目次
巻頭言
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巻頭言 サイエンスソリューション部長 米田雅一 |
計算科学の最新技術(量子コンピュータ・AI・データサイエンス・大規模計算の活用)
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01.
アナログ量子シミュレータの開発動向と応用 大塩耕平(概要) |
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02.
海洋分野におけるデータ同化の手法の整理とROMSによる4次元変分法を用いた高潮計算事例の紹介 小林諒也、坂本大樹、眞鍋尚(概要) |
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03.
都市型水害予測モデルMC-FLOODを用いた水害予測のリアルタイムシミュレーションに向けて 高椋恵、眞鍋尚(概要) |
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04.
教育分野におけるAIの利活用と検討事項 片桐沙弥(概要) |
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05.
PEM型燃料電池の3次元数値シミュレーションへの機械学習モデルの活用検討 松元隆輝、高山務(概要) |
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06.
物理シミュレーションのサロゲートモデル活用によるものづくりDX 篠崎明、宮本裕平(概要) |
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07.
ボックスファンの性能・騒音の多目的最適化計算 中村幸太郎、小泉拓、山出吉伸、岩瀬拓、十川直幸、川鍋友宏、磯野勝朝、大山聖、金子公寿、加藤千幸(概要) |
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08.
大規模格子ボルツマン法流れソルバーのベンチマークテスト 山出吉伸、加藤千幸、飯田明由(概要) |
《コラム》「科学技術系」コンサルタントになるまでの私の履歴書 小林敬幸(PDF/224KB)
Sustainability Transformation (SX)の実現に向けて
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《コラム》『計算屋』から『工学屋』への彷徨 真鍋尚(PDF/297KB)
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概要
01.
アナログ量子シミュレータの開発動向と応用
アナログ量子シミュレータは人工的な量子系を用いて対象の量子系をシミュレートする技術である。従来のコンピュータでは困難な量子系のシミュレーションを効率的に実行することができ、ゲート方式の量子コンピュータよりも早い時期に従来のコンピュータを超える計算性能を獲得しうると期待されている。本稿では、近年急速な進展を遂げているアナログ量子シミュレータの研究開発動向と、その応用先について述べる。また、現状最も実用化に近い位置にあると思われるリュードベリ原子方式のアナログ量子シミュレータについて触れ、開発に取り組む企業の状況や、特徴的な応用先について紹介する。
02.
海洋分野におけるデータ同化の手法の整理とROMSによる4次元変分法を用いた高潮計算事例の紹介
現実世界を模した計算モデルによるシミュレーションに、リアルタイムな実測データを利用して高精度化する「デジタルツイン」と呼ばれるソリューションへの需要が様々な分野で昨今高まっているが、気象・海洋分野においては他分野に先行する形で「データ同化」という手法が研究されてきた。本論では需要の高まるデータ利活用の手段を調査する目的でデータ同化の手法の整理を行うと共に、海洋シミュレーションモデルROMSを用いたデータ同化高潮計算を行った事例を紹介する。
03.
都市型水害予測モデルMC-FLOODを用いた水害予測のリアルタイムシミュレーションに向けて
当部では、これまで都市型水害に関する受託解析を十数年にわたり実施してきた。また近年、水害が頻発しており、益々、水害に関する解析が必要とされている状況から、都市型水害解析ソフトウェアMC-FLOODの開発を行ってきた。一方、観測技術や降雨予測の技術が発展しており、リアルタイムシミュレーションが実施可能となってきた。本報ではMC-FLOODの概要を説明するとともにリアルタイムシミュレーションに関する状況及び簡易なデータ同化モデルを構築し検証する。
04.
教育分野におけるAIの利活用と検討事項
2023年はChatGPTの登場によって、AI(人工知能)が身近な存在になった年といえるだろう。一方、AIの利活用時のリスクが注目された年でもあった。教育分野でも、AIの利活用における期待とリスクについて国内外で議論が行われ、ガイドライン等の整備が行われてきている。本稿では、教育分野におけるAI利活用への取り組みと、社会実装上でのAIの技術的な観点がもたらす検討事項について紹介する。
05.
PEM型燃料電池の3次元数値シミュレーションへの機械学習モデルの活用検討成
燃料電池の開発・設計において、高性能かつ高耐久の燃料電池セルを開発するためには、セル内部の現象および状態を理解することが重要である。加えて、耐久性評価の観点から、白金劣化をはじめとする様々な劣化現象の予測も重要である。しかしながら、劣化現象は数1,000時間以上の長い時間スケールで発生するため、多くの数値計算コストがかかる。この計算コストの大幅な削減に向けて、これまで我々が開発を行ってきたPEM型燃料電池の3DシミュレーターであるP-Stackに対し、サロゲートモデルによる高速化検討を行った結果を述べる.
06.
