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指名委員会等設置会社への移行による「一段高い水準のガバナンス」の実践(1/4)

社会動向レポート

コンサルティング第2部
コンサルタント 上野 剛幸
コンサルタント 長 樹生

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指名委員会等設置会社への移行による「一段高い水準のガバナンス」の実践(1/4)(PDF/854KB)

今般の東証再編により、上場企業のコーポレート・ガバナンスの強化はより切迫感が強くなっている。本稿では、近年の投資家の要請と政府の方針を踏まえ、現在80社程度に留まる「指名委員会等設置会社」の導入によるコーポレート・ガバナンス強化の効果を整理する。

1はじめに

近年、2015年のコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)の制定をはじめ、投資家と企業の対話が促されている。直近では、2022年4月に東京証券取引所の市場区分見直しが迫っており、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3区分に再編される。特に、「プライム」市場は改訂CGコードに準拠した「一段高い水準のガバナンス」が求められ、企業の対応が急務な状況である。このような投資家と企業の対話を促す一連の潮流は、企業に対して最上位市場への上場要件を盾に、実効性のあるコーポレート・ガバナンス改革を迫るものと捉えることができる。

本論は、コーポレート・ガバナンスの骨格を成す「機関設計」に関する各類型を改めて整理し、今日求められる高いガバナンス水準を形式的に充足する「指名委員会等設置会社」の優位性を紹介するとともに、移行を検討する際に留意すべきポイントについて論じる。

2機関設計の分類

会社法では、現在、公開会社かつ大会社においては、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社の3種類の形態が認められている(図表1)。


図表1 機関設計の分類

図表1

※1 会計監査人は省略した
※2 厳密には、取締役会は株主総会議案の決定を通じて、取締役候補者の指名や取締役報酬の総枠の提案が可能であり、取締役の報酬は株主総会が定めた総枠の範囲内で、取締役会(または取締役会がさらに委任した取締役)が決定する
(資料)会社法をもとにみずほリサーチ&テクノロジーズ作成


(1)監査役会設置会社

監査役会設置会社は、取締役会から独立した監査役会により、取締役の職務執行に対する監査を行う機関設計の形態である(図表2)。


図表2 監査役会設置会社の機関設計

図表2

(資料)会社法、BUSINESS LAWYERS「監査役会・監査委員会・監査等委員会とは」(2016.12.26)をもとにみずほリサーチ&テクノロジーズ作成


(2)監査等委員会設置会社

監査等委員会設置会社は取締役会内部に過半数を社外取締役が占め、職務執行を監査する監査等委員会を設置することで業務執行と監督の分離を図る機関設計の形態で、2015年に導入された(図表3)。


図表3 監査等委員会設置会社の機関設計

図表3

※1 監査等委員である取締役3人以上+それ以外の取締役1人以上=計4人以上
(資料)会社法、BUSINESS LAWYERS「監査役会・監査委員会・監査等委員会とは」(2016.12.26)をもとにみずほリサーチ&テクノロジーズ作成


(3)指名委員会等設置会社

指名委員会等設置会社は、取締役会の内部に、委員の過半数が社外取締役で構成される指名、報酬、監査の3委員会を設置し、業務執行の権限を執行役に移譲することで取締役会はその監督に徹し、業務執行と監督の分離を図る機関設計の形態である。

指名委員会等設置会社には「執行役」という役職が置かれることになる。この執行役とは、取締役同様、会社法に定めがある「機関」である。執行役は指名委員会等設置会社にのみ設置が定められており、一定の重要事項を除く業務執行の決定を行う。なお、執行役と似た名称の役職に「執行役員」が存在し、設置を行っている企業も多く存在するが、こちらは会社法等に規定はない社内の役職であり、会社との関係性は「従業員」に該当する

現在の指名委員会等設置会社は、2003年の商法特例法改正で導入された「委員会等設置会社」から始まり、2006年の会社法改正に伴う「委員会設置会社」への名称変更を経て、2015年の監査等委員会設置会社の新設に伴い現在の名称に改められた(図表4)。


図表4 指名委員会等設置会社の機関設計

図表4

※1 代表執行役の場合は「選定」「解職」(会社法420条1項及び2項による)
(資料)会社法、BUSINESS LAWYERS「監査役会・監査委員会・監査等委員会とは」(2016.12.26)をもとにみずほリサーチ&テクノロジーズ作成


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