社会政策コンサルティング部 コンサルタント 古川 みどり
調査結果(続き)
(3)タイプA企業の特徴
次に、タイプA企業の特徴を、該当企業数の最も多い企業類型であるタイプGと比較して述べる。
[1] 企業属性や従業員構成(図表10)
業種に関して、タイプAでは「医療・福祉」「運輸業、郵便業」が多く、職種では「技術職(建設・不動産・工場・運輸)」「専門職(医療・福祉)」が多い。従業員構成に関しては、「最も正社員の人数が多い世代」として「40代後半以降(7)」が60.0%を占めたこと、また、正社員の過不足に関して「どの世代についても不足していない」とした回答が1割を超え14.7%となったことが特徴的である。
図表10 タイプA 企業の特徴(企業属性や従業員構成)

[2] 人事制度(図表11)
「役職」や「人事評価の仕組み」、「賃金の決定方法」等多くの観点において、定年前と同じ仕組みや方法が適用されている傾向にある。
図表11 タイプA 企業の特徴(人事制度)

[3] 定年後再雇用者の期待役割(図表12)
定年前後の「期待役割」の変化について、「全く変わらない」はタイプGでは2.0%であるところタイプAでは61.3%と6割を超えた。前述のとおり、タイプAは業務の内容や働き方に関して定年前後で変化がないことを基準に抽出された企業類型だが、この結果からは、企業が定年後再雇用者に期待する「役割」に関してもタイプAでは定年前後で変化がない傾向にあることがわかる。なお、定年後の期待役割の内容に関しては、「知識、技術、技能の伝承」(21.1%)、「後輩の育成」(19.3%)、「担当者として成果を出すこと」(16.6%)の順に多いが、特に「担当者として成果を出すこと」でタイプG(9.9%)を7ポイント近く上回っていることが特徴的である。
図表12 タイプA 企業の特徴(定年後再雇用者の期待役割)

[4] 定年後再雇用者が企業から受けている評価(図表13)
定年後再雇用者を活用するメリットは「蓄積した知識、技術、技能を伝承できる」(21.6%)、「後輩の育成ができる」(16.5%)、「担当者として成果を出すことができる」(15.2%)の順に多く、特に「担当者として成果を出すことができる」でタイプG(11.2%)を4ポイント上回っている。人材として企業から受けている評価を見ると、タイプAでは「戦力である」が93.1%と9割を超えた。
図表13 タイプA 企業の特徴(定年後再雇用者が企業から受けている評価)

[5] 定年後再雇用者の活用に対する考え方(図表14)
本調査では、定年後再雇用者の賃金設定にあたっての考え方を探る設問を4つ設けたが、タイプAとタイプGの間で特に大きな違いが見られた項目として次の2点が挙げられる。まず、「若年期の社員から定年後再雇用者まで一体的な賃金制度として考えるべきである」という考え方に対し、「そう思う」と答えた(8)のはタイプGでは48.2%であったが、タイプAにおいては63.2%と半数を超えた。また、「賃金の原資が限られている以上、現役社員の賃金を維持するために定年後再雇用者の賃金を下げてもやむを得ない」という考え方に関しては、「そう思う」と答えたのはタイプGでは64.1%であるところ、タイプAにおいては48.8%であった。
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