スマートウエルネスシティ地域活性化総合特別区域協議会
国立大学法人筑波大学
みずほ情報総研株式会社
株式会社つくばウエルネスリサーチ
凸版印刷株式会社
筑波大学、みずほ情報総研、つくばウエルネスリサーチ、凸版印刷は、2014年12月から2015年7月の期間、スマートウエルネスシティ総合特区に参加する6市(福島県伊達市、栃木県大田原市、千葉県浦安市、新潟県見附市、大阪府高石市、岡山県岡山市)とともに、多数の市民を健康づくりに誘引できるインセンティブ制度の大規模実証(参加者数7,622人)を行い、結果を取りまとめましたのでご案内いたします。
「健幸ポイント」によるインセンティブ制度は、各市で提供される健康づくりなどのプログラムに参加・継続することや、日々の健康努力と実践したことによる成果(健康状態の改善)に基づき、最大24,000pt/年(24,000円相当)のポイントが付与される仕組みです。プログラムは自治体が主体で行う健康教室のほかにも、民間企業が行う健康サービスも対象とし、健康無関心層も参加しやすいよう6市合計200程度の対象プログラムを用意しました。貯まったポイントは、Pontaポイント、地域商品券や全国商品券、社会貢献(寄付)に交換することができます。
本実証を通じて、インセンティブの活用により、運動無関心層および運動不充分層に働きかけると、健康に関する行動変容を促すきっかけづくりに有効であることがわかりました。今後は、データ蓄積の期間を継続させて追跡調査を行うとともに、インセンティブがどの程度行動変容に影響を与えているかについて詳細に検討してまいります。
本プロジェクトはこのたび、総務省の2015年度社会実証に採択されました。昨年度に引き続き、文部科学省の補助事業に採択された自治体との協働、厚生労働省の調査研究を活用して、社会的意義が高い社会実証を推進いたします。
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【関連する事業(調査研究)】
省庁 | 事業名 | |
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総務省 |
2014年度 |
ICT健康モデル(予防)の確立に向けた地方型地域活性化モデル等に関する実証 |
2015年度 |
ICT健康モデル(予防)の確立に向けた地方型地域活性化モデルに関する実証 |
|
厚生労働省 |
2014年度 |
インセンティブの制度化を見据えた健康ポイント等の予防事業の類型化のための調査検討 |
文部科学省 |
2014年度 |
健康づくり無関心層も含めた多くの国民がスポーツ・運動ライフ化を促進できるインセンティブのあり方 |
2015年度 |
健康無関心層の行動変容の促進、および成果向上のインセンティブ付スポーツ運動プログラムの実証 |
考察
参加者の約77%は運動無関心層と運動不充分層
- 参加者全体の39.3%が運動無関心層、37.3%が運動不充分層であり、この2グループで全体の76.6%を占めた。
- 今回の実証では、インセンティブとして最大で年間24,000円相当のポイントが得られるようなプログラムとしたが、これにより、普段、自治体の運動教室などに参加していない運動無関心層、運動不充分層の参加を促せたと考えられる。
参加の決め手となった情報源は、全体の約42%が「口コミ」
- 参加者は様々な広報媒体を通じて情報を入手しながらも、参加を決める一番の決め手は口コミであった(全体の約42%)。
- インセンティブが獲得できるというベネフィットを強調した情報を、多様な情報媒体を用いて広範囲に広報活動を行ったことで、本プロジェクトの存在が広く認知され、さらには、その情報が口コミにより拡散されたことによって、運動による健康づくりに関心の低い層にも情報が届いた可能性がある。
参加者の歩数は、5カ月目までに約2,000歩/日増加し、国の推奨活動量8,000歩/日を上回った
- 事業開始時における参加者の平均歩数は、全国調査の平均値とほぼ同等の約6,200歩/日であったが、参加5カ月目に8,000歩/日を上回る結果となった。8,000歩/日は国が推奨する活動量で、生活習慣病の予防に有効であるとされており、6市全体の平均歩数が、事業参加後にこの基準を上回ったことは、インセンティブが運動を継続する動機づけとして有効であったと考えられる。
実証の結果から、インセンティブを活用した本プロジェクトは、運動無関心層を含む多くの市民に対して、運動による健康づくりを開始するきっかけになることに加え、その後の運動量の向上を促す可能性が示された。本プロジェクトで活用したインセンティブの特徴は、獲得できるインセンティブ額が最大で年間24,000円相当と自治体が実施する従来のインセンティブ事業に比べ比較的高いこと、および貯めたポイントを等価で商品券や共通ポイントに交換できることであり、このようなインセンティブが運動の開始や継続的な実施の動機付けに寄与したと推察される。
実証事業 調査概要
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調査方法 |
アンケート調査(集合調査法、郵送調査法) |
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調査期間 |
2014年12月~2015年7月 |
対象地域 (実証事業参加自治体) |
福島県伊達市、栃木県大田原市、千葉県浦安市、新潟県見附市、大阪府高石市、岡山県岡山市 |
調査対象 (実証事業参加者) |
上記6市に在住する40歳以上の中高齢者7,622人
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主な調査項目 |
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参加者の募集方法 |
無料で参加できること、および年間最大で年間24,000円相当のポイントが獲得可能であることを盛り込んだ募集広告を作成し、多くの市民が本プロジェクトの存在を認知するように各市の特性に合わせた多様な広報活動を実施(広報誌、チラシ、のぼり、新聞、TVなど) |
調査・分析結果
運動無関心層の参加を促す
1.1. 運動の実施状況からみた3グループの定義
- 本プロジェクトに運動無関心層がどの程度参加したかを明らかにするため、事業開始時に歩数計で計測した歩数とアンケートで調査したスポーツ・運動教室への参加状況から次の3グループに分類した。
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(1)「運動無関心層」 |
現在、国の推奨活動量(8,000歩/日)を満たしておらず、自治体/民間のスポーツ・運動教室に参加していない者 |
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(2)「運動不充分層」 |
現在、国の推奨活動量(8,000歩/日)を満たしていないが、自治体/民間のスポーツ・運動教室に参加している者 |
(3)「運動充分層」 |
現在、国の推奨活動量(8,000歩/日)を満たしている者 |
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分類 | 運動無関心層 | 運動不充分層 | 運運動充分層 |
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推奨活動量 |
満たしていない |
満たしている |
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スポーツ・運動教室 |
参加していない |
参加している |
- |
1.2. 参加者の約77%は運動無関心層と運動不充分層
- 参加者全体の39.3%が運動無関心層、37.3%が運動不充分層であり、この2グループで全体の76.6%を占めた。

