計画および対策立案に関する手引き」資料編 p.337-359
公益財団法人 日本下水道新技術機構 2021年3月より引用

③津波・高潮シミュレータ:Q-Wave®

津波・高潮の挙動をシミュレーションするため、当部では「Q-Wave®」を開発しています。日本全域の海沿いを対象にでき、津波であれば数時間、台風による高潮であれば1週間程度の期間を想定した解析が可能です。元々は、地震による津波の影響評価を日本全国に対して一括で実施するという目的で開発したソフトウェアであり、BCM(Building Cube Method)と呼ばれる格子細分化手法を用いています。本手法は従来のネスティング手法に変わる手法で、計算メッシュの自由度が高く海岸線に合わせて詳細メッシュを配置することが可能なため、広い範囲の津波解析を短時間で実施することが可能です。

Q-Wave®の特長は、地形、津波断層モデル、台風データ等のデータセットが用意されているため、導入したユーザーがすぐに計算を始められる点、津波や高潮の高度かつ専門的な計算処理を、直感的に操作できるGUI上で容易に実行できる点にあります。これにより、港湾や海岸を管理する実務担当者でも、実際の業務で活用することが可能です。Q-Wave®の計算例として2019年の台風19号の再現計算を行い、図に示すように広範囲に及ぶ複数の港湾の高潮予測が一度の計算で可能であることを示しました。この事例は当社の技報でも公開しています。

Q-Wave®の操作画面例
Q-Wave®の計算結果と観測値の比較(2019年台風19号の高潮解析)

担当者の思い

眞崎 浩一

  • サイエンスソリューション部

都市デジタルツインの社会実装を進め、
最先端技術で地域課題の解決に貢献したい

現在、国や自治体が公開するデータが増えてきています。しかし、都市デジタルツインによる課題解決や価値創出を実際に進めるにあたっては、公開されている多くのデータを単に集めたり、見栄えが良いように可視化したりするだけでは不十分です。私が自治体にヒアリングに行った際にも、「次は、公開したデータを活用して具体的に課題を解決していくフェーズである」と伺いました。このように現場においては、具体的な活用手段の構築が求められています。

MC-FLOODやQ-Wave®のような防災シミュレーションは、その具体的な活用手段の一つです。防災シミュレーションを活用した災害発生時のリアルタイムな状況把握や、事前の被害予測による対策立案は、わが国のような災害多発国のリスク軽減に大きく貢献できるはずです。一方で、防災や減災に活用するための都市デジタルツインの構築は、まだまだ課題も多く、データのフォーマットを確認したり、変換のためのプログラムを作成したりする作業は非常に地味な作業です。例えば、不足しているデータをどのように補うか、不確かな要素に対してどの程度の仮定を置くか等を検討する必要があります。さらに、災害が実際に起きていない状況で、どのようにその精度を確認するかという問題もあります。しかしながら、このような研究開発の課題を乗り越えた先の実りを信じて、一歩ずつ社会実装を進めていくつもりです。

また、防災・減災以外にも、少子高齢化や人口減少を背景とした地域課題、交通やインフラの最適化、新しいビジネスの創出等、現代の地方自治体が直面する課題は非常に複雑です。当社には、様々な分野を専門とする人材が在籍しています。私一人では難しくても、他の専門家と連携し、地域や部門の壁を超えて知恵を持ち寄ることで、都市デジタルツインによる「持続可能で活力ある地域づくり」に挑戦していきます。

※社名、肩書き、所属は記事制作当時のものです。

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