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社会動向レポート

現場へのコンサルティングから見えてくるデータ利活用の課題(1/2)

デジタルコンサルティング部 主任コンサルタント 藤井 彰洋


データ利活用の実用化を進めるには、データの管理単位のようなデータ粒度の検討やデータ間の紐づけの十分な検討が重要である。データ分析・業務・システムを総合的に理解することが課題解決の突破口になる。

1.はじめに

デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業数が増加する中で、データ利活用の期待が高まってきている。日本情報システムユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書2022」によると、データ利活用に取り組む企業は、全体の86.5%にも及んでいる。

経済産業省の「データ利活用のポイント集」では、“「新たなビジネスモデルの実現」や「収益性の向上」等、多様な課題が想定される中、これらの具体的な経営課題を解決するための手段の1つとしてデータ利活用がある”とされており、データ利活用は、もはや経営戦略上の重要な取り組みとなってきている。まずは「データ分析基盤の整備」や「分析基盤に収集したデータの可視化」から始め、将来的に「業務の最適化・高度化」まで実用化させることで、経営課題の解決を図るロードマップを策定する企業が増えてきた。

しかし、データ利活用が「収集したデータの可視化」に留まり、収集データの不足等により業務貢献に繋がる分析結果が得られず、その先まで進めていないと感じている企業も少なくない。不足データやそのデータの取得方法を明確にすることは簡単ではなく、「データの粒度」と「データ間の紐付け」を十分に検討しなければ、何が足りないのがはっきり見えてこない。

本稿では、データ粒度の検討事例(需要予測の精度向上への取り組み)やデータ間の紐づけの検討事例(売上データと顧客データの紐づけ)をもとにデータ利活用の推進に必要な要因を整理しながら、今後の実用化に向けての主要な対応策を考察したい。

2. データ粒度の検討の重要性(需要予測の精度向上への取り組み)

データをもとにした需要予測は、マーケティングや発注・生産業務の効率化等、製造業・物流業・小売業等で活用されている。各企業では、取引先や最終消費者の需要を予測し、それをもとに生産・販売活動を計画する。過去の売上履歴や在庫の推移状況といった過去データだけでなく、気象、季節や地域のイベント、SNS等の外部情報を含めることで予測精度の向上を図りながら、様々な概念実証(PoC)に取り組んでいる。

しかし、これらの概念実証は容易ではない。新たなデータを需要予測に追加しても、現場で期待される水準の精度まで届かないというケースは珍しくない。精度向上を図るためには、予測に活用するデータの種類等だけでなく、計画策定業務のプロセスにも着目し、策定する計画のデータ粒度(本稿では計画期間の長さ)を検討することが重要である。ここでは、製造業において受発注を事前に予約する業務プロセスを題材に考察してみよう(図表1)。

製造業では、需要予測や受注の予約・確定情報をもとに取引先や最終消費者の需要を把握し、それを踏まえて供給の各計画(生産計画・購買計画・物流計画等)を策定する。需給調整しながら各々の計画を策定することで生産活動と販売活動を整合させている。

特に生産計画では、長期・中期・短期のように段階的に策定するのが一般的である。企業によって各計画期間の定義が異なるが、本稿では長期を月次単位の年間計画、中期を週次単位の月間計画、短期を日次以下の単位の週次・日次計画とする。各計画では需給調整の対象となる需要側の情報に違いがあり、長期計画では需要予測を重視するが、中期・短期計画では、受注の予約を受け付けたり、その予約が確定したりするので、予測よりも受注の予約・確定情報を重視するのである。このように計画期間のデータ粒度を検討すると、予測において重視するべき情報の違いが見えてくる。

取引先や最終消費者の行動を完全に予測することは不可能であることから、需要と供給には差が生じる。そのため、各企業では、予めどれだけ需要と供給の差が発生するかを見越して計画を作っている。業態・業種や製品にもよるが、長期計画ではこの差をある程度見越した上で計画を策定するが、中期・短期計画ではより精度を上げることに注力する。

予測精度を向上させるためには、「これらの計画ごとの差をいかに縮めて、生産業務の効率化を図るか」が求められる。しかし、生産計画は、単純に予測精度だけを向上させれば良いわけではない。例えば、長期予測では、長期トレンド・季節等に起因する影響が大きいので、過去の売上履歴や在庫推移の傾向だけでも大筋をつかめる場合がある。この粗い把握方法でも生産活動の準備作業に概ね問題がなければ、長期計画を策定する時点で需要との差をさらに縮める必要性はそれ程大きくない。その後に続く中期・短期計画を作る時に詳細を検討すれば良い。また、中期・短期計画では予定通りに受注内容が確定されることが望ましいが、大口顧客からの急な予定変更等の突発的な要因により急に変更されることがある。この突発的要因は予兆がないことが多いので、事前に予測するのは極めて難しい。

このような「予測が長期計画にしか適用できず、生産活動の効率化につながらない」「短期計画を予測するための必要なデータが見当たらない」といった課題に直面した際に、予測に利用するデータのみに着目していると対応策が見えにくくなるが、生産計画のデータ粒度にも着目すれば、ターゲットとするべき生産計画がより明確になる。

その後は、過剰在庫時や欠品時の在庫量の詳細分析等により、需要と供給の差を明確にすることで、需要予測を活用した計画策定業務の自動化や計画策定者のサポート等が検討しやすくなる。


図表1 製造業の需要予測における生産計画等への影響
図表1

  1. (資料)みずほリサーチ&テクノロジーズ作成
  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
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