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社会動向レポート

化学物質PFAS の規制の広がりと欧米企業の対応の最前線

グリーン・ケミストリー推進に向けた戦略のあり方(2/5)

環境エネルギー第2部
主任コンサルタント 後藤 嘉孝
コンサルタント 庭野 諒
主任コンサルタント 秋山 雄
コンサルタント 関 理貴
コンサルタント 佐々木 佑真

4.PFASの規制動向

現在、世界各国において大きく規制が動いている。ここでは、欧米におけるPFAS規制の概観を述べる。ただし、2021年8月時点の情報であり、PFAS規制の議論は今も進行中であるため、適宜最新の状況を確認されたい。

(1)米国*6

米国環境保護庁(EPA)は、2019年2月に発行されたPFASアクションプラン(2020年2月に更新)に基づき、PFAS管理の取り組みを進めている。

有害物質規制法(TSCA)における重要新規利用規則(SNUR)による管理、緊急対処計画及び地域住民の知る権利法(EPCRA)における有害化学物質排出目録(TRI)プログラムで2020年の報告対象として172種類のPFASを追加することが決定されたほか、安全飲料水法(SDWA)による飲料水安全規制のための最大汚染レベル値(Maximum Contaminant Level:MCL)の設定検討、包括的環境対処補償責任法(CERCLA、スーパーファンド法)におけるCERCLA有害物質として指定するか否かの検討等が行われている。

また2020年度国防授権法(NDAA)*7を通じて、議会は国防総省(DOD)がPFASに関して遵守しなければならない行動を義務付けており、図表3が挙げられている。さらに2020年度国防授権法(NDAA)に基づく法定要件において、2011年以降にPFASの製造・輸入を行ったすべての事業者に対して、2011年以降のPFASの製造・加工数量等の広範な情報を報告することを義務付ける規則案を公表*8している。

そのほか、米国食品医薬品局(FDA)は、食品容器包装等の「食品接触材料」に追加されるPFASを含む化学物質について、食品接触通知(FCN)プロセスを介して、人健康及び環境の安全性の懸念についてレビューを行っている。2020年7月には、製造業者3社が、紙・板紙製の食品包装の防食グリースとして使用されるPFASら3年間で段階的に廃止することでFDAと合意*9している。


図表3 2020年度国防授権法(NDAA)におけるPFASに関して遵守すべき行動
図表3

  1. (資料)みずほリサーチ&テクノロジーズが仮訳

(2)米国州

図表4に示すように、米国において州レベルでPFAS規制が進んでおり、消火用発泡剤、食品包装紙、子供向け玩具等の製品におけるPFASの使用禁止を定めている。対象製品は州によって段階に差があるものの、PFASの使用が「必要不可欠」と認められない限り、安全性を求める意見を反映して、すべての製品でPFASの使用禁止が要求される傾向が広がると考えられる。

図表5に例として、特に注目する3つの州の規制の動向を記載する。


図表4 米国各州における製品含有PFAS使用の規制状況
図表4

  1. (資料)各種資料を参考にみずほリサーチ&テクノロジーズが作成

図表5 州レベルのPFAS規制の事例
図表5

  1. (資料)各種資料より、みずほリサーチ&テクノロジーズが作成

(3)EU*10

PFASには、土壌や水(飲料水を含む)をEU及び世界中で汚染した多数の事例があり、それにまつわる公害病を発症した人の数、関連する社会的及び経済的コストを考慮すると、特に注視しなければならないとして、必要不可欠な用途(エッセンシャルユース)以外は、EUでのPFASの使用を段階的に廃止するとしている。

現在、欧州の化学物質管理規制であるREACH規則等において、進行中の規制提案又は最近採択された規制は図表6の通りである。この中で、特にPFAS全体に対する制限提案については、エッセンシャルユース以外は原則禁止となる提案になると予想される。


図表6 EUにおけるPFAS規制の事例
図表6

  1. (資料)欧州化学物質庁(ECHA)ホームページより、みずほリサーチ&テクノロジーズが作成

(4)日本

PFOSについて、有害性や難分解性等の性質を有することから、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(以下「POPs条約」という。)の第4回締約国会議(2009年5月)において、附属書B(制限)に追加され、国内においては2010年4月に化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)により第一種特定化学物質に指定され、製造・製品への使用は禁止されている。またPFOAについても同様に、第9回締約国会議(2019年5月)において、附属書A(原則禁止)に追加され、2021年4月21日に化審法第一種特定化学物質に指定する政令を公布、10月22日に施行*11され、製造・製品への使用は禁止されている。

PFOS及びPFOAは、国内でも一部の地域で飲み水や地下水から高い濃度で検出されている。

環境省が令和2年度に実施した調査では、143地点の河川等について測定した結果、133地点でPFOS及びPFOAが検出*12された(図表7)。両物質については2020年4月、厚生労働省はPFOS及びPFOAを水道水における水質基準の水質管理目標設定項目に位置づけ、暫定目標値をPFOS及びPFOAの合計値として50ng/L*13とした。また環境省は2020年、河川や地下水等の水環境における指針値(暫定)として、PFOS及びPFOA合わせて50ng/L*14とした。前述の環境省の調査では、検出された133地点のうち、21地点で指針値(PFOS及びPFOAの合算値で50ng/L)の超過が確認された。


図表7 日本におけるPFASの測定結果
図表7

  1. (資料)各種資料を参考にみずほリサーチ&テクノロジーズが作成
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