欧米のPFAS規制の強化に加え、PFASを扱う企業への集団訴訟、NGOや消費者からの関心の高まりから、PFASに対する社会的評価の在り方が大きく変動しようとしている。また今後は、ESG投融資等で市場関係者からもPFASへの対応状況を評価される可能性がある。

このような状況の中、日本企業においても、製造プロセス又は最終製品でPFASを利用する企業は、国内外の法規制に加え、消費者による不買運動や集団訴訟、さらに取引先企業からの取引停止や投資家からの対処行動の要求といった経営リスクに直面する可能性がある。

このような経営上のリスクを回避するために、まず経営者がPFASを取り扱うリスクを認識し、速やかにPFASの代替・削減を計画することが望まれる。PFASは様々な産業、製品において重要な役割を果たしており、自社が意図的に使用した用途に限らず、含まれている可能性があり、まず取組の第一歩として自社製品のどこでPFASが扱われているか、調達先等のサプライチェーンを巻き込みながら把握していくことが重要である。その上で、代替物質の選定・開発・評価を通して代替を進めていくことが求められている。また、ステークホルダーに対する適切な情報開示（計画の公表、KPIの進捗の公表）も同時に進めていくことが望ましい。

一方、PFASの代替物質として確立されている物質は多くはないため、米国EPAのSaferChoiceプログラムのように、安全な化学物質の新規開発の推進や安全な物質のリスト等の公表、行政や学術機関等でオーソライズされた手法での代替物質の評価事例の公表等、行政による我が国の産業の積極的な支援施策も期待したい。

図表17　PFASによる経営上のリスク及び各社が実行すべき事項

1. （資料）各種資料を参考にみずほリサーチ&テクノロジーズが作成