参加の決め手となった情報源は、全体の約42%が「口コミ」
- 参加の決め手となった情報源を聞いたところ、全体の42.1%が「口コミ」と回答し、次いで「市の広報誌(17.1%)」「チラシ(14.6%)」の順であった。

参加者の歩数は、5カ月目までに約2,000歩/日増加し、国の推奨活動量8,000歩/日を上回る
- 参加開始1週間の平均歩数をベースラインとし、5カ月目までの平均歩数の推移を調べた。その結果、6市全体の平均歩数は、ベースラインの6,194歩/日から5カ月目で8,174歩/日となり、約2,000歩/日の増加が認められた。

(参加自治体のコメント)
- 伊達市
昨年度は短期間で1,000人が参加するという、これまで実施してきた事業にはない人数を集客し、今年度500人の追加募集も順調にスタートしている。市内商店街の協力も得、各商店にのぼり旗を設置してPRしてきたが、中高年女性の参加に効果的であったと思われる。また、参加された市民の歩数が4カ月後には平均で1,000歩増加し、普段車やバイクを利用している人の6割が、歩く機会を増やす心がけをするようになり、意識の変容も見られた。ポイント付与によるインセンティブへの市民の関心の高さと、意識・行動の変容につながる契機として、平成27年度も6市連携しながら取り組んでいきたい。 - 大田原市
参加者の様子を見ると、潜在的に「健康づくりをやりたい」というニーズが有り、健康づくりを始める理由を必要としていた市民が多かったではないかと感じている。健康づくり無関心層の行動変容には、こういった「きっかけづくり」が重要であり、健幸ポイントというインセンティブが上手く市民の気持ちと合致し、意欲を具現化させたのではないかと考えている。 - 浦安市
若いと言われる本市においても、今後の急速な高齢化の進展は例外ではない。歩くことを基本としたこの取り組みは高齢者にもやさしく、コンパクトで平坦な市の特性にも合い、市民が健康づくりを考え実践するよい機会となった。引き続き市の施策と連携を図りながら実証事業を推進し、さらに多くの市民が健康に関心を持ち行動に移すことで、健幸なまちへと変わっていくことを期待している。 - 見附市
開始直後は思っていたよりも申込のペースが鈍かったが、1カ月程度経過した頃から口コミで広がり参加者が徐々に増えていった。また、歩数計を携行して定期的にデータを取込むだけという手軽さから、健康づくりを実施してこなかった層を一定程度取込むことができた。今後は、参加者が実際に歩数を増やす等、自らの健康意識を高めるための方策に産学官連携で取り組みたい。 - 高石市
本市では健康施策としてこれまで様々に取り組んできたが、この健幸ポイントプロジェクトを機に健康施策の参加が飛躍的に伸び、驚きを感じている。無関心層の行動変容の効果、参加動機に口コミが働いたことなど、様々な発見があった。また、健康施策の参加が増えたことで市民の交流機会が広がったことは大きな副産物であると考えている。 - 岡山市
昨年度は定員2,000人に対し約3,450人の申込みが、今年度は定員1,000人に対し約1,450人の申込みがあり、市民の健康づくりに対する意識の高さを認識した。運動に無関心な方や不十分な方が申込者の一定割合を占めており、ポイント付与がインセンティブとして一定の効果があったと考えられる。また参加者の歩数は当初に比べて増加傾向にあり、行動変容が見られる。今後は、この行動変容が継続するかどうか、更には健康状態や医療費にどのような効果が見られるか注視していきたい。
本件に関するお問い合わせ
SWC総合特区協議会事務局
株式会社つくばウエルネスリサーチ内
(担当:福林)
国立大学法人筑波大学
人間総合科学研究科 久野研究室
(担当:田辺、横山)
凸版印刷株式会社
広報部
(担当:島田、古田)