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「持続可能な航空燃料」におけるブック&クレーム方式の現状

2023年11月13日 サステナビリティコンサルティング第2部 柴田 詩織

持続可能な航空燃料(SAF)が、航空分野における脱炭素における切り札として国際的に認知されてから5年以上が経過し*、国内においてもニュースや新聞などで取り上げられる機会も増えている。昨今では、各エアラインがSAFを購入し航行するという従来の方式に加え、ブック&クレーム方式(B&C)というサービスも提供され始めてきている。B&Cは、SAF製造への投資促進、製造加速化を目的として、SAFの環境属性のみを切り離し、貨物運送事業者や荷主メーカー等が直接その環境属性を購入できるものである。本稿においては、SAFの現状について概説するとともに、SAFの新たな売買システムであるB&Cについて紹介することとしたい。

2030年時点のSAFの使用量について「本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換える」との目標が2021年に国土交通省より示され、2年が経とうとしている。しかしながら、足元の状況は厳しい。資源エネルギー庁の見込みによれば、2024年時点での供給見込み量はゼロであり、2030年には供給量が需要量を1割以上上回る予測だが、あくまでもこれは一定の仮定の下での推計である。

これは国内に限った話ではなく、全世界的にSAFの供給は不足している。そもそもSAFの原料となる廃食油や油糧作物等は、そのサプライチェーンや栽培場所が偏在している。また、SAFはそのライフサイクル全体でGHG排出量が化石燃料よりも低いという性質に価値があるため、化石燃料のように長距離輸送を行うことは好まれない。このため、SAFが製造、供給できる場所つまり利用者は限られている。その結果、SAFへの投資が促されず、技術開発や製造プラント建設が進まないという課題が生じている。

こうした課題を解決するのではないかと期待されているのがB&Cである。B&Cとは、非化石証書のようにエネルギー自体の価値と環境属性とを切り離し、環境属性の部分のみを証書化して取引する手法である。本手法を用いれば世界中からSAFの環境属性のみを購入することが可能であるため、たとえSAFの供給がない空港しか利用していないとしても証書を購入することにより、SAFを利用した場合と同等のGHG削減量を主張することができる。

こうしたSAFのB&Cについては、SAF製造同様に欧米圏を中心にサービスが立ち上がっている。各サービスによって、証書提供主体や証書対象(貨物か旅客なのか)が異なるが、一例としてGo GreenPlusやYusen Book-and-Claim、Avelia等が挙げられる。

今後SAFを普及していくためには、航空輸送に連なる全ての企業がSAFを購入でき、その価値を享受できることが必要不可欠である。そのためには、政府による製造に対する金銭的な支援に加え、SAFを利用したいと考える企業がその立地に関わらず購入できる仕組みが求められ、B&Cはこれに対し一定の解決策を示すものと考える。また、SAFの製造地および量が限られている現状においては、SAFの使用により生まれるGHG削減量を最大限活かすという観点からも、製造に適した場所で集約的に製造し環境属性のみをバーチャルで売買する仕組みは理にかなっている。

すでにEUや米国などでは、SAF導入義務の達成手段としてB&Cを含めるかどうかの議論が行われている。日本においても、エネルギー安全保障や農業振興といった観点から国産原料によるSAF製造、供給の選択肢は残すとしても、原料および製造設備が不足している現状においてはB&Cの利用といった柔軟な選択肢を目標達成手段として提供すべきではないだろうか。

  • *ICAO(国際民間航空機関)が2016年に2035年までの航空分野の脱炭素化に向けた手段としてSAFを取り上げたことを指す。
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