みずほ情報総研株式会社
みずほ情報総研株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:向井 康眞)は、全国の従業員51名以上の企業に勤める経営者・役員および会社員のうち、事業戦略や経営戦略、BCPの策定に関与する人(722名)を対象に「新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCPに関する調査」を実施し、このたび調査報告書としてまとめましたのでご案内いたします。
世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、多くの企業では否応なしに事業継続のための対策に取り組まざるを得ない状況となり、感染症を想定した事業継続計画(BCP)の策定ニーズは高まりを見せています。加えて近年、地震や台風・洪水などによる被害も頻発しており、自然災害を想定したBCPも必要不可欠であり、さまざまなリスクに対応できる包括的なBCP(オールハザード型BCP)を考える必要性がこれまで以上に高くなってきています。
また、今回のCOVID-19感染拡大においては、全世界で長期間にわたって事業が停止または停滞する事態に陥っており、今後BCPに求められる役割は、事象発生時の業務停止からの早期復旧という本来的な目的のみならず、事業継続性を確保するためにサプライチェーンをどのように再設計するかといった、経営戦略や事業戦略と密接不可分なものになっていくと考えられます。
みずほ情報総研では、COVID-19感染拡大によりBCPに求められる役割や内容の変化を把握するため、企業が受けた影響や実施した対策と効果、BCPの策定状況や想定リスク、Withコロナ/Afterコロナにおける取り組み方針について調査を実施しました。主な調査結果は以下のとおりです。
- 新型コロナウイルス感染症の流行を受けて行った対策のうち、事業を継続するうえで効果的だった対策は、「オンライン会議システム」(84.4%)、次いで「テレワーク」(78.7%)であった。また、「海外生産拠点の切り替え」(76%)、「物流経路・方法の変更」(75.7%)のほか、「新規事業への参入」(73.2%)、「原材料・部材在庫・商品在庫の積み増し」(70.9%)といった、事業戦略レベルでのドラスティックな対応についても効果的だったと評価する意見が多かった。
- 全体の4割弱がコロナ禍以前からBCPを策定しており、従業員数が多い企業ほど策定済みの割合が高い傾向がみられた。従業員数「5001名以上」で61.1%が策定済みであったのに対し、「51~100名」では策定済みは24.4%であった。
- コロナ禍以前に策定されていたBCPにおける想定リスクは、「大規模地震」が91.2%と最も高く、次いで「風水害」(71.0%)、「感染症」(42.8%)の順であった。
- コロナ禍においてBCPが「効果的に機能した」との回答は16.7%にとどまり、機能しなかったとの回答は27.6%であった。
- BCP策定済みと回答した人のうち約8割がBCPの見直しが必要だと考えており、「すぐにでも見直す想定である」との回答は、従業員数「5001名以上」で36.6%であった。
アンケート調査の概要
新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCPに関する調査
調査対象 |
全国の従業員51名以上の企業に勤める経営者・役員および会社員のうち、課長・次長クラス以上の人で、かつ、事業戦略や経営戦略、BCPの策定に関与する(または意見できる立場にある)人 |
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調査方法 |
インターネットによるアンケート調査 |
調査期間 |
2020年7月11日~7月13日 |
有効回答数 |
事業戦略・経営戦略に関与している(または意見できる)人:361名 |
調査項目 |
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調査・分析結果
実施した対策の効果
- 新型コロナウイルス感染症の流行を受けて行った対策のうち、事業を継続するうえで「非常に効果的だった」「概ね効果的だった」と評価された対策は、「オンライン会議システム」(合計84.4%)、次いで「テレワーク」(合計78.7%)、「時差出勤」(合計74.7%)であった。
- また、「海外生産拠点の切り替え」(合計76%)や「物流経路・方法の変更」(合計75.7%)、「原材料・部材在庫・商品在庫の積み増し」(合計70.9%)、「新規事業への参入」(合計73.2%)といった、事業戦略レベルでのドラスティックな対応についても効果的だったと評価する意見が多かった。
BCPの策定状況
- 全体の4割弱(39.2%)がコロナ禍以前からBCPを策定しており、従業員数が多い企業ほど策定済みの割合が高い傾向がみられた。「5001名以上」で61.1%が策定済みであったのに対し、「51~100名」では策定済みは24.4%であった。
- BCPを「策定していない」との回答は、従業員数が少ない企業に多く、「51~100名」の企業で35.8%であったのに対し、「1001名~5000名」の企業ではわずか3.4%と、10倍以上の差がみられた。
BCPにおける想定リスク
- コロナ禍以前に策定されていたBCPにおける想定リスクは、「大規模地震」が91.2%と最も高く、次いで「風水害」(71.0%)、「感染症」(42.8%)であった。
- コロナ禍により新たに策定されたBCPの想定リスクは、「感染症」(61.3%)に限定されておらず、「大規模地震」(59.1%)や「風水害」(51.1%)など、他のリスクも想定されていることが確認できた。
コロナ対策におけるBCPの効果
- BCPを策定済みであると回答した人のうち、コロナ禍においてBCPが「効果的に機能した」との回答は16.7%にとどまった。
- 一方、「あまり機能しなかった」(23.3%)、「まったく機能しなかった」(4.3%)と、BCPが機能しなかったとの回答は、合わせて27.6%であった。BCPが機能しなかった理由としては、自社BCPにおける想定・前提と異なっていたためとの意見が多くを占めた。
考察
BCPは、「事象特定型」から「オールハザード型」へ
- コロナ禍において自社のBCPが「効果的に機能した」との回答は約17%にとどまり、「機能しなかった」との評価が約28%にのぼる。BCPが機能しなかった理由としては、「自社BCPでは想定外であった」とする意見が多くを占め、全世界規模で長期的に影響を及ぼす新型コロナウイルス感染症に対して、既存のBCPでは十分な対応を講じることが困難であったことが推察される。
- 企業においては、既存のBCPを見直し、さまざまなリスクに包括的に対応できる「オールハザード型」へと転換していく必要性が従来以上に高まっているといえる。本調査の結果からも、今回のコロナ禍を踏まえてBCPを策定・見直しした企業において感染症以外のリスクにも検討の対象を拡大している傾向が明らかになっており、オールハザード型を意識したBCPの策定が進みつつある表れではないかと考える。
中長期的な対応と企業戦略としての「レジリエンス」が課題
- COVID-19のパンデミックにより、グローバルレベルでサプライチェーンの混乱に見舞われた企業も少なくない。こうした状況において、一部の企業では、「海外生産拠点の切り替え」「物流経路・方法の変更」「原材料・部材在庫・商品在庫の積み増し」「新規事業への参入」といった企業戦略そのものに大きな影響を及ぼす取り組みに着手している。こうした企業の70%以上が自社の対応を効果的だったと評価しており、多くの企業においても中長期的視点から取り組むべき課題であると考える。
- 企業が直面するリスクはますます多様化している。今後も不測の事態に直面した状況において、これまでの常識や基準によらない判断が求められることになる。企業は、危機に直面した際、これに柔軟に対応し、最終的には成長につなげるために、危機的な事象の発生への対応力・回復力・弾力性を意味する「レジリエンス」の概念を企業戦略に組み込んでいくことが求められる。
本調査の詳細については、こちらをご覧ください。
新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCPに関する調査
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佐久間 敦、鈴木 大介
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