物理シミュレーションのサロゲートモデル活用によるものづくりDX
新しい技術であるデータサイエンスを活用することで物理シミュレーションのサロゲートモデルを構築できるようになってきた。従来、シミュレーションの適用が難しく、経験的な検討が主流となっている開発・設計や製造条件検討の初期段階でサロゲートモデル活用により、定量的・客観的な検討、すなわち、ものづくりDXが可能となり、後工程の検討を効率化できる。本報では、設計・開発や製造工程に関するサロゲートモデル作成の事例を紹介し、開発・設計や製造条件検討の初期段階への適用によるフロントローディングについて述べる。
07.
ボックスファンの性能・騒音の多目的最適化計算
岩瀬らは直径180mm、羽根車の枚数5枚のボックスファンを対象として多目的最適化計算を実施し、取得した21世代、約400個のファンからパレート解(ここでのパレート解とは、高い静圧ヘッドかつ低い音圧レベルのファンを意味する。)を発見した。本稿にて我々は、この多目的最適化計算の概要と、多目的最適化計算で得られた約400個のファンの周囲の流れ場の解析結果を報告する。翼の表面における流れ場を可視化すると、翼の負圧面における圧力変動に特徴があることがわかる。この圧力変動に対して固有直交分解(proper
orthogonal
decomposition、以下、POD)を適用して、圧力変動の特徴をPODのモードとして示す。PODのモード係数に基づいてすべてのファンをグループ分けすることで、各グループと静圧ヘッドおよび音圧レベルとの間に関係があることがわかる。パレート解に属するファンのPODモードとPODモード係数に基づいて、高性能のファンに固有の圧力変動について考察する。
08.
大規模格子ボルツマン法流れソルバーのベンチマークテスト
格子ボルツマン法に基づく流体解析ソルバーFFXを開発している。FFXはスーパーコンピュータで高速に動作することが確認され、また、任意の複雑形状に対し完全自動に計算格子を作成できる特長を有している。本稿では、演算性能に関するベンチマークテストに加え、一様等方性乱流、球まわり流れに関する精度検証計算の結果を報告する。
09.
浮体式洋上風力発電への適用に向けた船舶・海洋構造物動揺解析システムMARISの改良
近年、脱炭素化社会の実現に向けて浮体式洋上風力発電の開発が進められてきており、浮体に関するシミュレーション技術にも注目が高まっている。本稿では、当部のソリューションである「船舶・海洋構造物動揺解析システムMIZUHO_MARIS-II」について、より洋上風力発電分野における汎用的なシミュレーションを行うためにコード改良を行った事例について紹介する。
10.
現在の地球環境と自然を生かした気候変動緩和の取り組み
2023年の夏は、東京で最高気温が30℃以上となる真夏日の日数が最多記録を更新するなど、記録的な暑さとなり、地表面気温が上昇傾向にあることが実感された。実際に温暖化現象がどの程度進んでいるかを観測データにより振り返るとともに、ブルーカーボン、OECMといった自然生態系を活用した気候変動緩和の取り組みを紹介する。
11.
初心者のための津波解析ソフトウェアT-STOCの使用方法
国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所から公開されている津波解析ソフトウェアT-STOCの概要と、津波計算を対象とした使用方法を数値解析ソフトウェアの利用経験のあるユーザー向けに解説する。また、高潮解析への適用方法についても触れる。
12.
合成生物学に基づくバイオものづくりについて
合成生物学を基盤とした物質生産である「バイオものづくり」は、近年注目がなされている分野であり、国内外で研究開発投資が盛んに行われている。本レポートでは合成生物学の概要、プロセス(DBTLサイクル)について技術的な観点を踏まえ整理した後に社会実装に向けた動きについて紹介する。
13.
離散要素法を用いた全固体電池のモデル化に関する最近の研究動向
全固体電池は、高い安全性や高エネルギー密度を有する次世代電池として期待されているものの、その量産化には、電極製造プロセスの確立が課題となっている。離散要素法は、粉体粒子の特性をシミュレーションでモデル化する手法であり、電極部材が粉体粒子から構成される全固体電池の電極製造プロセスに適用されている。本原稿では、離散要素法を全固体電池のモデル化に適用した昨今の研究事例を紹介するとともに、その概要と将来的な展望を述べる。
14.
固体高分子形燃料電池の動的運転条件下における白金劣化の面内分布に関する数値シミュレーション
固体高分子形燃料電池(PEMFC)において、フルサイズセルの劣化分布を予測した数値シミュレーションの研究は少ない。本技報では、動的運転条件下におけるフルサイズセルの触媒劣化分布を解析できる手法を提示した。フルサイズセルの定電流密度の試計算では、電気化学表面積(ECSA)の低下がわずかに面内分布を持つ結果が得られた。流路一本の簡易的なセルを用いた動的運転条件解析では、カソード上流側と下流側でECSAの低下に差が生じる結果となった。これは上流側と下流側で異なる白金溶解機構が生じたためで、劣化の面内分布を抑制するためには、適切な運転条件の設定が必要であることを示した。